作品紹介
【監督】ジュスティーヌ・トリエ
【出演】ザンドラ・ヒュラー／スワン・アルロー／ミロ・マシャド・グラネール／アントワーヌ・レナルツ／サミュエル・タイス／ジェニー・ベス／Saadia Bentaïeb／カミーユ・ラザフォード／Anne Rotger／
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 サンドラは11歳の息子と夫の3人で人里離れた山荘に住んでいたが、父親が転落死をしてしまう。
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「落下の解剖学」というタイトルは、非常にツボを抑えたところでもあります
ジュスティーヌ・トリエ監督は、2006年頃よりドキュメンタリー映画の制作をし、2013年「ソルフェリーノの戦い」で長編映画監督デビューをし、高い評価を得ています。2023年「落下の解剖学」で第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で女性監督として史上3人目となるパルムドールを受賞をはじめ、数々の賞を得ており、高い浄化を得ています。
ザンドラ・ヒュラーは、2005年『レクイエム～ミカエラの肖像』で映画デビューをし、数々の賞を受賞しています。その後、『ピノキオ』『ありがとう、トニ・エルドマン』『希望の灯り』などなどの作品に出演し、高い評価を得ている女優です。
本作は、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞しています。今後のアカデミー賞でも5部門ノミネートされており、評価の高さが伺えます。
物語は、人里離れた山荘で生活をしていた3人家族。ある日、夫が転落死をしてしまう。事件には不審な点も多かったが、事件を調べていくうちに、徐々に意外なことがわかっていくストーリーです。
序盤からサンドラがインタビューを受けているところからはじまり、別の部屋では、息子のダニエルが犬を洗っている状況、夫は別室で音楽を大きく鳴らせて仕事をしている状況になります。
この音楽が意外と後々印象を受けるのですが、このインタビューのシーンが後々重要になってきます。何気ないシーンのように見えますが、色々な見え方ができ、後々の物語の展開で、このシーンが意味深になってきます。
そこから、視覚障害のあるダニエルが描かれますが、犬の散歩から帰ると、父が転落死らしく事になっていることで物語が動き始めます。
面白いのは演出の視点が、序盤で、サンドラ→ダニエル→犬と変わっていき、登場人物紹介をしているような感じでもあり、本作の状況がシンプルに、自然に、描かれていきます。
タイトルバックは、独特なピアノの旋律がありますが、このピアノも意味深なところがあり、ぎこちない演奏なところが、ポイントです。
その後、事件の捜査と裁判のシーンが描かれる展開となっていきます。登場人物と事件の状況は序盤で示されたために、あとの展開は、事件の状況と取り調べとなりますが、物語が進むにつれ、事実が見方によっては変わってくるところになります。
他殺か事故かというところが物語のなかで謎となってきますが、状況的にはサンドラが犯人ではないか？というように見えてきます。
実際には目撃者もいない中での事件なので、真実が全くわからない中、物的証拠や状況で何が起こったのかを調査していきます。つまり、事実とは異なるけど、調査したらこういう理屈であるという流れにもなってきます。
状況の立つ人をそれぞれの目線でみるような作品でもあり、芥川龍之介の「羅生門」のように視点により状況判断が難しくなところが本作の「シンプルながらも難解な作品」と見えるところです。
1回観ただけででは判断は難しいところでもあり、同じ内容を再度見返すことで、シーンのイメージが変わって見えるところは秀逸です。
事件の真相を追うよりも、「状況と視点により印象が大きく変わる」ということがテーマでもあり「落下の解剖学」というタイトルは、非常にツボを抑えたところでもあります。
すべてを説明するような作品ではないので、不完全燃焼と受け取る人が多い気もしますが、本作のポイントは、事件の真相ではないところが重要でもあります。
予告編
