【監督】廣木隆一
【原作】佐藤正午
【出演】大泉洋/有村架純/目黒蓮/伊藤沙莉/田中圭/柴咲コウ/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 小山内堅は、幸せな生活を送っていたが、ある日不慮の事故で妻と娘を亡くす。そんな小山内のもとに、三角哲彦という男が現れ、娘が面識のない三角に会おうとしていた頃がわかる。そして三角は小山内の妻だった瑠璃のことについて語りだす。
伏線回収に徹した作品
廣木隆一監督は、数々の映画監督のもとで、助監督として活動し、1982年 『性虐!女を暴く』で長編映画監督としてデビューしています。ピンク映画出身ではありますが、近年では少女漫画原作の恋愛映画を手掛けており、「胸キュン映画三巨匠」の一人に数えられています。
大泉洋は、北海道出身で、学生時代に「TEAM NACS」を立ち上げ、その後北海道を中心に活躍、2004年に東京に進出し、親しみやすいキャラクターで、TVや映画で活躍する俳優です。
有村架純は、2010年に『ハガネの女』でドラマ初出演をし、その後、連続テレビ小説 『あまちゃん』で小泉今日子演じる主人公の母親の若かりし頃を演じて人気となり、高感度の高い役者です。
目黒蓮は、Snow Manのメンバーで活動をし、2022年「おそ松さん」で映画デビューをしています。テレビや舞台にも出演をし、幅広い活動をしています。
原作は、 佐藤正午の小説です。
物語は、妻と娘を不慮の事故でなくした主人公が、ある日謎の人物と出会い、妻と娘のことについて新たなことがわかり始めるストーリーです。
序盤から、2007年の八戸近辺の漁港で生活をしている小山内堅が描かれます。
そこから過去への回想となり、1980年に結婚をし、娘が生まれたことが描かれます。
ジョンレノンの「WOMAN」が使われており、雰囲気が良いなぁとは思います。
柴咲コウの髪型がショートヘアでちょっといい感じです。
娘の瑠璃が生まれたシーンが描かれますが、生まれるまで子供の名前を決めない夫婦というの色々モヤモヤします。
さらに、小山内堅が結婚をした経緯をサラッと描きながら、タイトルとなり、主人公の周辺の状況が描かれます。
小山内堅の家族の物語となりますが、本作にはさらに、タイトルの月の満ち欠けがテーマとして込められています。
瑠璃が高熱を出したあと、行動がどうもおかしいところが出てきます。なんとなく、転生している感を感じさせる言動があり、そのことを感づいている妻の梢もいます。
そこからさらに1999年に時代が移りますが、娘の瑠璃の友達を伊藤沙莉が演じていますが、高校生から社会人まで年齢に違和感のない伊藤沙莉はなかなかすごいです。
そこから、とあることで娘と妻を亡くしてしまいます。理由は詳しく描かれませんが、交通事故かなにかだと思います。
物語はまだ序盤ですが、そこから、三角という男性が登場し、1980年にまた話が遡り、ミ三角の視点での1980年が描かれます。
有村架純が登場しますが、喋り方が今までの作品とちょっと違う印象があり、役作りなのかと思います。地味に有村架純の演技の幅がわかるところかもしれません。
「なにか接点があるような気がしてならないんです。」
現在と過去のつながりでできているような作品を徐々に匂わせていきます。
「わたしもあきらくんって呼んでいい?」
有村架純の独特な空気感はやはり他の人には出せないような気がします。
「僕は苦しくても平気です。」
いや、ほとんどのひとはそう思うとは思います。相手が有村架純であれば、そう思うでしょう。
時間軸が入れ替わりながら、経緯が描かれていきますが、後半は答え合わせ的な展開となっています。
なんというか、帳尻合わせ感があり、前半で描いていた内容とちょっと違和感を感じてしまいます。
物語自体の序盤の風呂敷の広げ方は面白いのですが、その後の展開としては、伏線回収感に徹しているような気がします。
現実感のないファンタジーでもあり、その点を理解して観れば良いのですが、観ている人の視点が小山内堅で始まっているところもあり、非現実なところを説明されても、いまいちピンと来ないところもあります。
「もうやめてくれ」
非現実なところを受け入れがたいのは、主人公側でもあるので、こう思うのもよくわかります。
終盤、再度ジョンレノンの「WOMAN」がすべてをまとめてくれるところはあり、本作は、この曲ありきなのかなぁと思います。
主人公は、大泉洋なんだと思いますが、実際には有村架純が主人公で良いのかもしれません。
というか、個人的には有村架純を観る映画なのかと思います。
最後の最後まで、伏線回収に徹した作品でありますが、それはそれでよいのではと思います。