【日本映画】「四月物語〔1998〕」★★★★★【感想・レビュー】

【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】大学に合格し、東京の大学に通うこととなり、北海道から上京した 卯月が主人公。初めての一人暮らしと大学生活の中で、卯月にはこの大学に通うことになった理由があった。

これは少女マンガの文法で描かれた1人の女性の気持ちがこもった実写映画

監督の岩井俊二は、TVドラマやPVで「岩井美学」と呼ばれるほどの熱狂的なファンを生み出すような独特な演出で注目され、「Love Letter」「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」など話題作を多数作り上げています。

主演の松たか子は、二代目 松本 白鸚(前名 )の末子として生まれ、16歳で歌舞伎の初舞台を踏んでいます。

その後、NHK大河ドラマ『花の乱』でテレビドラマに初出演をし、以降TVドラマや歌手など様々な分野で活躍しています。

本作は、松たか子の映画初主演作品となります。

物語は、大学への通学のため上京をした主人公 卯月が学生生活を過ごしながらも、なぜこの大学に進学したのかを描いたストーリーです。

序盤は、リアル家族である松本家の全員が家族として出演しており、北海道から東京へ上京する展開が描かれます。

桜が舞う中での引越し作業は、松たか子のセカンドシングル「I Stand Alone」のPVにも使われており、監督も本作と同様の岩井俊二となります。

何回見ても気になるのは、部屋に入りきらない荷物であり、その中にある小さな椅子は「いつ、何のために使うのだろう」と言うことでモヤモヤします。

それが本作の妙味でもあり、要所要所で、主人公 卯月の趣味趣向が一般とは多少ズレているようなところがあります。

中盤までは、「上京少女の奇妙な冒険」のような展開で、主人公周辺のちょっと拗れ気味の展開に退屈感も感じてしまいますが、映像美が多少根幹にはあるので、全く見ていられない訳ではありません。

コレも「終盤に繋がる全くつながらない布石」と考えれば、この何か起こりそうで何も起こらないところと言え、方向性を見失いがちになる迷い方が、逆に仕組まれた演出とも言えます。

そもそも大学進学時に誰もが感じそうな仲間同調意識もあり、古臭いという印象よりも、そういう「自分の居場所探し」がカタルシスになるのかもしれません。

特筆すべきは終盤の本屋であり、雨と本屋と店員と傘というポイントは素晴らしく瞬間最大風速を記録するような展開となっています。

過剰に説明しすぎかもしれませんが、終盤の卯月の所作と受け答えには、卯月演じる松たか子の初々しさと岩井美学たる所以がしっかりと仕組まれています。

「これでいいです。これがいいです」

こんな言葉のやり取りだけで、すべての要素を言い表すようなシナリオには、見ている側にも心動かされるところがあります。

絶妙にすべてを言い表すでもなく、かと言ってその後をしっかりと描かないことで想像力を促すような締めくくりには、一度観てもらえば、スッキリするまとめ方でもあります。

こんな細かいカット割で絶妙な数分間のためにすべてが仕組まれているのは、やはり岩井マジックと言わざるを得ない作品と言えます。

人により受け取り方は変わるのかもしれませんが、これは少女マンガの文法で描かれた1人の女性の気持ちがこもった実写映画です。

予告編

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