【アニメ】「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||〔2021〕」★★★★☆【感想・レビュー】

作品紹介

【総監督】
【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】世界規模の大災害が起こったと言われる「セカンドインパクト」以後の世界。ネルフに対抗する組織ヴィレが、フランス パリを舞台に、ユーロネルフ第1号封印柱復元オペの作業が開始され、碇シンジをめぐるエヴァンゲリオンの物語が結末を迎える。

シン・エヴァンゲリオン劇場版

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非常に作り込まれた作品を素直にまとめあげた名作

庵野秀明総監督は、幼い頃よりアニメや特撮に興味を持ち高校生では美術部長を務め圧倒的な画力があったそうです。大阪芸術大学映像計画学科でアニメの世界に触れ、自主制作映画を作っています。そのスタッフは後にガイナックスの主要メンバーとなっています。様々な劇場アニメの作画に携わり、『風の谷のナウシカ』の巨神兵のシーンの担当をしています。1988年『トップをねらえ!』で商業映画初監督をし、1997年には「新世紀エヴァンゲリオン」で社会現象にもなる作品を作り出しています。実写作品も制作しており、非常にこだわりの高い監督です。

本シリーズは4部構成と言われており、4作目は、その「序破急」の流れに当てはまらないところになります。

題名も「シン・エヴァンゲリオン劇場版? 」となっており、微妙に今までの名称と異なるところがあります。

サブタイトルは、「Thrice Upon A Time」となっており、ジェイムズ・P・ホーガンの長編SF小説『未来からのホットライン』の原題と同名となっています。

最後にある記号は、楽譜の反復記号とも判断でき、繰り返しを意味していることが予測されています。つまり、エヴァンゲリオンの物語がループしているということを示唆しているらしいです。

物語は、世界規模の大災害「セカンドインパクト」「ニア サードインパクト」の後の世界となっており、詳しい内容は特に説明がありません。

序盤はすでに先行して公開されているパリでの「L結界」の封印を解く作戦が描かれます。

マリの乗る8号機βで応戦が始まり、すでにエヴァ対使徒と言う構図ではなく、ヴィレ対ネルフで戦っていることがわかります。

上空から糸で釣っているかのような演出がされていますが、特撮で戦っていると言うことの暗示かと思われます。

ここでの音楽が秀逸で、以前から使われている曲のアコースティックな感じでの曲でとても良い曲です。

マシンガンを連射することで銃身が焼けてしまうと言う演出もあり、コレもリアルにマシンガンを連射すると熱をかなり発生することであり、芸が細かいです。

庵野監督の過去の作品「不思議の海のナディア」でのパリでの戦闘を本作でもまた違った手法で描いています。

対するネルフ自体も多数の亜流なエヴァンゲリオンで対抗してくるところもあり、生産力の疑問もありますが、そんなことは気にしなくて良いです。コレは「アニメーション」です。

その後、オープニングシークエンス以降、第三村と呼ばれる場所での残された人々の生活が描かれます。

実際に2作目の「波」から14年経過した世界となっており、要塞都市だった新第三東京市とは違った世界観で、観ている側としては戸惑いも感じますが、本作のテーマとしての「生活していく」と言う要素が描かれます。

かなり暗示的な要素はありますが、挨拶やおやすみの際の言葉の意味をサラッと描いたところに、人と人との繋がりを描いているように思います。

人類補完計画と言う計画の根本的な考えや、ATフィールドの意味合いも含め、設定と言う要素で描ききるよりも、普遍的に近い要素で、その社会の形成や人との関わりをメッセージとしているように見えます。

主人公 シンジの人との関わりの拒絶も、根本的な生活ということに立ち返らせることで、もう一度自分がやってきたことを見直させるようなところもでもあります。

その立ち直りは、状況に迫られる手法ではなく、他人がどう見てくれていて、自分がどう関わっていくのかと言う自然な流れでの立ち直りなので、この生きていく上での関係性は、村と言う小さなコミュニティでこそ得られたことなのかもしれません。

旧劇場版では、このような落ち着いて見直すと言うシンジの考えがなかったので、精神的に緩やかな持ち直しをしているところは今までのエヴァンゲリオンの描かれ方とはちょっと違った視点があります。

その後、ファイナルインパクトを阻止するために闘いが繰り広げられますが、旧劇場版の闘い方とも違い、闘いの中でそれだけでは解決しないと言う気づきも見えてきます。

多数のエヴァンゲリオンと父親ゲンドウとの対立も描かれ、ザックリ言ってしまえば、壮大な親子喧嘩となっていきます。

父親 ゲンドウが何を思って起こしたことなのかも明確となり、今までのエヴァンゲリオンではなかった展開で決戦が描かれていきます。

徐々に世界が演劇的な要素も含まれてくることで、若干わかりにくい点もあるかと思いますが、シンプルに「コレはアニメである」と言うことを理解させる一つの手法だったと思います。

そう言う点では、旧劇場版と近しいメッセージ性ではありますが、唯一違うところは、相手を理解し、自分自身もそれを寛大に受け入れることで、物事を解決していきます。

エヴァンゲリオンの描き方では、現実と創作と言う区切り伝えつつ、それをどう解釈し、自ら自身が何を感じるかと言うところは、旧劇場版も本シリーズも変わらずなところに思います。

たしかにロボットアニメとして必要なメッセージ性かと言われると難しいところでもありますが、以前より「伝説巨神イデオン」「機動戦士ガンダム」など、ロボットアニメをモチーフにしながらも、ドラマとしてのメッセージ性があり、アクション娯楽エンターテイメントとは異なるところがあります。

締めくくり方は、当時「卒業式」と呼ばれたこともあり、今までのエヴァンゲリオンを総括して、その先に進むべき道を示している作品とも言えます。

155分という長時間であり、140分を超える映画は非常に少ないため、気軽に観る作品ではありませんが、四半世紀にわたるアニメシリーズの完結編としては、非常に作り込まれた作品を素直にまとめあげた名作かと思います。

予告編

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