作品紹介
【監督】廣木隆一
【出演】村上淳/菜葉菜/好井まさお/鮎川桃果/大西信満/宮崎吐夢/田口トモロヲ/azumi/烏丸せつこ/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 ヨシダヨシオは、水道局に務める男性。彼は筋金入りのドMだった。
これはごく普通の恋愛物語ですが、その描き方が正攻法ではないながらも、終盤できっちり気付かされます。
廣木隆一監督は、数々の映画監督のもとで、助監督として活動し、1982年 『性虐!女を暴く』で長編映画監督としてデビューしています。ピンク映画出身ではありますが、近年では少女漫画原作の恋愛映画を手掛けており、「胸キュン映画三巨匠」の一人に数えられています。
村上淳は、モデルとして活躍後、1993年「ぷるぷる」で映画初出演をしています。その後、2000年「ナビィの恋」でヨコハマ映画祭助演男優賞受賞しています。非常に多くの作品に出演をしており、独特な存在感のある俳優です。なお、村上虹郎は実の息子で2014年『2つ目の窓』で共演をしています。
菜葉菜は、2001年『自殺サークル』で映画デビューをしています。2005年「YUMENO」でオーディションで選ばれて初主演をしています。多くのインディーズ作品に出演しており、「インディーズ(映画)の女王」とも呼ばれています。
物語は、主人公の水道局員が、どMということで、女王様ミホとプレイをしてたが、過去に伝説の女王様 ユキコがドMと気づかせたことで、彼女を追い求めていくというストーリーです。
序盤から、とあるセリフから始まります。
「マゾのとってお仕置きが快楽であるならば、お仕置きされないということは最大の快楽である。」
本作は、山本直樹の2009年「夕方のおともだち」が漫画原作であり、山本直樹作品ということなので、その点を踏まえて観るのが良いです。
「こんな田舎にはもったいないくらいのMだよ」
主人公は、ドMという設定ですが、この感覚はあまりよくわかりませんので、感情移入しずらいところがあります。
「もっと、もっと真面目にやってくださいよ」
「じゃあ、おしっこかけてもらえますか」
このときの角度はなかなか挑戦的です。主人公に感情移入できるかどうかですが、実際にはこの感情は理解できないです。
感情移入できないながらも、なぜ、これほどまでに自分痛めつけるのかというのは、絶望の先にあるなにかを探しているのかと思います。
「ごめんごめん、声出すの忘れてた」
終盤、母親を車椅子を押しているシーンで、靴を履き直している間に、坂道を車椅子が降りていってしまうシーンが描かれます。これは、ヨシオの中で別の意識が生まれていいることなのかと思います。
「女王様なんて言わないで、わたしはもう女王様なんかじゃないんですから」
「あなたは、本物以上の奴隷です」
絶望を感じながらも、その状況から見いだせる喜びを求めているという点で、ドMという感情がこの終盤でなんとなくわかるような気がします。
「そんなに死にたいかい?」
いままで普通の人として対話をしていたのに、この言葉のイントネーションは、ある意味女王様です。
ミホが、ジェームズ・テイラーの曲「You’ve got a friend」の話をしますが、その曲の意味が本作の意図であるのかと思います。
物語の意図としては難解なところもありますが、山本直樹の原作マンガがベースにもなっていますので、難解さがあるのは仕方がないところです。ただし、明確にメッセージはあります。
言ってしまえば、これはごく普通の恋愛物語ですが、その描き方が正攻法ではないながらも、終盤できっちり気付かされます。