【洋画】「エレファント〔2004〕」を観ての感想・レビュー

【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】オレゴン州ポートランドの高校が舞台。いつもと変わらない日常のように見えて2人の高校生の起こす惨劇が描かれます。

エレファント デラックス版 [DVD]

観る人の視点により様々な解釈ができる見事としか言いようのない傑作

・この映画は実話をもとにされており、脚色された映画として描かれています。

・オープニングは綺麗な空と「エリーゼのために」が流れ、のちの惨劇が嘘のような日常から物語が始まります。

・この映画の特筆すべき点は、複数の視点から同じシーンを描く手法がとられており、のちの映画「桐島、部活やめるってよ」でも引用されるような手法です。

・さらに素晴らしいのは、どのように撮影したのかわからないほどに複数の視点で見たときの視点から撮影カメラが全く映らないことです。

・とても当たり前のことですが、カメラアングルが巧みなのか、同じシーンを同じ動きと同じタイミングで撮影されたのか全くわかりません。

・多分カメラの画角を綿密に計算された撮影だと思われるのですが、長回しやドキュメンタリータッチで撮影しているところを考えると、異常なほどの計算の上に成り立っている画面構成であるとわかります。

・その撮影が気にならないほどに、物語の描かれ方が見事です。

・実際に発生した高校校内銃乱射事件を描いた映画ですが、主犯の動機やその事件に関しての教訓などが描かれるわけではなく、淡々と惨劇が描かれるギャップにも演出の巧みさが光ります。

・この映画は、2003年の第56回カンヌ国際映画祭で、最高賞のパルム・ドールと監督賞を史上初めて同時受賞した映画です。映画の鑑賞満足度というよりも、この演出と敢えて語らないメッセージから生まれるメッセージが評価された作品だと思われます。

・題名のエレファントとは、「Elephant in the room」という慣用句に基づいたもので「誰の目にも明らかな大きな問題があるにもかかわらず、それについて誰も語ろうとせずに避けて日常を過ごす」と言う意味合いがあります。

・また、「群盲象を模す」と言う意味もあり、これは複数の盲人が象を触ってみて、象とはどんな動物かと語ってみた逸話に基づいています。同じ象でも、足を触った盲人は「木である」と言い、鼻を触れた盲人は「蛇である」と言った。「論ずる対象が同じであっても、その印象も評価も人それぞれに異なる」という意味が含まれています。

・登場する高校生は全てオーディションで選ばれた人たちで、実際の役者がほとんど登場しないところも注目点です。

・まさしく、観る人の視点により様々な解釈ができる見事としか言いようのない傑作です。


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