作品紹介
【監督】白石和彌
【原作】柚月裕子
【出演】松坂桃李/鈴木亮平/村上虹郎/西野七瀬/音尾琢真/早乙女太一/渋川清彦/毎熊克哉/筧美和子/青柳翔/斎藤工/中村梅雀/滝藤賢一/矢島健一/三宅弘城/宮崎美子/寺島進/宇梶剛士/かたせ梨乃/中村獅童/吉田鋼太郎/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 日岡は、暴力団組織を取り締まる捜査を行う刑事。3年前に先輩の伝説のマル暴刑事 大上とともに捜査をしたものの、抗争に巻き込まれて殺害された先輩の意思を継ぎ、暴力団と対立していく。
サブスクで観る
「アウトレイジ」のようにトーンダウンしていくのであれば、スパッと完結で良いのかも
白石和彌監督は、助監督経験を経て、「ロストパラダイスイントーキョー」で長編デビューをし、その後、良作を作り続けている監督で、個人的に好きな監督の1人です。
松坂桃李は、2008年にオーディションでグランプリを受賞し、『FINEBOYS』専属モデルで芸能活動、その後、2009年『侍戦隊シンケンジャー』でテレビドラマ初主演をし、多数のテレビや映画に出演しています。
鈴木亮平は、大学で演劇サークルに入り、そこで役者の道を進むことを決断します。2006年『レガッタ~君といた永遠~』で俳優デビューをし、2007年『椿三十郎』で映画初出演をしています。その後、2014年のNHK朝の連続テレビ小説『花子とアン』でヒロインの相手役を務め、2018年には、第57回NHK大河ドラマ『西郷どん』で大河ドラマ初出演にして初主演をしています。テレビや映画で活躍をし、存在感のある演技に定評があります。
村上虹郎は、父 村上淳、母 UAを持ち、2014年『2つ目の窓』で映画初出演で主演をしています。2015年『天使のナイフ』でテレビドラマ初主演をし、テレビや映画で活躍している俳優です。
原作は、柚月裕子の小説となっており、本作は、映画用の完全オリジナルストーリーとなっています。
物語は、広島の架空の都市で、警察とヤクザの争いを描いた作品で、本作は、前作から3年後の世界となっています。
前作では、役所広司演じる伝説の刑事 大上のインパクトが非常に強いながら、その影で徐々に成長してきた日岡が主人公となっています。
やはり、広島弁を使いながら、ヤクザの抗争を取り仕切る刑事という役どころは、前作の印象とは違い、凄みが効いていて大上を彷彿とします。
序盤は、前作から数年経過後の尾谷組と加古村組の抗争終結後の残党が再度、抗争を始めようとしています。
そこで関係してくるのは、今回の中心人物となる鈴木亮平が演じる上林となります。
各派閥の関係性を理解するには、前作「孤狼の血」を観ておくほうが絶対に良いです。
なお、前作の主役は、役所広司演じる大上刑事であってよいと思いますが、本作は、ほぼ群像劇的なところでもあります。
「写ルンです」を使っての写真撮影を行っているところで、時代感を感じます。このあたりの時代考証もあり、本作は、1991年頃の物語設定となっています。
上林の非情っぷりが半端ないシーンが多いのですが、本作は、このようなバイオレンスというよりも、暴力団を抑えるために、刑事が奔走するところが魅力だったように思います。少なくとも、前作では、大上がその役回りとなり、物語を引っ張っていましたが、本作では、もう大上はいません。
「わしゃ、はなから兄貴と取引するつもりはにゃあで」
「人間の生命ってすごいもんやのう」
鈴木亮平演じる上林は相当な極悪っぷりでもあり、容赦ない感じはあります。
が、中盤で、チンタが追われるシーンでは、上林がこうなった理由もわからなくはないです。いや、多分この悲しみは伝わらないのかもしれませんが、上林自身がねじ曲がってしまったことについては、それぞれに理由はあります。
日岡の痩せこけた感じや強引なところは、前作の大上の印象はありますが、線の細さも感じます。
「黙って座っとけよ」
滝藤賢一の眼力がスゴいです。
「わしら、相棒じゃないの」
前作の「孤狼の血」から継続したストーリーとなりますが、ある程度の登場人物が継続しているだけで、本編だけでも、楽しめないことはないです。ただし、やはり、「仁義なき戦い」のアンサー的な本作を考えると、順を追って理解していくほうがよいです。
どうしても前作と比較してしまうところがありますが、どちらかといえば、今回は、暴力団側の事情が多く描かれ、警察側は、完全に犬のような感じがあります。
決して駄作ではないのですが、今回はエンタティメントに媚びてしまった印象もあり、前作の孤高さが、薄れてしまったようにも思います。
さらなる続編もあり得るのかもしれませんが、「アウトレイジ」のようにトーンダウンしていくのであれば、スパッと完結で良いのかもしれません。