【日本映画】『災 劇場版(2026)』★★★★☆

作品紹介

【監督・脚本・編集】関友太郎/平瀬謙太朗
【出演】香川照之/中村アン/竹原ピストル/宮近海斗/中島セナ/松田龍平/内田慈/藤原季節/じろう(シソンヌ)/坂井真紀/安達祐実/井之脇海/
【個人的評価】★★★★☆

【あらすじ】人々の人生に入り込む「あの男」と、そこから生まれる「災い」を描いた群像劇です。

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謎なんて解明されなくても良いんです

関友太郎監督は、2012年よりNHKでドラマ演出に携わり、2020年より監督集団「5月」のディレクターとして活動しています。2026年「災 劇場版」で長編映画監督としてデビューしています。

平瀬謙太朗監督は、監督集団「5月」に所属をし、2022年「宮松と山下」で映画監督デビューをしています。2022年「百花」や2025年「8番出口」では脚本に関わっています。

物語は、様々な人物が不慮の死を遂げてしまう現象の中で、あの男という男が名前も印象も変えて登場し、死亡してしまう現象のなにかに関わっているのではないか?というストーリーです。

序盤から夜に地震が発生するシーンから始まり、その後、千葉で早朝に自転車で仕事場へ向かう女性が描かれます。

その女性は港の食堂で働いており、そこで漁師の「あの男」と出会います。

ここから物語は一人の主人公を追い続けるのではなく、さまざまな人物の物語へと移っていきます。

もともとWOWOWで放送された全6話のドラマを映画用に再編集した作品となっており、6つの物語がザッピングされながら進んでいきます。「受験を控えた女子高生」「運送会社に勤めるトラック整備士」「ショッピングモールの清掃員」「旅館の支配人」「事件を捜査する刑事」「スポーツセンターのインストラクター」と、それぞれ異なる人物の物語が描かれます。

基本的には6つの物語はそれぞれ独立しており、物語同士が直接つながっているというよりも、それぞれの人生に「あの男」が何らかの形で影響している構造になっています。そのため、映画版だけを初めて観ると、人物や物語の切り替わりが少しわかりにくく感じるところがあります。

ドラマ版では1話ごとにそれぞれの物語を追っていくことができるため、本作をより深く楽しむのであれば、ドラマ版をあらかじめ観ておくほうが人物関係や物語の構造を理解しやすいと思います。

ドラマ版では、香川照之が6つの異なる役を演じています。それぞれ「渡部シンジ」「多田」「志村」「橋岡」「大門宏樹」「歴島」と名前も異なり、人物の雰囲気や立場も違っています。この名前を一文字ずつ取っていくとメッセージが込められています。

同じ俳優が別人として登場することで、「この人物も何か関係しているのではないか」と感じさせられる一方、それぞれの人物はきちんと別人として成立しています。「あの男」という存在そのものが、本作の不穏な空気を作り出してます。

「人は理由もなく死なないので。」

人が死ぬこと、事件が起こること、人生が大きく変わってしまうこと。そこには何らかの理由があるのではないか。しかし、その理由を我々は本当に理解できているのか。そんな疑問を残す言葉でもあり、本作に謎解きを問いかけますが、謎自体は解明されないところに、絶妙な余韻があります。

「我々は、何かを見落としているのでしょうか?」

目の前で起きている出来事だけを見るのではなく、その裏側に何があるのか、なぜその人物に「災い」が訪れたのか、「あの男」は何者なのか、関連性が見え隠れしながらも、明確な回答がないところに、単純なサスペンスとは違った面白さが出てくる作品です。

映画版は6本のドラマを1本に再編集しているため、初見では情報量が多く感じるところがありますので、先にドラマ版を観て、6つの物語がどのように一本の映画として再構成されているのかを観るのがよいです。

物語がザッピングされることで、それぞれの人物の状況を理解する前に別の物語へ移ってしまうこともあり、映画版だけを観る場合には少し入り込みにくい部分があり、ドラマ版を観ているかどうかで印象がかなり変わる作品です。

全体としては、6つの物語を通して、人間の人生に突然訪れる「災い」と、その裏側にあるものを描いた作品という印象で、伏線や謎解きが主題ではなく、「災い」は常にはびこっているという点で、あの男はむしろその災いの可能性を示唆しているところでもあります。

伏線や謎解きや辻褄といった要素で物語に惹き込ませる作品が多いですが、説明セリフなどで物語の全容を語る作品よりも解明されないながらも、得体のしれない何かの影響で、テーマ自体もしっかりとメッセージがあるところは、秀逸な作品です。謎なんて解明されなくても良いんです。

予告編

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