【監督】三浦大輔
【出演】藤ヶ谷太輔/前田敦子/中尾明慶/毎熊克哉/野村周平/香里奈/原田美枝子/豊川悦司/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 菅原裕一は、自堕落にフリーターの生活をする青年。同棲している鈴木里美という恋人がいるが、あることをきっかけに裏切ってしまい、家を飛び出して放浪する。
主人公に感情移入がほぼできないところで、観方を問われるところ
三浦大輔監督は、1996年に演劇ユニットポツドールを結成し、演劇を多く手掛けています。2003年「はつこい」で映画監督デビューをし、その後、「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を手掛けています。2014年「愛の渦」で自らの戯曲を映画化し、話題となっています。「裏切りの街」「娼年」など、演劇作品を映画化している作品も多く、オリジナル脚本の映画を送り出している監督です。
藤ヶ谷太輔は、11歳でジャニーズ事務所に入所し、1999年『怖い日曜日 友達のJ君』でドラマ初出演をしています。2004年にKis-My-Ft.のメンバーとなり、2005年からKis-My-Ft2として活動しています。2014年『劇場版仮面ティーチャー』で映画初主演をし、テレビドラマや映画、アイドルとしても活躍している俳優です。
前田敦子は、2005年「AKB48 オープニングメンバーオーディション」に合格し、AKB48メンバーとして活躍。その後、2012年に卒業をしています。女優業は2007年『あしたの私のつくり方』でデビューをしており、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」「もらとりあむタマ子」「さよなら歌舞伎町」などの映画のみならず、テレビドラマや舞台と活動の幅を広げています。2018年に勝地涼と結婚し、1児の母となっていますが、2021年に離婚を公表しています。なお、小型船舶免許2級を取得しています。
「そして僕は途方に暮れる」という題名は、大澤誉志幸の名曲から引用されています。当時は大沢誉志幸という名義でしたが、1999年以降、大澤誉志幸となっています。
原作は、シアターコクーンの『そして僕は途方に暮れる』舞台作品となり、作・演出は三浦大輔監督となります。
エンディング曲は、大澤誉志幸「そして僕は途方に暮れる」です。
物語は、自堕落な生活をしている主人公が、同棲している彼女を裏切ってしまい、家を飛び出して放浪する。いろいろなことから逃げ出しているうちに、偶然父親と出会い、父親もまたいろいろなことから逃げていた人であったが、徐々に何かが変わり始めるストーリーです。
序盤から普通の社会人とフリーターの同棲生活が描かれます。
「我慢できると思ったけど、我慢できないから言うね」
ほぼ序盤の時点で、主人公のクズなところがとても良くわかります。ちょっと問題があり自分に不都合なことがあると、その状況から逃げ出そうとするところがエグいくらいに共感できないところがあります。
同棲している家から、友人の家に転がり込みますが、自己中心的なところが非常に共感できないところがあります。友人から、先輩宅へと転々と居候をしていきますが、同じ轍は踏まないまでも、とはいえ、なんとなく、クズ感があります。
スマートフォンを常用していますが、壁紙は彼女との写真から設定変更していないので、なんらかの未練があるのかと思われますが、後々わかってきます。
先輩の家の家財品はなかなかシブい趣味な部屋です。初代ファミコン本体が箱の込みで保管されていました。徐々に、居候先へと転々とするのがルーチンギャグ的なところになっており、中盤までは、その展開で進みます。
「だって、それって人間関係切ってるってことですよね。」
後輩から、こう言われてしまうと、なかなか後輩のところに泊めてもらおうということは言いにくいので、些細な見栄を張ったりするところも、なかなかなクズ感です。姉に言われたくないところを指摘されて、逆にキレている点についても、なかなかイラッとします。要は主人公に共感できないのです。
実家にも戻って、母のところで過ごしますが、ここにも居場所がないというより、徐々に、自分の心地よさだけを求めていくロードムービーな気がします、
「そんなことはすべて、神様が許してくれるのよ」
母親もヤバい空気感があり、どこか病んでいる感がありますが、実家でもないところに居場所を探します。父親との出会いもありますが、ここまでの展開的には予告編で大体わかります。
とあることで、過去の関わりのある人が一同に介しますが、それでも、裕一のクズさはクズとしか言いようがないです。
「わたしは、あんたのこと絶対に許さないから」
父親はどちらかといえば、裕一側の人間ですが、とはいえ、裕一とは事情が異なるところもあります。
「裕一、オレは頑張ったぞ」
一瞬、夢オチにも思えますが、本作は夢オチではありません。
「全然、面白くならなかったジャネーかよ」
裕一は東京に戻りますが、そこから先の展開もあります。登場人物は限られていますし、主人公視点で進んでいく物語でもあるので、みづらさはないのですが、主人公に感情移入がほぼできないところで、観方を問われるところもあります。
現実逃避を続ける主人公の物語で、なんとなくそういう人に刺さるような内容かと思います。