作品紹介
【監督】熊澤尚人
【出演】上野樹里/林遣都/ファン・ペイチャ/野村周平/川瀬陽太/嶋田久作/原日出子/バカリズム/酒向芳/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】宇宙から地球にやってきた異星人は日常の生活に紛れ込んで過ごしていた。人々は異星人難民であるXを探そうとするが、新聞記者の笹憲太郎は、柏木良子にX疑惑を持ち、ある真実にたどり着いていく。
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SF作品のように見えつつも、ラブストーリーであり、かつ、メッセージ性を隠し持った良作
熊澤尚人監督は、大学時代より自主映画を撮影し、2005年『ニライカナイからの手紙』で長編映画デビューをしています。2020年に初の小説『おもいで写眞』発表し、映画化もしています。
上野樹里は、2001年「クレアラシル」の3代目イメージガールとして芸能界デビューをしています。2002年『生存 愛する娘のために』で女優デビューをし、2003年「ジョゼと虎と魚たち」でえ映画デビューをしています。2004年「スウィングガールズ」で主演を演じ、その後、「亀は意外と速く泳ぐ」「サマータイムマシン・ブルース」と良作に出演しています。2016年TRICERATOPSの和田唱と結婚をしています。
林遣都は、2007年『バッテリー』で映画デビューをし、初主演もしています。その後、テレビドラマにも出演をしており、2018年「おっさんずラブ」でも人気となっています。2020年『世界は3で出来ている』では、テレビドラマで一人三役の一卵性三つ子役を演じて話題となっています。2021年元AKB48で女優の大島優子と結婚をしています。
物語は、惑星間の紛争で難民となり地球にやってきた宇宙人が、Xという存在として地球の日常に紛れ込む。Xの存在の疑惑に主人公がとある女性に疑いを持ち、追跡をしていくストーリーです。
原作は、パリュスあや子「隣人X」という第14回小説現代長編新人賞を受賞小説です。
地球人に紛れ込んだ異星人を追っていくうちに、その女性が異星人ではないかという疑惑を持ち、恋心を抱きながら、ある真実にたどり着いていくストーリーです。
序盤から、惑星Xでという紛争が起き、地球外生命体のXを地球に受け入れることが説明されます。主人公 笹憲太郎は、雑誌社でライターをしていますが、Xについて記事で一旗揚げようとします。
X自体は、人間社会に溶け込み、最初に触った相手のコピーとしてなりすますことができるので、誰がXであるのかがわからないなかで、目星をつけた人物に対し、Xなのかどうかを探り始めます。
笹憲太郎は、柏木良子と台湾人の林怡蓮をXと想定して調査を始めますが、柏木良子の調査のために、好意を持って近づこうとしていきます。
「怪しいものではないんです。スクラッチもう一枚買うんで、当たったら一緒に食事してください」
なかなか挙動不審な笹ではありますが、ちょっと不器用だからこそ、なかなか芽の出ない記者なんだと思います。
柏木良子と林怡蓮の話が並行して描かれ、笹憲太郎自身は、柏木良子と親密になっていき、素性を調査していきます。
柏木良子演じる上野樹里自体は、ふわっとした雰囲気で生活をしている人でもあり、36歳という設定で、質素な生活をしているところで、その怪しさから行動もも含めてハマリ役のような印象があります。
中盤までは、笹と良子の恋愛物語となっていきますが、当然、笹自体には本来の目的があるので、徐々に確信に迫っていきます。
中盤以降は、笹の書いた記事によりXと思われる人がマスコミに追及されていくことになりますが、この流れは、マスコミの取材という名の屈折した追い込みの問題をメッセージとして感じるところがあります。
1982年「遊星からの物体X」と似たような雰囲気も感じますが、本作では、Xの正体が問題というよりも、受け入れがたい人種や人々とどのように関わっていくのか?ということが主題のようにも思えます。
Xである人物は3人ほど登場してきますが、それぞれ誰がXなのかというのは明確に示されています。疑われながらも、実際には対象ではなかった人や、実は意外な人物がXであったりと、「他人からどのように見られているのか?」ということが、本作のメッセージあるのかと思います。
柏木良子自体もXであるかどうかは、ここでは名言しませんが、ラストシーンでの笹との受け答えの伏線の張り方が非常によくできています。
「Xは、地球人には一切の危害も加えない。」というところが非常にポイントでもあり、危害を加えないという前提の上で、マスコミや特ダネを追っている人々には、「危害を加えているのか?」という逆説的なところからXであるかそうでないかの違いが読み取れます。
SF作品のように見えつつも、ラブストーリーであり、かつ、メッセージ性を隠し持った良作です。