【日本映画】「ミッドナイトスワン〔2020〕」を観ての感想・レビュー


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【監督】内田英治
【出演】/真田怜臣/上野鈴華//平山祐介//水川あさみ/
【個人的評価】

【あらすじ】トランスジェンダーとして身体と心の葛藤を抱える凪沙は、母に捨てられた少女と出会い、母性に目覚めていく。「母になりたかった」人間が紡ぐ切なく衝撃のラブストーリー。

なにかぼんやりしたものを考えるキッカケとなる作品

内田英治監督は、テレビのディレクターや雑誌ライターを経て、1999年に脚本家デビューをし、その後、2004年『ガチャポン!』で映画監督デビューをしています。2019年「全裸監督」など独特な作風の監督です。

草彅剛は、元のメンバーで、現在は「新しい地図」に参加しています。SMAPの頃にグループ活動以外に役者としても活躍しており、独特な雰囲気を持つというよりも、普通の人を演じさせると好評なところがあります。

服部樹咲は、4歳からバレエを始め、様々なバレエコンクールで優秀な成績をおさめており、2020年「ミッドナイトスワン」で映画初出演をしています。

物語は、トランスジェンダーの主人公 凪沙と母に捨てられた一果との交流を描くストーリーです。

草?剛演じる凪沙のトランスジェンダーっぷりは、客観的にはふつうにわかりやすいところはあります。

問題は、心と肉体の問題であるのはわかるのですが、その理由と状況がちょっとわかりにくいところはあります。

そもそも、LGBTの感情は理解しづらいところはあり、当事者の抱える問題であることはよくわかりますが、その感覚がわからないところが難しいところです。

母に捨てられた一果はあまり感情を出さずにいますが、バレエの前ではのびのびとしているところがあり、そこで

「うちらみたいなんは、ずっとひとりでいきていかなきゃいけんのじゃ」

「つよなんらんといかんよ」

このことがきっかけで、凪沙には母性に目覚め、一果を守っていこうとする気持ちが生まれ始めます。

対する一果は、心を閉ざし気味ではありますが、バレエをきっかけに自分の居場所を見つけ出そうとしていきます。

「ね、キスしていい」

田口トモロウも女装をしていますが、意外とこっちはしっくりしています。むしろ違和感が少ないです。

「いま流行っていますよねLGBT」

まあ、ここで観ている側の普通の感覚を代弁してくれます。

そもそも、流行り廃りというわけではなく、ずっと以前からこういう問題はあったのだと気が付きます。ただ、言葉としてしっかりと定着したということが重要でもあります。

「朝が来れば、白鳥に戻ってしまう。なんとも悲しい。」

凪沙と一果の関係を主軸に描かれていきますが、本作の主題として、LGBT的な要素を持つ凪沙の印象が強く、この事が本作のメッセージ性のブレを感じてしまいます。

「頼んでない」

一果に感情移入しづらいところがありますが、かと言って、凪沙にも感情移入しづらいところもまた、本作を理解しづらいところになっている印象があります。

コンクールのシーンのシンクロシーンはちょっとショックを受けます。

「大丈夫、大丈夫じゃ」

「あんたを迎えにきたのよ」

「かあさん、あたし病気じゃないの、だから戻らないの。」

「このバケモンが、帰れ」

一般の人からみれば、「理解され難い」という要素はよくわかります。

「わたし、女になったのはいいけど、そうなったらこんなになっちゃった」

「ハニージンジャーソテーでしょ」

説明がないのですが、状況をみればわかるのですが、どうなっているのはわかるようになっています。

本作の問題点は、観終わったあとの印象が妙に「ない」ところであり、一果としての視点で観てしまうとその道筋で得られなかった人たちの意味合いが都合よく解釈されすぎてしまっている点でもあります。

オリジナル脚本というところではありますが、最終的な救いという点では、各々のキャラクターの自己満足にすら感じてしまうところがあります。

決して駄作ではないのですが、観る人を拒んでしまう要素があり、広く理解できるような作品ではないので、気軽な気持ちで観られる作品ではありません。

ただし、なにかぼんやりしたものを考えるキッカケとなる作品であるとも言えます。

ミッドナイトスワン

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