【洋画】「セブン〔1996〕」★★★★★【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【出演】/グウィネス・パルトロ

【個人的評価】

【あらすじ】退職間近のベテラン刑事サマセットと若手刑事ミルズが連続殺人事件を捜査する物語。犯人はキリスト教の七つの大罪と関連づけて殺人を犯し、ついには犯人を追い詰めるが、意外な展開が待ち受けていた。

映画史に爪痕を残した名作

デビッド・フィンチャー監督は、「エイリアン3」やプロモーションビデオで卓越した演出力で評価のある監督ですが、「セブン」の公開時点では、まだ強烈なインパクトのある作品は生み出せていなかったことになります。

初監督の「エイリアン3」では、エイリアンの過去作品と比べて評価も低く、一部のコアなファンにしか理解されないところがありました。

本作では、スランプに陥っていた監督は脚本を1年半見向きもせず、落ち込んでいたと言われていますが、セブンの脚本を読み、再度脚本を読み直し、手直しをした上で製作をしたと言われています。

結末についても衝撃的すぎるので、手直しを配給から求められたものの、フィンチャー監督と脚本家の意向でそのままの内容で製作されました。

オープニングも衝撃的で、カイルクーパーの手がける秀逸すぎるインパクトの演出で、一時期大量に模倣されました。

フィンチャー監督の映画は、オープニングで物語を描くという手法がとられ、キャストやスタッフのクレジットとともに、世界観を演出することでも優れています。

なお、重要な役どころであるケビンスペイシーは、ネタバレを防ぐために、オープニングではクレジットされず、エンディングのスタッフロールでは、最初にクレジットされています。

七つの大罪を模した犯罪は、序盤で判明し、なぜ猟奇的な犯罪が繰り返されるのかを巧みに説明しているところは、よくできています。

その異常性のある犯罪は、7つの大罪が元になっているので、キリスト教圏ではタブー視されてもおかしくない罪だと思われ、日本では理解され難いところがあると思います。

嫉妬、大食、怠惰、憤怒、強欲、肉欲、傲慢これらに由来する犯罪の描き方は異常ではありますが、腑に落ちない点は犯人の動機が不明瞭なところです。

ですが、その不明瞭なところこそが、異常性であり、結末に結びつくのであります。

演出も素晴らしく、前半は常に雨の降るシーンで描かれており、後半はどしゃ降りの雨が止み、晴れます。

この天候の変化は犯人の行動とも一致していて、巧妙に計算された演出かと思われます。

秀逸なのは、犯人を見かけて追跡するシーン。ハンディカムのような映像でありながら、雨粒の一つ一つが見えるようであり、かつ、超望遠を使った撮影と手ぶれ感で、臨場感がとても強くなっています。

このシーンでさらに魅力なのは、犯人の顔が見えない点です。ここもたどり着けそうでたどり着けない犯人像にもなっており、事件の真相が気になる作りになっています。

終盤のシーンは、よくわからないという意見も聞きますが、注意深く見れば、箱が一体なんだったのかがわかります。

そして七つの大罪を成立した時に残るものはなんなのか?

ここまで綿密に仕組まれた事件でもありますが、やはりキリスト教の七つの大罪を理解していないと伝わらないのかなぁとも思います。

犯人の精神異常から生まれた事件とかたずけることもできますが、ヘミングウェイの引用を含めたセリフ「「この世は素晴らしい。戦う価値がある。」後半は賛成だ。」ここに尽きるのであり、ミルズの選んだ選択と犯人の意思は、ここに集約されているのかと思います。

コントラストのある映画でもあり、色彩と言う意味ではなく、対照的であると言う意味合いです。

理論派のベテラン刑事と、行動派の若手刑事と言う対比も面白く、事件とは足で捜査するものだと言いがちな、老刑事は、意外と頭脳派であったりするところも興味深いです。

もちろん、犯人とミルズ、サマセットの対照も演出として取り入れられているとも思われます。

ラストシーンでは再び雨の降るシーンへと戻ります。これも意図された雨であり、再び戦いのある世界は続いていくと言う意味合いがあるのでしょう。

1996年の映画でありながら、映画史に爪痕を残した名作であると思います。

予告編


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