作品紹介
【監督】木下麦
【脚本】此元和津也
【出演】小林薫/戸塚純貴/満島ひかり/宮崎美子/ピエール瀧/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 阿久津は、無期懲役の囚人。独房で孤独な死を迎えようとしていたときに、ホウセンカが話しかけ、阿久津の過去を思い出させる。
登場人物たちの人生や、それぞれの関係性について考えながら観ることができる作品
木下麦監督は、大学在学時よりアニメーターとして活動をし、2021年「オッドタクシー」で初監督をしています。
小林薫は、1971年に唐十郎が主宰する状況劇場に在籍、その後、1980年に退団をしていますが、唐十郎はその才能を非常に惜しんだエピソードがあります。1977年「はなれ瞽女おりん」で映画デビューをし、1999年「秘密」で初主演をしています。テレビドラマにも多数出演しており、2009年「深夜食堂シリーズ」は代表作となる人気となっています。「もののけ姫」や「君たちはどう生きるか」で声優も担当しており、2025年「ホウセンカ」では声優で主演を演じています。
満島ひかりは、1997年に7人組ユニット「Folder」に参加してデビューしています。その後、「Folder5」に改称していますが、継続して所属をしています。「Folder5」の活動休止後、「満島ひかり」名義で活動を開始しています。1997年「モスラ2 海底の大決戦」で映画初出演をし、2009年「愛のむきだし」で数々の賞を受賞しています。2010年「川の底からこんにちは」でも高い評価を得ており、その後、「悪人」「愚行録」「川っぺりムコリッタ」などで活躍をし、テレビドラマでも数々の作品に出演しています。「モテキ」「それでも、生きてゆく」をはじめとして、多くの作品で巧みな演技力で評価されており、テレビや映画、舞台など幅広い活動をしている女優です。
物語は、無期懲役の囚人の主人公が、言葉を喋るホウセンカに過去の話をはなしはじめ、昔のことを思い返していくストーリーです。
序盤から、刑務所にいる阿久津が描かれ、そこから過去を思い返していきます。そこにあるホウセンカの花と対話をしていきます。
不思議な設定ですが、ホウセンカとの会話を軸にすることで、阿久津という人物の人生や、これまで関わってきた人々との関係が少しずつ見えてくる構成になっています。
本作では、物語をすべて説明するのではなく、観ている側がそれぞれの出来事をつなぎ合わせながら全体像を理解していく作りで、『オッドタクシー』が好きだった人なら、この「あとから意味が分かってくる」タイプの物語と理解できます。
本作のオープニングに登場する主題歌と花火のシーンも印象的です。初めて観たときには何気なく見える場面でも、作品を最後まで観たあとにもう一度見返してみると、違った印象を受ける部分があります。
後半のエピソードでは、展開が予想できてしまうところもありますが、しっかりと伏線がきちんと用意されているため、「そうなるのではないか」と予想できたとしても、展開そのものには納得できる作りになっています。
演出自体は地味ですが、むしろメリハリがしっかりとしており、音楽や環境音を前面に出すタイプの作品ではなく、ここぞという場面で「Stand By Me」を使うところが素晴らしいです。
物語の終わり方については、少し腑に落ちないように感じるところもありますが、物語そのものがきれいにまとまっていないというより、登場人物それぞれにとっての「幸せ」や「救い」が、必ずしも用意されている作品ではないからなのだと思います。
それぞれの人物がどういう状況に置かれていたのか、そして物語の中で何が起きていたのかを理解するのは観客側であり、登場人物たち自身がすべてを理解しているわけではありません。
ということで、作品を観終わったあとに「すべて分かった」という爽快感よりも、どこかモヤモヤしたものが残ります。
思えば『オッドタクシー』も、登場人物それぞれの物語がすべてきれいに幸福な結末へ向かう作品ではないので、物語全体を観客が俯瞰することで、それぞれの出来事がつながって見えてくる構造になっています。
90分ほどのアニメーション作品ですが、単純なエンターテインメントとして見るだけではなく、登場人物たちの人生や、それぞれの関係性について考えながら観ることができる作品です。
作品を観終わったあとにオープニングや序盤のシーンをもう一度見返したくなるタイプの作品です。
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