【監督】深田晃司
【出演】筒井真理子/市川実日子/池松壮亮/須藤蓮/小川未祐/吹越満/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公の訪問看護師の市子は、周囲からも信頼があり、1年ほどまえから看護に通っている大石家でも頼られていた。長女の基子に介護福祉士になるための勉強を教えたりしていたがある日、次女のサキが失踪し、その誘拐犯が意外な人物だった。
行間を読み取るような作品であり絶妙な描き方として秀逸な作品
・深田晃司監督は、映画美学校で、2004年『椅子』を長編自主映画として初監督をし、その後、2005年に平田オリザ主宰の劇団青年団に演出部に入団し、映画祭を青年団俳優とともに企画開催しています。『ほとりの朔子』『さようなら』とさまざまな作品で評価され、特に2016年『淵に立つ』では、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞しています。
・筒井真理子は、大学在学中に第三舞台の公演に感銘を受け、第三舞台に入団し、多くの作品に出演しています。2016年『淵に立つ』で、多くの映画祭で賞を受賞し、映画やドラマなど多くの作品で活躍する女優です。
・市川実日子は、姉 市川実和子とともに雑誌『Olive』にモデルとして登場し、後に専属モデルとなっています。1998年『How to 柔術』で女優デビューをし、2003年『blue』で初主演をし、第24回モスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞しています。
・キャッチコピーは『ある女のささやかな復讐。』
・物語は、訪問看護師の主人公が、大石家の家族との関わりの中で、厚い信頼を受けていたが、大石家の妹が疾走し、その誘拐事件の犯人が意外な人物だったことで、理不尽な状況に追い込まれていくストーリーです。
・序盤から、美容室で市子が髪の毛を整えてもらうところから始まります。しかしこの会話に注目すると、すでにヘルパーは辞めてしまっている状況となります。
・ここ作品はこの場面だけでシレッと時間軸が前後するような物語と言うことを示唆しています。
・美容師の和道と偶然を装い、異なる家に帰っていくところがありますが、ここにも、謎なところがあり、和道の連絡先をシレっと聞いてしまうところには、何かしらの怖さがあります。
・そとづらとは裏腹に、自宅はなにもない部屋で雑然としているところもあり、徐々に主人公 市子の中身の無さが見えてきます。
・カーテンもしておらず、部屋の明かりも、多分、丸形ではない蛍光灯と思われ、この辺りに市子の横顔の部分が見えてきます。
・本作は、無実の加害者へと転落した女性を主人公にしたヒューマンサスペンスであり、タイトルの「よこがお」とはその半分は見えていても反対側の姿は見えない状態であることを指しているようです。
・時間軸の操作と考えられた演出で見応えのある作品となっていますが、人の2面性を描いているところもあり、このあたりに本作の深さがあります。
・何もかも説明してしまう作品ではないので、前後の関係から読み取っていく要素もあります。
・市子の曲がった精神から裏表のある言動が出てきますが、その表向きのところには良い人な印象を周囲に与えているところがあり、反面、腹の中では悪意のある別の一面が見えてきます。
・基子への親切感とその反面の顔が徐々にわかり始め、終盤では復讐のようなものを遂げますが、実際には市子の考えていたこととは異なることがわかってきます。
・終盤での交差点での言動にはとても意味深な要素を残していきますが、これには詳しい説明はありません。
・そのシーンの意味は、すでに描かれたことへの回答となっており、観る側に判断を委ねるところがあります。
・メッセージとしては観る人によって変わってくるわけではなく、明確な意図はあります。
・その行間を読み取るような作品であり絶妙な描き方として秀逸な作品かと思います。