作品紹介
【監督】押山清高
【出演】河合優実/吉田美月喜/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 藤野は、学生新聞の4コママンガで人気となっている小学4年生。ある日、同級生で不登校の生徒 京本の書いた4コマ漫画を新聞に載せたいと先生から告げられる。
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アニメで動きを補完されるとどうしても漫画の中で思っていた演出とは違う印象を受けます
押山清高監督は、アニメーターとして2004年『蒼穹のファフナー』の原画を担当し、その後、2007年『電脳コイル』で作画監督をしています。以降、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』『借りぐらしのアリエッティ』『風立ちぬ』にスタッフとして関わり、2024年「ルックバック」でアニメ映画監督デビューをしています。
河合優実は、2019年に芸能界デビューをし、『インハンド』でテレビドラマに初出演しています。その後、2019年「よどみなく、やまない」で 映画初出演をし、2020年「透明の国」で初主演をしています。『サマーフィルムにのって』『由宇子の天秤』での演技で評価されており、2022年には8本と非常に多くの作品に出演しており今後の活躍が期待できる女優です。
物語は、学校新聞で4コママンガを描いていた主人公が、ある日、不登校の生徒の4コマ漫画を新聞に載せたことで、2人の間で漫画を通じて関係が芽生えていくストーリーです。
序盤から、自分の机で4コママンガを書いている主人公 藤野が描かれます。
本作の肝でもある4コマ漫画の表現をどうするのかが気になるところですが、4コマ漫画自体は画風の違うアニメで描かれ、その後、4コマ漫画がサラッと出てきます。
藤本タツキの漫画は演出がうまいので、非常に評判の高い漫画家ですが、今回はアニメで動きが補完されるので、4コママンガの本来の持ち味が殺されている感じもします。
アニメと漫画の隔絶されるところは、動きや声が補完されるかされないかでもあり、自分の演出で読む漫画には、読み手の世界があるとは思います。
確かに主人公 藤野は、はじめは実際にあったことがない京本の絵に嫉妬をしますが、嫉妬を感じ取らせる等演出も、漫画の薄味感と、アニメの演出とでは、全然違う印象があります。
どこでも絵を書いているフジノの時間経過は、同じ格好と同じ画角で背景が変わるところで漫画ならでは演出がありますが、映画となると、音楽もあり、それよりも強烈に印象が変わるのは、色でもあります。
映画「ルックバック」はアニメーションでもあるので、カラー化するのは良いのですが、実際に、漫画のルックバックとは違うところもあります。
と、アニメ版と漫画版には、圧倒的に違いがあるので、本作を楽しむ上では、物語を感じていくしかないとは思います。
個人的には、漫画版の圧倒的な演出力の前に、アニメの動きがついてこれていないところがあり、漫画のルックバックにはそれだけの力があることが再確認できるのかと思います。
前半の藤野と京本の初めて出会いのあとの雨の中で踊りながら帰る藤野は、漫画版では完璧なほどの素晴らしい演出であり、アニメで動きを補完されるとどうしても漫画の中で思っていた演出とは違う印象を受けます。
蛇足とはまでは言えませんが、やはり、アニメとマンガは別物と考えるほうが良く、2024年10月から放送している「ダンダダン」も、アニメと漫画ではまったくの別物でもあり、むしろ、アニメの演出力で更に作品の質を高めているように思います。話は逸れますが、「ダンダダン」のアニメの曲自体、作品の相性と非常に高いところもあり、漫画家だけでなく、演出家や音楽制作で漫画の世界観をきっちりと仕上げたところを感じます。
ちょっと思うのは、最初に漫画賞に入選する結果を本誌で最初に見るのもなんか妙な感じがあります。こういう場合、事前に編集部から連絡があって然り、な気もします。
アニメが駄目というわけではなく、漫画原作が訴えたい漫画家の意図を正確に汲み取ってアニメ化するという相性の善し悪しで作品自体が大きく変わるのかと思います。
個人的には漫画を先に読んで、アニメを観ているのですが、この作品には音楽を感じなかったところもあり、付けられていた音楽が、ちょっと想像の範疇を超えないものでもあったのが心に刺さらなかった気もします。この作品には無音でも伝わる強さが圧倒的だったのが再確認できます。
ルックバックという作品は、主人公視点の物語ながら、あまり主人公に感情移入しにくいところもあり、むしろ、主人公は嫌な奴なところも感じます。そんな言動があったとしても、漫画を書いていた理由とそのつながりでふりかえっていくところにメッセージがあり、タイトルのルックバックは、まさにそういういみが込められているところでもあります。