作品紹介
【監督】串田壮史
【出演】永井秀樹/大滝樹/猪股俊明/鯉沼トキ/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 械は、父が残した写真館で写真のレタッチの仕事をしている男性。ある日、森で胸元に傷を負った女性 キョウコと出会う。
サブスクで観る
きっちりとしたメッセージは観る側に委ねられています
串田壮史監督は、大阪の映画監督で、ショートフィルムやCMを手掛けており、2021年「写真の女」で長編映画監督デビューをしています。
永井秀樹は、舞台を中心に発動する俳優で、劇団「青年団」に所属している俳優です。
大滝樹は、クラシックバレエを幼少期より始めて折、2004年にバルセロナでプロのダンサーとして活動をしています。その後、日本に帰国し、舞台やテレビドラマや映画に出演をしています。
物語は、写真のレタッチを生業とする孤独な男性が、ある日、森で女性と出会い、その女性を一時的に住まわせることで、徐々にその生活が変わってくるストーリーです。
序盤より、写真撮影業を営んでいる男の日常が描かれます。
パソコンで加工をしてより美しくすることが当たり前にできるようになってきていますが、やはり実物とは全くの別人となります。そこに本作のテーマも込められています。
森の中で木の上にいた女性を見かけますが、裸足であり、服も山の中で着るような服ではないので、異様な感じがあります。
「なんでついてきたの?」
この妙な出会いから物語が進み始めます。
毎日1枚ずつ写真を投稿することが仕事ともなっているこの女性には事情があまり説明されませんが、そこの部分で、物語になんとなく魅力を感じるようなところとなってきます。
何気なく、主人公の男性は、ベジタリアンということがサラッと描かれます。
「うまい嘘は人を喜ばせることもあるし。」
レタッチと虚構、事実である胸の傷と本当の自分ということで、その対比による物語が描かれています。
「あの、その人と結婚したいと思います?」
ある日、写真のスポンサー契約をキョウコは解約になってしまい、フォロワーも求める人物像との乖離があるからとの理由になります。
本作の面白いところは、本当の自分と虚構の自分の差を描いているところになります。
執拗に音に対するこだわりがあり、レタッチの音や、捕食の音などがすごく印象に残ります。
そして、主人公は頑なに言葉を発しないところがあり、これはこれで意図的なところがあります。
中盤、一人で自宅で酒を飲んでいるシーンのワンカットはよくある手法ですが、非常に効果的でもあります。
ガードミラーのちょっとした演出も映像表現ならではの演出かと思います。
生と死の匂いが常に漂っているような作品感であり、いつまでも治らない胸の傷には本作の重要な意図があります。
なお、この傷口を触るときの音と粘りもなまなましく、これもまた本作の真っ直ぐには伝えない意図でもあります。
「食べられちゃうんでしょう、かわいそう」
最後に主人公がちょっとだけ語りますが、当然ながら、この語りが本作のメッセージに通じるところがあります。
最後にダンスシーンがありますが、大滝樹のスラッとしたダンスは良いです。
なお、ポスターの写真は、反射した影がカマキリとなっています。
カマキリは、交尾をすると、メスはオスを食い殺す性質があり、本作の暗喩ともなっているところではあります。
きっちりとしたメッセージは観る側に委ねられていますが、見方によって良し悪しの変わる作品かと思います。