作品紹介
【監督】細田守
【声の出演】 神木隆之介/桜庭ななみ
【個人的評価】★★★★★
【あらすじ】主人公は高校2年生の健二。インターネット上の仮想空間OZ(オズ)は世界的に利用されるサービスとなっており、バイトとしてOZの保守点検をしていました。ある日先輩の夏希からバイトと称して彼女の実家に行くということをお願いされる。実家には、90歳になる夏希の祖母が誕生日で、26人に親戚が集まっていた。そこで、健二は「夏希の婚約者」を演じることになる。同時に、深夜に送付された謎のメールの暗号を解読してしまった健二は、OZに重大な問題を発生させてしまうことになる。
サブスクで観る
いつの季節でも、大人からこどもまで安心して観られる傑作
細田守監督の初の長編オリジナル作品。
脚本の奥寺佐渡子、キャラクターデザインの貞本義行は前作「時をかける少女」でも参加しています。
キャッチコピーは、「これは新しい戦争だ。」「つながりこそが、ボクらの武器。」
舞台となる夏希の実家は、長野県上田市が設定されています。
物語ですが、インターネットの仮想空間でのアカウントが奪われるお話となっており、2019年の現代ではかなり現実味を感じられる内容です。
当時2009年の時点でも解釈しやすい内容ですが、やはり、一部の人にはアバターやOZと言った設定が理解しずらいところはあったかもしれません。
田舎の大家族の風景の描写が見事。ただ食事をするシーンなのに、FIXの状態で全員が各々動いて食事をしている場面はアニメとしてもとても興味深い演出です。
主人公は、数学に関しては、日本代表選手にもなれるほどの天才という設定ですが、実際には普通の高校生。どこか内向的なところもあり、観ていて共感をしやすい部分はあると思います。(※数学の天才という部分を除いて。)
一晩で暗号めいた数式を解読するところや、生年月日から誕生日を言い当てるところは、あとあとの布石となっており、描き方は見事です。
OZの世界観は、細田監督の2000年の作品 『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』との類似点を指摘している人もいますが、監督自身がセルフカバーをしているということで、別になんら問題はないと思います。
むしろ、名作でもある『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』の内容をさらに色濃く描いた本作は、名作に恥じない傑作になったと思っています。
中盤に登場する侘助は、この物語の主題をさらに引き立たせる要素でもあり、健二と夏希だけの話に留めないところに奥深さがあります。
暗示する演出も素晴らしいところがあり、「手を繋ぐ」という演出は、おばあちゃんのメッセージでもある「大切なのは手を離さないこと」というところであり、これは、侘助の子供時代、そして、夏希と健二の手を重ねるシーン、さらには要所要所で出てくる「朝顔」につながっています。
朝顔は、支柱にツタを絡ませることから、「つなぐ」というところを暗示しています。
「つながり」という点では、田舎の大家族の繋がり、インターネット上でのアバターの繋がり、OZの対策をおばあちゃんが電話1本で周囲を動かしていく繋がり、とつながることがこの物語のキーにもなっています。
名セリフ「お願いしまぁああぁす」も、健二がおばあちゃんに対する答えと、田舎の家族に対する言葉、そして、夏希に対する言葉と、行動の裏に隠された真意が非常に緻密に計算されているところは、とてつもなく素晴らしいところです。
OZを支配しようとする「ラブマシーン」の設定も見事で、侘助に足りなかった要素、「愛情」が裏打ちされたところでもあり、考え抜かれた脚本と演出が素晴らしいです。
「ラブマシーン」との対決も、格闘の闘いに始終するわけでもなく、きちんと布石とされてた花札が生かされており、そのさらに先の「計算ごと」にも布石されていたことでもあり、ここまできちんとパズルのピースがピッタリと収まる展開は傑作としか言いようがありません。
サマーウォーズという題名ながらも、夏になれば観たくなるというよりも、いつの季節でも、大人からこともまで安心して観られる傑作です。