作品紹介
【監督】石井裕也
【出演】池松壮亮/三吉彩花/水上恒司/仲野太賀/田中泯/綾野剛/妻夫木聡/田中裕子/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 石川朔也は、母親を助けようとして川に飛び込むが、そこで事故となり、1年間の昏睡状態となる。目覚めたあと、母親は自由死をしていたことがわかる。激変した世界で、リアルアバターで母親を作り、本心を聞こうとする。
本作の落としどころがいまいちピンとこないところ
石井裕也監督は、2005年『剥き出しにっぽん』を卒業制作として発表し、評価されています。2009年「川の底からこんにちは」で評判となり、第53回ブルーリボン賞監督賞を史上最年少で受賞しています。2013年『舟を編む』では、第86回アカデミー賞外国語映画部門日本代表作品に選ばれており、世界的にも評価されています。『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『生きちゃった』『茜色に焼かれる』など、話題作を多数手掛けています。
池松壮亮は、「ラストサムライ」での出演から、子役として活躍し、現在では多数の作品で印象的な演技で定評のある役者です。
三吉彩花は、 小学生のことから、モデルとして活躍。その後、さくら学院の初期メンバーとして活動をし、Seventeenの専属モデルとなっています。映画『グッモーエビアン!』の演技が評価され、第67回毎日映画コンクールおよび第35回ヨコハマ映画祭で新人賞を受賞しています。
物語は、母親から「大切な話をしたい」と呼ばれた主人公は、川に飛び込んだ母を救うために自らも飛び込むが、昏睡状態に陥ってしまう。1年後目覚めたときには、母は自由死しており、その本心を聞くためにリアルアバターの母を作ろうとするストーリーです。
序盤から石川朔也が学生時代のことを思い出しながら部屋で過去を振り返っているところが描かれ、そこから、母親とともに生活をしている姿が描かれます。
母親は多少認知症に感じるところもあり、ある日、雨の中川に身を投げるところを見かけ、朔也は母を助けるために川に飛び込みます。
とはいえ、濁流に巻き込まれて1年間の昏睡状態となり、その間に母親は自由死をしており、世界が一変してしまっている状況に陥ります。
そこで新たな仕事としてリアルアバターとして働いていくことになりますが、今で言う「ウーバーイーツ」のようななんでも屋のような感じです。
ARの技術が発達しており、朔也は母が何を思っていたのかを調べようするために、仮想空間に母親を再現しようをします。
母親を復元しますが、朔也は徐々に仮想空間にのめり込んでいきます。
「人間はみんな嘘ばっかり」
朔也自体はそれほど悪い人ではないのですが、1年間の昏睡状態で世界が変わってしまったことにより、何かにすがっていこうとするような印象を受けます。
仮想空間で出会った人物の三好彩花に出会い、母親が大切にしていた友人ということで、彼女を助けるために同居していきます。
朔也は母親のことを深く知ろうとしていきますが、三好彩花には朔也の知らない母の一面があるのかと思います。
三好彩花という役名は、実際の女優「三吉彩花」と一文字違いのキャラクターですが、特に原作者の平野啓一郎は意図したところはなく、今回の映画化で石井裕也監督があえて同姓同名の「三吉彩花」を配役したことだけで、深い意味などはないようです。
実際に、名前自体は本作で重要なところでもなく、話題性というアプローチなところでもあります。
朔也視点で描かれていく物語でもあるので、わかりにくい展開ではありませんが、朔也の生活周辺を描く点として、中盤で、徐々にリアルアバターの社会的ヒエラルキーが見え隠れしてきます。
徐々に、生きるというところが本作のポイントとなってくるところがわかり、母の自由死の本心を辿っていく展開になります。
「朔也くんの本心がわからなくて」
三好彩花と朔也は同居しながら、母親と3人でそれぞれ暮らしていきますが、三好彩花と朔也の意思疎通もちょっとぎこちない感じもします。
三好彩花の存在もいまいちわかりにくいところはありますが、なぜか本作では三好彩花のシャワーシーンで脱いでいます。必然性があったのかどうかといえば、一応、三好彩花自身が苦しんでいるということを表現しているところにもなります。
朔也自身も、池松壮亮が演じているところがハマリ役にも思え、ぎこちなく不器用で挙動不信感もあるのがむしろ良い感じでもあります。
リアルアバターの仕事も、色々と問題があり、リアルアバターを弄ぶような依頼や無理難題をお願いすることが増えてきます。ウーバーイーツにも似ているところがあり、仕事をした結果で評価がつけられていくところもあります。
「というかさ、お前こんなことまで生きていたい?生きてて楽しい?」
本心というタイトルは、このリアルアバターにも意味があるように思え、自分自身を抑え、依頼人の指示通りに行動することに、本心を失っているというふうにも見え、仕事で憤りを感じたことで、朔也が思うままに行動をしてしまい仕事を失ってしまいます。
終盤はまたとある人物が登場し、生活も変わってきますが、そこでもまた、本心ということを
「朔也さんはいずれ、本当のことを話してくれると思っていましたから」
「結局僕は、親しい人の本心を理解していなかった」
本心というタイトルは意外と秀逸で、終盤での告白シーンもリアルアバターの設定も含め巧妙なところです。
「ぼくは、あなたのことは好きではないから」
母親の本心についての話がちょっとぼやっとした感じの展開となってきますが、周囲の人物が朔也の本心についてどう思っているのかがわからないというところにもなり、それはつまり、朔也にとって母親がどう思っていることの反面的なところにもなります。
「わたしは今幸せ、今なら死んでもいいかなぁ」
本作の落としどころがいまいちピンとこないところはありますが、なんとなく本作のタイトル「本心」というところはしっかりとテーマになっている作品です。とはいえ、説明が少ない作品でもあるので、観る人を選ぶ作品かと思います。
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