作品紹介
【監督】ヤング・ポール
【出演】三浦貴大/成海璃子/板垣瑞生/永尾まりや/篠原信一/川瀬陽太/手塚とおる/麿赤兒/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 黒沢明は、B級ホラーを愛する助監督で、いつか自分自身が監督をしたホラー作品を作ることを目指して映画製作をしている青年。ある日、撮影現場で、書き温めていた脚本「ゴーストマスター」に魂が宿ってしまい、その悪霊が撮影現場を地獄絵図に変えていく。
サブスクで観る
技の掛け合いをするプロレス的な映画であり、相手のボケにボケ返すくらいの見方ができれば、楽しめると思います
ヤング・ポール監督は、アメリカ人と日本人の両親を持ち、日本の大学で映像を学びます。東京芸術大学大学院修了制作『真夜中の羊』が評価され、「今注目すべき7人の日本人インデペンデント映画監督」として選ばれます。2019年『ゴーストマスター』で長編監督デビューをし、テレビドラマや映画作品を送り出しています。
三浦貴大は、父 三浦友和 母 山口百恵の俳優。もともとは、大学時代に精神保健福祉士を目指していたが、迷った末に俳優となっています。
成海璃子は、1997年に劇団に入り、子役として活躍、2000年「TRICK」で主人公 山田奈緒子の幼少時代を演じてドラマデビューをしています。その後、2005年『瑠璃の島』でドラマ初主演、2007年『神童』で映画初主演をし、落ち着いた演技力が評価されています。外見や性格が大人びているというところもあり、実年齢よりも上の役を演じることの多い女優です。また、サブカルチャーの造詣が深く、かなりこだわりのある趣味があるようです。
また、インタビューで、究極のナンバー1映画は「悪魔のいけにえ」と答えており、一番見返した回数が多い作品で「とにかく狂ってる」という理由がナンバーワンの理由らしいです。
物語は、青春映画の撮影現場で、助監督の書き溜めていた脚本「ゴーストマスター」に悪霊が宿り、青春映画の撮影現場がホラー映画のような状況へと変わっていってしまうストーリーです。
序盤は、撮影現場で壁ドンの演技がうまくできず、撮影が頓挫してしまうところから始まります。
「お前は俺の奴隷だ、でも天使でもある」
結構すごいセリフですが、劇中劇というところと、そもそも、B級映画的な描き方があり、ワザとこのようなブッ飛び方をするシナリオとなっており、この時点でギャグと受け取れないと、この作品を楽しむのは難しくなります。
このB級映画臭いところが、理解できるのかどうか本作をしっかり楽しめるかというところです。
「タランティーノはいいの?」「あいつはいい。」
黒沢明の数々のB級映画というか、その持ち味を持つ有名監督への愛情はかなり強く、様々なB級映画を愛する監督名とそのテイストがこの作品の笑いどころでもあり、映画愛に通じるところでもあります。
そして、B級映画やホラー作品は低予算ながら、特殊効果を狙ったものも多く、コマ撮り撮影や意味のわからない造形などなど、こういうテイストがきらいじゃない人には楽しめます、
成海璃子自体はかなりなサブカル趣味な人でもあり、この映画のヒロインとして出演している点としても、その愛情はよくわかります。
終盤は、さらにエピソードが広がり、黒沢明と渡良瀬の物語が展開しており、終盤のカメラ映写で、しっかりとまとめはできているのかと思います。
というか、この特殊メイクがしたかっただけなんじゃないか?とも思えます。
弱いなぁと思うところは、黒沢明自身のB級愛が言葉程度で、本当に愛情があるのかというところにモヤモヤします。なんとなく、にじみ出てくるような偏執狂的なところが弱いのです。
とはいえ、多くの要素は一周回って笑いどころになるところであり、ホラーと笑いは紙一重というところを絶妙に描いています。
壁ドンの練習をしている壁自体も、ギャグにしか見えないところでもあり、このあたりで本作が確定的にネタ映画であるとなるところです。
愛情が昇華することで、解決の糸口を見出して行きますが、結局のところ、その糸口もなんでもいいといえば、「なんでも良い」わけで、ここに本気さを持ってきてしまうと観ている側の負けとも思えます。
そのくらい技の掛け合いをするプロレス的な映画であり、相手のボケにボケ返すくらいの見方ができれば、楽しめると思います。