作品紹介
【監督】成島出
【出演】役所広司/吉沢亮/サガエルカス/ワケドファジレ/松重豊/MIYAVI/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 神谷誠治は、山里で孤独に暮らす陶芸職人。ある日、仕事でアルジェリアに赴任していた息子 学が婚約者 ナディアを連れて帰ってくる。学は陶芸を継ぎたいと言うが、誠治は反対をする。また、隣町に住むブラジル人が襲われていたのを誠治が助けたことで、亡き父に姿を重ね、陶芸に興味を持つ。
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シリアスな物語でもあり、日本の小さな社会と世界の広さとの対比を通じて、描かれるテーマとしては、見ごたえあるところ
成島出監督は、1986年『みどり女』でぴあフィルムフェスティバルに入選し、映画監督になる道を選んでいます。1994年『大阪極道戦争しのいだれ』で脚本家デビューをし、後に多数の脚本を手掛けます。2003年『油断大敵』で商業映画監督デビューをし、多数の賞を受賞しています。その後、2012年『八日目の蝉』で第35回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞しています。2015年にも『ふしぎな岬の物語』で第38回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞しています。
役所広司は、もともとは役所勤務の職員でしたが、仲代達矢の無名塾に入り、前職の役所勤めというところから芸名を命名してもらっています。
吉沢亮は、2009年『アミューズ全国オーディション2009 THE PUSH!マン』でRight-on賞を受賞し芸能界入りをしています。2011年『仮面ライダーフォーゼ』で、2号ライダーを演じ、2013年にはテレビドラマ『ぶっせん』で初主演しています。映画やテレビと幅広い活躍をしている俳優です。
物語は、山里でひっそりと陶芸職人として暮らす主人公が、息子や在日ブラジル人との関わりを通じて、家族というものを見つめ直すストーリーです。
序盤から山奥で陶芸をしていく誠治が描かれていき、まさしく隠居した職人のような印象を受けます。そこから、都会のマンションで生活をする移民者が描かれ、日々仕事のためにバンに乗って移動する姿が描かれます。
本作は、日本の現在を描いているようなところもあり、多国籍な要素を元に文化の違いや今の日本の境遇を描いているところがあります。
主人公は、誠治となりますが、物語自体は、誠治の周辺に起こる問題を描きながら、家族や身内について描いた内容です。
マルコスがシャブを処分しようと思い、取引をしますが、事務所で軟禁されてしまいます。その時の事務所の人は、松重豊が演じていますが、ワインを飲みつつの行動にはなかなかエグいところがあります。
「夢持てるのは、恵まれたやつだけです。」
日本人と移民とのふれあいは描かれますが、現実問題として、使い捨ての労働力と扱われることもあり、その現実の社会問題を本作では描いています。
誠治の友人が本作の物語の背景をある程度語ってくれます。本作の大筋は、アルジェリアと日本の問題というよりも、日本が変わりゆく時代の中で、取り残されているような感じも受けます。
「おれらは、家族ってものをしらずに育ったからな」
「俺たちにとっても孫は家族なんだよ」
細かい設定を書くとネタバレになってしまうのですが、中盤以降の展開は必見になってきますこの物語の引き上げ方は、起こらないとは限らないことでもあり、人一人のできることの小ささには無力感も感じてしまいます。
物語自体は、シリアスな物語でもあり、日本の小さな社会と世界の広さとの対比を通じて、描かれるテーマとしては、見ごたえあるところではあります。
本作の題名が「ファミリア」というところではありますが、その大きさとしての意味は、大小様々なところがあります。
「日本人にもなれない、ブラジル人にもなれない、俺等なんなんだよ。」
主人公は役所広司演じる誠治ではありますが、それだけではなく、その周辺のキャラクターがしっかりと描かれている作品です。