【監督】吉田大八
【出演】大泉洋/松岡茉優/宮沢氷魚/池田エライザ/斎藤工/中村倫也/坪倉由幸/和田聰宏/石橋けい/森優作/後藤剛範/中野英樹/赤間麻里子/山本學/佐野史郎/リリー・フランキー/塚本晋也/國村隼/木村佳乃/小林聡美/佐藤浩市/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公は、大手出版社「薫風社」に勤務する速水。彼は、社内でも不人気な雑誌「トリニティ」の編集長。無理難題を押し付けられて廃刊の危機に陥れられるが、新人編集者 高野とともに、作家やモデル、ライバル誌や会社上層部と様々な駆け引きを繰り広げる。
感情移入すべきキャラクターを見極めるのが難しく、むしろ、状況を客観的に観て楽しむ作品
・吉田大八監督は、CM制作会社でテレビCMを数多く手掛けたあと、プロモーションビデオ等映像分野の幅を広げ、2007年「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」で長編映画監督デビューをしています。2013年「桐島、部活やめるってよ」では、数多くの映画賞で称賛され、第36回日本アカデミー賞最優秀監督賞、最優秀作品賞を始め各賞を受賞しています。
・大泉洋は、北海道出身で、学生時代に「TEAM NACS」を立ち上げ、その後北海道を中心に活躍、2004年に東京に進出し、親しみやすいキャラクターで、TVや映画で活躍する俳優です。
・松岡茉優は、8歳のときに妹がスカウトされ、その際に妹のついでにスカウトされます。2008年『おはスタ』のおはガールとして出演し、その後はドラマやテレビのホスト役など女優にとどまらない活躍をしていましたが、2007年『勝手にふるえてろ』で評価され、様々なジャンルで活躍しています。
・物語は、大手出版社に務める編集長が「トリニティ」という雑誌の存続を懸けて様々人々と駆け引きを繰り広げるストーリーです。
・音楽は、2003年から活動しているプログレッシブバンド「LITE」が手掛けており、個人的にもファンではあるので、これだけでも期待できます。
・原作の時点で、大泉洋をあてがきとして小説が書かれており、今回の映画化にはまさしくピッタリな配役となっています。
・出版業界の内幕を描きながらの序盤となりますが、こういう要素は、実際には業界にいないとわからないので、こういう説明は「ハゥトゥ映画」的でもあります。
・「新しいとか古いとか、そんな軽薄なものさしじゃあ小説薫風の品格は守れません」
・國村隼役の風貌はなかなか違和感もありつつも、妙なしっくり来るような印象があります。
・他の書店に出向いて、取り寄せの代わりとしているのはあるあるだと思います。個人的にも昔アルバイトをしていた書店でも同じことをしていました。
・雑誌の販売部数低迷のためにテコ入れを行うわけですが、著名な作家を招き、話題性を作ろうと編集長と編集部員が奔走します。
・「先生の舌が証明してくれました」
・大御所作家 二階堂大作を口説き落とすためにちょっとしたことを仕込みます。本来ならもうちょっとメリハリを効かせて演出するところですが、演者の真面目さなのか、いまいち押しが弱い印象があります。
・全体的に、振り切れていないような演出なので、騙し合い的な要素がピンとこないところが多いです。
・飄々としている大泉洋というキャラクター性も相まって、うまく演出しきれなかったのかとも思えます。
・「わたしはタヌキのえさですか」
・「バランスなんて関係ないよ」
・後々、速水編集長が種明かしをしますが、これも、感情移入しずらい主人公像のためか、騙し合いのトリックも淡々とした印象になってしまっています。
・「映画にも、ドラマにもなってないから、本読むしかないじゃないですか」
・地味な伏線も用意されており、しっかりと伏線回収はされますが、伏線回収の謎解き物語という印象もちょっと弱いところがあります。
・LITEの音楽は素晴らしいのですが、どうも、映画の音楽とはマッチしないなぁという気もします。それは、映像関連でよく使われるような音楽に見合ってしまうところでもあるかもしれません。
・金髪の子と男の人がどっちが先に雑誌を買うのかというシーンは、地味に面白いです。
・中盤以降は、徐々に社内派閥の立ち回りの方に作品が動いていくので、なんとなく大泉洋が主演していた「ノーサイドゲーム」っぽい感じもしてきます。
・大泉洋のあてがきでもある本作ですが、脚本の狙いと大泉洋の演技の差があり、いまいち噛み合ってないような気もします。
・反面、松岡茉優演じる高野のキャラクターは、わかりやすく、存在感はあるのですが、他の脇役の存在感の方が高く、池田エライザやリリーフランキーの方が強い存在感となっています。
・吉田大八監督の作品は、巧妙なストーリー構成が持ち味で、平均点の高い作品が多いのですが、本作は平均点どまり的なところがあり、多少不完全燃焼気味な感じもします。
・主要の2人のキャラクターに感情移入する前に、色々なところで、ケムに巻くような展開となっているので、物語の中心をどこに置いて観るかということに落ち着きが薄い点で、いまいち乗り切れないままで展開としていくストーリーが惜しかった気がします。
・総じて、楽しめる作品ではありますが、感情移入すべきキャラクターを見極めるのが難しく、むしろ、状況を客観的に観て楽しむ作品でもあります。