【日本映画】「シン・ウルトラマン〔2022〕」を観ての感想・レビュー

【監督】樋口真嗣
【出演】/長澤まさみ/有岡大貴//西島秀俊/山本耕史//山崎一/
【個人的評価】★★★☆☆

【あらすじ】「禍威獣(カイジュウ)」という巨大生物が現れるようになった日本が舞台。政府は「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立し、禍威獣と戦う。

円谷プロの空想特撮シリーズであり、戦うだけにとどまらないところはしっかりと意識しておくほうがよいです

樋口真嗣監督は、高校卒業後に、ゴジラの怪獣造形の携わり、映画業界に入っています。その後、1984年『王立宇宙軍 オネアミスの翼』で助監督を務め、様々な特撮に関わっています。2005年「ローレライ」で大作映画に関わり、以後、「日本沈没」「隠し砦の三悪人」など話題作を監督しています。

は、高校時代よりモデルとして活動をし、2001年「時の香り~リメンバー・ミー」で俳優デビューをしています。2012年には「サクライロ」で監督デビューをしており、2017年「blank13」では、第20回上海国際映画祭でアジア新人賞部門最優秀監督賞を受賞しています。

長澤まさみは、東宝「シンデレラ」オーディションで史上最年少の12歳でグランプリを獲得し、その後、映画『クロスファイア』で映画デビューしています。ティーン雑誌『ピチレモン』の専属モデルとしても活躍し、2004年『世界の中心で、愛をさけぶ』のヒロイン役としても話題となり、多彩な演技で注目されている女優です。

キャッチコピーは「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン。」と「空想と浪漫。そして、友情。」です。

「シン・ジャパン・ヒーローズ・ユニバース」(SJHU)の3作目となり、「シン・ゴジラ 」「シン・エヴァンゲリオン劇場版 」「シン・ウルトラマン 」となっています。なお、4作目は、「シン・仮面ライダー 」です。

物語は、禍威獣と呼ばれる巨大生物と戦うため禍特対が設立され、禍威獣と戦うストーリーです。

序盤から、禍特対の設立までの禍威獣が登場するシーンを矢継ぎ早に描いていき、禍特対の人員構成や影響力をサクッと描いていきます。

なお、オープニングのタイトル表示も、もともとのウルトラマンのオマージュになっており、シン・ゴジラと出るは、「SJHU」の関連と、もともとこんな感じでの「ウルトラQ」からのタイトルとなります。

シン・ウルトラマン自体は、オマージュが多数込められた作品でもあります。

もともとのウルトラマンを知っている人はどのくらいの思い入れがあるかによって、本作の感想が変わってしまうのかもしれません。

また、シン・ゴジラのイメージで本作を観るのもちょっと違うのかもしれません。それは、もともとのウルトラマン自体、毎回怪獣や宇宙人と対決する作品ではありますが、戦い方自体には多くの工夫があり、人間サイズの状態での怪獣等も登場することがあり、よく知られている巨大なウルトラマンが戦うだけにとどまらないところがあります。

また、オマージュと言う点では、はじめに登場したウルトラマンの口元に注目であり、3タイプ存在していたウルトラマンの顔の初代の顔をしています。その後、顔の造形は「Cタイプ」に変わりますので、再度鑑賞する際には注意して観るとよいです。

さらに、ウルトラマンのカラータイマーはついていない代わりに、シルバー、レッド、グリーンと、体の模様の色が変わります。

脚本はが担当しており、シン・ゴジラ同様に「難しい言葉を羅列する」手法ではありますが、その一辺倒ではなく、「ヤバい」「いいんじゃないですか?」等、妙に軽くあしらうような言い回しもされています。

これはウルトラマン自体のオマージュ色の強い作品であり、新たに再構築したというよりも、当時のウルトラマンに対する製作者の愛情が込められた作品でもあるので、その愛情表現に相容れない人にはおすすめできない作品ではあります。

「都度、気合を入れるために長澤まさみがお尻をたたく」「妙に顔のアップが多い」「顔のメイクがかなり濃い(ほとんどの人の顔のドーランが濃い)」といろいろと言いたいところはありますが、これは制作者の趣味だと思います。趣味を取り入れながら、原作にオマージュを捧げていると解釈するのが良いです。

撮影カットやアングルも妙なアングルが多く、違和感のある位置からの撮影が多いですが、この点については、製作者の趣味とウルトラマンの異様さのどちらも込められていると思います。

実相寺昭雄演出のオマージュとも受け取れます。

さまざまな事件と怪獣や外星人の襲来が描かれていますが、ほとんどはもともとのウルトラマンにある話を踏襲しているので、本作が突飛なわけではなく、もともとのウルトラマンの意外な設定と物語構成が、本作の主軸となっています。

特にメフィラス星人は本作を象徴する印象もあり、ウルトラマンの作品自体が、「戦うだけでなく、異様な星人との対話」というところも忘れてはいけないところだと思います。

そういう意味では、バルタン星人には登場してもらいたかったところはあります。

終盤、ゾフィーならぬ、「ゾーフィ」が登場しますが、この点についてはマニアックすぎるオマージュとなっており、当時の書籍に誤植として「宇宙人ゾーフィ」が書かれており、ここには宇宙恐竜ゼットンを操るとなっているネタが使われています。

もともとのウルトラマンは、人類の叡智で宿敵を倒すという描かれ方であり、本作でも、それは踏襲されています。

中盤以降、脚本が雑な印象を持ちますが、とはいえ、たった2時間で「空想科学シリーズ ウルトラマン」とは何だったのかということもある程度描いており、初代ウルトラマンの制作意義もなぞらえているのかと思います。

怪獣や外星人と戦うだけでなく、異なる考えを持つ外星人の存在をしっかり示している点では、きっちりとオマージュとなっています。

賛否の分かれる作品ではありますが、初代ウルトラマンにどの程度愛着があったかということと、その愛情表現の方向性が一致しているという人には高評価かと思われ、当時のウルトラマンを知らない人には、小難しい印象を受けながらも、これはこれで楽しめるとは思います。

リアリティをもたせながらも、特撮というところを優先する演出でもあり、物理法則を無視した感じもありますが、そもそも「ウルトラマン」は子供が楽しんでみていた円谷プロの空想特撮シリーズであり、戦うだけにとどまらないところはしっかりと意識しておくほうがよいです。

なお、監督は樋口真嗣であり、庵野秀明ではありません。誤解なきよう鑑賞ください。

シン・ウルトラマン

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