作品紹介
【監督】セドリック・クラピッシュ
【出演】マリオン・バルボー/ホフェッシュ・シェクター/ドゥニ・ポダリデス/ミュリエル・ロバン/ピオ・マルマイ/フランソワ・シビル/メディ・バキ/スエリア・ヤクーブ/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 エリーズは、パリ・オペラ座バレエ団に所属する女性。ある日、恋人の裏切りから、気持ちの乱れにより足首を骨折し、バレリーナの道が閉ざされてしまう。新たな人生を模索しながら、コンテンポラリーダンスを知る。
丁寧に作られた作品でもあり、セドリック・クラピッシュ監督らしい作品
セドリック・クラピッシュ監督は、フランス出身の監督で、アメリカで映画製作を学んだのち、1985年のレオス・カラックス監督作品「汚れた血」で照明部のスタッフに参加しています。1992年「百貨店大百科」で長編映画監督デビューをし、セザール賞にノミネートしています。その後、1996年「猫が行方不明」でベルリン国際映画祭の映画批評家協会賞を受賞しています。自身監督作では、ワンカット登場することがよくあります。
マリオン・バルボーは、フランス生まれのダンサーで、6歳よりダンスの専門教育を受け、2008年にオペラ座の正式団員となっています。ダンサーとクラシック作品を踊り、さらにオペラとバレエを一体化した独創的なダンスもしています。2023年『ダンサー イン Paris』で俳優デビューをし、セザール賞有望若手女優賞にノミネートされています。
物語は、オペラ座のバレリーナが怪我によりダンサーの道を諦めてしまいますが、、コンテンポラリーダンスに出会い、第2のダンサーとして自分自身を見出していくストーリーです。
序盤から、オペラ座でのダンス公演に出演しているエリーズが描かれ、バレリーナとしてしっかりとキャリアを積んできており、エトワールを目指していることがわかります。
タイトルバックの映像はなかなか美しいです。
ダンス公演の際、舞台の袖で待っているときに恋人の裏切りを見てしまいます。ほとんど会話のない演出ですが、振る舞いだけでだいたいの演出をしているところではありますが、わかりやすさはあります。
その裏切りの動揺から演技を失敗してしまい、足首を捻挫してしまいます。
当初は、ダンサー生命に関わることはないような感じでしたが、やはり、20代の貴重な2年を治療に費やすということで、失意に陥り、ダンス以外の道を模索し始めます。
料理の手伝いをしているときに、コンテンポラリーダンスと出会い、新たなダンサーの道を選んでいきます。
挫折からの立ち直りというところを描いている作品ではありますが、それ以外にも、ダンスやバレエの魅力も伝えているところはあり、出演者の何人かは本物のダンサーで、主演のマリオン・バルボー自体も、オペラ座の団員として活躍をしているダンサーです。
セドリック・クラピッシュ監督作ということで、細かい描写の積み重ねで心の機微を描いているところはさすがです。
パリに戻ってから、メディに会うために街を走りますが、パリの町並みを走るというだけで絵になるところもさすがです。
本作が映画初主演のマリオン・バルボーではありますが、もともとバレエダンサーというところもあり、表現力もあり、なによりキュートなルックスではあるので、主人公視点で感情移入もしやすいのかと思います。
終盤のダンスも見応えがあり、ただのダンスシーンにも見えますが、序盤と終盤のエリーズのダンスは異なるようで、どこか根本にはしっかりとエリーズの夢や希望が詰まっているような感じもします。
父親と娘の関係性もしっかりとまとめられており、主人公はエリーズではありますが、違う視点で観たときには違う感想を受けるようにも思います。
ふと目をやると、駅前の歩道でバレリーナの列が見え、さらに駅前広場では、仲間たちが踊るという姿が描かれますが、しっかりとエリーズのこれまでのことがまとめられているように思います。
突き抜けるような感動はありませんが、丁寧に作られた作品でもあり、セドリック・クラピッシュ監督らしい作品でもあります。