【洋画】「フィンガーネイルズ(2023)」★★★★☆【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】カップルが本当に愛し合っているのかを測定するためにお互いの爪でわかる検査ができる世界。主人公 アンナは、ライアンをパートナーとして過ごしており、パートナーとしての検査でも証明されていたが、アンナは確信を持てずにいた。そんな中、アミールという検査をしている研究所で仕事を始める。

非常に女性視点であり、相手の気持ちの確証を得たいけど、事実を知ってしまいたくもないという女心が非常に強いところ

クリストス・ニク監督は、ギリシャの監督で、映画やCMのアシスタントをしてきており、2012年「km」で短編映画を監督し評価されています。2022年「林檎とポラロイド」で長編映画初監督をしています。

ジェシー・バックリーは、2016年「戦争と平和」のTVシリーズで注目され、評価されています。2017年「Beast」で映画デビューをし、2021年『ロスト・ドーター』では数々の賞にノミネートされ、評価が高い女優です。

物語は、カップルの爪を使って相性を測定できる世界の物語で、主人公のカップルは陽性だったが、お互いの関係には確証を持てずにいたというストーリーです。

序盤から、アンナが面接を受けに車を運転しているシーンから始まります。ラジオからは、カップル検査で陰性だったことがわかったリスナーの話が出てきます。

この世界観では、カップルの相性を調べるために、お互いの爪を抜き、その爪で相性を測定できる環境であります。アンナは序盤、面談をしていますが、仕事を探しているところになります。

面談相手の指に包帯が巻かれていることで、その検査を行ったことがわかる世界観です。妙にめんどくさいとは思いますが、あくまでこんな世界観というところに本作の面白みがあります。

「愛し合っているなら証明はいらないって言ってる」

アンナをはじめ、多くの登場人物がどこかぎこちないところではありますが、検査で陽性が出ている確信があったとはいえ、結局、気持ちのゆらぎは、検査だけでは済ますことができないような印象を感じつ流れです。

検査は、100%と50%と0%の3パターンしか表されず、思えば、ざっくりとした検査だなぁとは思います。

アンナが主人公ではあり、アンナ視点で物語が進みますが、アンナが感じていることはしっかりと描かれず、行動で気持ちのゆらぎが見え隠れします。

結局、アンナはカップル検査のスタッフとして仕事を始め、そこでアミールと出会います。アミール自身もカップルがいますが、言動にやはりちょっと詰まっているところが出てきます。わざとのようにも見えますが、登場人物がなにか疑心暗鬼な感じを持っている印象があります。

カップルの検査を続けていくうちに、自分自身のパートナーと照らし合わせてしまうような感じもあり、アンナ自体もさらに、ライアンとの関係に不安を覚える感じがあります。

自宅でのライアンの会話もちょっと筋が通らないところがありますが、これにも理由があるのかと思います。

アミールはちょいちょい真面目な顔をして冗談を言いますが、ほとんど理解されないところもあり、スベってるのですが、本作の流れ的にちょっとコメディな要素も入れたかったのかと思います。どちらかといえば、本作は、カップルの愛情を描いているので、コントというよりも、普通に設定が異世界感のラブストーリーではあります。

アンナの気持ちもきちんと表現されていますが、特にプールの演習で見ている人をしっかりと確認するとわかります。

アミール自体も思っていることがあり、車の窓が開かないことをアンナに知られ、そのままでもよいといったあとにアンナが去り
その後、やはりキチンと開けようとするところも明確な暗喩になっています。

お互いの匂いを探し当てる演習も、後々、アンナとライアンの関係でも実生活でアンナが意図的に試すところがあり、アンナとライアン、アミールとナターシャのそれぞれの関係をしっかりと描かれています。

アンナがアミールに有名卓球選手を聞くところがありますが、きちんと伏線があるので、アンナが何を考えているのかがぼんやり見え隠れします。

「大丈夫、ぼくらは毎日やっているから」

とは言われても、生爪を引き抜くのは非常につらいよなぁと思うのです。

検査では当然、0%と判断されることもあり、その場合のカップルの関係が今後どうなるのかというのが悲しい結末にも思え、実際、相性がわかるということは形にしてはいけないような気もします。

「味わえないものもあるが、別にいいさ」

何気ない言葉ですが、パートナーとなる人もいれば、そうでない場合もあり、人生は選んでいくことの繰り返しの暗喩なのではと思います。

「この実習、本当に必要なのかなぁって、私達思っていて」

パートナー選びの実習は様々出てきますが、相手の匂いを嗅いだり、スカイダイビングをしたりと、ありえそうでありえない感じのトレーニングは面白いです。こういう視点は、監督の元で制作していたところにもよるのかと思います。

アミールが着替えのためにアミールの家に行きますが、そこで、アンナは家に入れてもらえます。最初は、拒まれてしまいますが、その理由も状況を見ているとわかります。

プールの演習もダイビングの演習もうまく行っていて、アンナもベストカップルと思っていたカップルが、土壇場で検査を拒否ってしまうこともあり、アンナがアミールに相談するシーンがありますが、デジャブを感じます。本作の根底には、愛情や感情は外見では分からないというところもあり、かといって、検査が重要であるというところも見えないところではあります。

この2人のカップルの結果も、あえて言葉では出ませんが、この全てを語らない演出は独特です。なお、このときにアミールの抜いた小指の爪は非常に需要なところです。

ちなみに、この爪のカップル検査機ですが、電子レンジ臭いレトロ感があり、雑な印象ですが、本作の重要な要素の検査機が意外と重要ではないところに、本作のちょっと不思議なところがあります。

この雑な検査機だからこそ、この検査の信憑性が疑わしい気もするところで、アミールとアンナの関係も、推察しながら物語が進みます。人の心はわからない、ながらも、アンナは相手の気持ちがわかっているところになり、相手の気持ちがわかっているならば、私の気持ちもそうなればいいという考えを持つのもわかります。

「気持ちがかわったのか?」

アンナとライアンの関係は陽性だったのですが、マンネリということで、気落ちのすれ違いをどう捉えるのかが、終盤の流れです。そこには、アミールの存在もあり、アンナとライアンとアミールの関係の物語に集約していきます。

「誰かを愛するって、一人ぼっちよりも寂しい気がする」

クリストス・ニク監督は男性ではありますが、本作は、非常に女性視点であり、相手の気持ちの確証を得たいけど、事実を知ってしまいたくもないという女心が非常に強いところがあります。

なお、爪を抜いて検査にかけるという設定ですが、手の指の爪が10本しかないので、そんなに検査しても仕方ないよなぁとも思います。

「Only You」がテーマ曲ですが、もともとは、英国シンセポップデュオ「ヤズー」の曲であり、アカペラのカバー版は、の「天使の涙」でも使われている曲です。

本作に興味を持った人は、ヨルゴス・ランティモス監督作品の「ロブスター」もおすすめです。

予告編

(字幕版)林檎とポラロイド

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