作品紹介
【監督】原田眞人
【出演】安藤サクラ/山田涼介/生瀬勝久/吉原光夫/大場泰正/淵上泰史/縄田かのん/前田航基/鴨鈴女/山村憲之介/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 橋岡煉梨(ネリ)と弟の矢代穣(ジョー)は、大阪で特殊詐欺をしている姉弟。ある日、3億円の大金を手に入れ、追われることになる。
サブスクで観る
ラストシーンまで周到なところのネリではありますが
原田眞人監督は、ロンドンに語学留学中に書いた評論を「キネマ旬報」に掲載されたことにより、映画評論家として多数の評論をしています。その後、帰国をし、『さらば映画の友よ インディアンサマー』で映画監督デビューをしています。1988年『フルメタル・ジャケット』で戸田奈津子の日本語字幕にNGが出たために、代役として翻訳を行い、兵隊スラングをしっかりと翻訳しています。他にも『グッドモーニング・ベトナム』『時計じかけのオレンジ』と難解な翻訳が必要な作品の翻訳も行っています。1985年「盗写 1/250秒 OUT OF FOCUS」や1995年「KAMIKAZE TAXI」でも高い評価を得ています。
安藤サクラは、父に奥田瑛二、母が安藤和津、姉が安藤桃子という家系で、高校時に女優の道に進んでいます。2007年『風の外側』で映画デビューをし、2009年「愛のむきだし」で存在感のある演技で評価されています。2011年『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』で第84回キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞を受賞をし、その後も様々な作品で圧倒的な評価をされています。『かぞくのくに』『百円の恋』『万引き家族』など、話題作に出演している女優です。
山田涼介は、2004年にジャニーズ事務所に入所し、2006年『探偵学園Q』でドラマ出演しています。その後2007年にHey! Say! JUMPのメンバーとしてデビューしています。2015年『暗殺教室』で映画に初主演をし、第39回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しています。
物語は、特殊詐欺をしていた姉弟が、3億円の大金を手に入れたことで、様々な人から狙われてしまうストーリーとなります。
序盤からとある倉庫のような喫茶店でネリが高城と会話をしますが、高城の高圧的なところと会話の流れが凄く早いところもあり、安藤サクラと生瀬勝久の芸達者なところを感じます。相手の呼吸に合わせずに、会話を入れてくるところは、本作で一番の見どころかもしれません。
安藤サクラと生瀬勝久は大阪弁が非常に板についていて、大阪弁の違和感はありません。
本作では、大阪を舞台にした受け子詐欺を中心とした物語で、序盤では受け子詐欺の犯行を丁寧に描いています。
多くの人間が関わり受け子詐欺を行っていることがよくわかり、警察側と詐欺グループの両面をしっかりと描いているので、わかりやすいです。
本作は受け子グループの一人が主人公であり、その弟とともに物語が描かれていきます。
中盤までは、受け子詐欺を取り巻く、警察と詐欺組織の関係性が描かれていき、多くのキャラクターが登場し、後半の流れが掴みやすいように描かれていきます。
ネリが主人公でもあり、ネリを中心に物語は描かれますが、ネリ自体はなかなかな知能犯でもあり、警察や詐欺組織の間で立ち回っていくところは後半の展開の確固たる自信につながっていくところではあります。
受け子詐欺を背景とした物語ではありますが、犯罪を推奨しているわけではなく、あくまでクライム・サスペンスとして観るのが良いです。
中盤、とある人が出てきますが、チョット意外なところでもあり、チョイ役ではありますが、この人は殺さない殺し屋なのかな?と思います。
「うちら、人生ついてへんねんで。勁草にならなあかん」
この勁草って言葉を使うところはかなり博学なところも感じます。勁草とは、踏まれても生き残る草のことを指します。
原作は、直木賞作家・黒川博行の小説「勁草」となります。つまりこの「勁草」ということが本作のキーとなるメッセージでもあります。
「聞こえとったら、アンサーせえ」
ネリはどこか人生を虐げられつつ生きてきたわけで、そのこともあり、色々な組織を敵に回しながらも、巧妙な立ち回りのお陰で追い詰められてもしっかりと生き残っていくところになります。
ネリの左耳が聞こえなくなったことはサラって説明をしており、細かい伏線もしっかりと回収します。
宇崎竜童や岡田准一など脇役の存在感が非常に良いながら、その存在感の遥かに上を行く安藤サクラの主人公が非常に見どころでもあり、計算高いネリの行動が面白いです。
ラストシーンまで周到なところのネリではありますが、周囲のキャラクターが最後ではボヤッとしてしまうところもあり、結果的に安藤サクラがすべてをかっさらっている作品です。