作品紹介
【監督】戸田彬弘
【出演】土村芳/髙橋雄祐/桃果/前原瑞樹/大澤実音穂/菊池豪/木ノ本嶺浩/辻凪子/野島健矢/野村啓介/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 藤井薫は、30歳となり、壁に行き詰まっている映画監督。彼を支えてきた女優の宮崎寧々から、結婚を告げられる。彼女に気持ちのある薫は、彼女への想いを込めた脚本を書くが・・・。
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もう、こんな会話エグいです。(※「すごい」という意味)
戸田彬弘監督は、大学時代より映画製作をはじめ、演劇から活動を始め、独学で映画を制作してきています。2014年『ねこにみかん』で長編映画デビューをし、その後、コンスタントに作品を発表しています。
土村芳は、大学在学時から劇団に所属し、『私立探偵 濱マイク』シリーズで知られるようになる。2009年「QULOCO」で映画初出演をし、2020年「本気のしるし〈劇場版〉」で主演を演じています。映画や舞台に活躍する今後が楽しみな女優です。
高橋雄祐は、2016年『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』で映画デビューをしています。その後、2018年『あいが、そいで、こい』で映画初主演をし、映像制作にも関わっています。
物語は、主人公の監督が、壁に行き詰まりながら、想いを寄せる女性の結婚を知り、その2人の関係を描きながらも、すれ違う気持ちを描いたストーリーです。
序盤から、主人公の独白で始まります。
「受け入れがたい現実に直面したとき、人はどうやってその現実をうけとめるのだろう。皮肉なことにそれは、人生を豊かにするらしい。だとしたら、受け入れがたい現実と映画は似ている。そういうわけで、僕の人生を映画に託してみることにした。」
仕事関係の飲み会に嫌々ながら参加することとなり、そこで、本当は2人で行こうと思っていた宮崎寧々にとあることを告白されます。
「藤井くん、わたしな、結婚します。」
「30歳の誕生日までにしようとおもってる。」
飲み会でそのことを告げられることで、薫自身も気持ちがちょっとぐらついた感じになります。
そこから、2人で飲み会のあとの道を帰っていくのですが、この飲み会に誘われたことを聞き直して行きます。
この帰り道の2人の会話がとてもしんみりとしますが、男側としては、言葉がないようなところもわかります。
タクシーにのって帰るシーンで、なにか期待してしまう気もしますが、そんなことは起こらないのが現実でもあります。これ、すごくフラグが立っているのですが、こういうときの女性の心理はなかなか難しいところです。多分、止めてほしいんだと思いますが、このシグナルを読み取れないのが、人生ってところかなぁと思います。
薫の部屋のベランダには、寧々との暮らしをしていた記憶も残っています。
部屋の中にも、色々なところに、その記憶が残っています。
そこで、タイトルとなり、本作「僕たちは変わらない朝を迎える」の本題となります。
「なんか、綺麗事なんだよなぁ〜」
映画監督として表現したいことを迷っている薫は、やはり脚本にもスパッとしない感じを指摘されてしまいます。
妙に行き詰まったところになりますが、自ら作る作品もなんとなくもやっとしたことを役者に代弁させているような気もします。
なんというか、デジャブを感じるようなニュアンスがあります。
「電話に出なかったらもう一軒行きます。」
「理想を書くな、現実の中の希望を書けって言われてなぁ」
そこで、あの日の夜を再度もしもを考え直します。
「寧々は僕のことを運命の人だといった、その言葉が幼くて僕は受け入れなかった」
結局、そこで思い返すことで、美しいようなところが回想のように描かれます。
これは男女問わず、どこかで言葉や態度で思いを伝える思い切りが、思いきれなかったところで後悔することがあったのかなぁと思うのです。
「これは、僕の希望の物語だ。」
このさきも物語は続いていきます。
「どんな人か、聞かんねんな」
ほんとうに、女性の気持ちがわからない、そんな脚本でもありますが、書いているのは、戸田彬弘監督のオリジナル脚本です。
そんな脚本を書けるところに、戸田彬弘監督の凄さがあります。
「でも、近すぎたら無理や」
「ようわからなぁ」
「わかってもらえんかったから、いいの、それで。」
もう、こんな会話エグいです。(※「すごい」という意味)
2人が別れてから、昔を思い出しながら海辺を歩く藤井とタクシーに乗る寧々がザッピングしますが、この終わり方とこの曲には胸がクッとします。
51分の小品ですが、むしろこの時間でとてもすごいものを見せつけられたように思います。