【日本映画】「紙の月〔2014〕」を観ての感想・レビュー

【監督】
【原作】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】1994年のバブル崩壊直後、主人公 梅澤梨花は、銀行の契約社員として外回りの営業をしていたが、年下の大学生 光太と出会い、関係を深めていく。はじめは1万円を借りたつもりだったが、徐々に銀行のお金に手を出してしまう。

紙の月

良心と悪意の二面性が描かれた作品であり、生き方の模範とはなりませんが、映画としては良作

監督は、CM制作会社でテレビCMを数多く手掛けたあと、プロモーションビデオ等映像分野の幅を広げ、2007年「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」で長編映画監督デビューをしています。2013年「桐島、部活やめるってよ」では、数多くの映画賞で称賛され、第36回日本アカデミー賞最優秀監督賞、最優秀作品賞を始め各賞を受賞しています。

は、11歳でモデルデビューをし、徐々に人気を得て、ドラマや映画で活躍をし、18歳のときに発売した写真集「Santa Fe」でも話題となりますが、婚約問題や母親との関係、マスコミのバッシングなどから活動休止となるも、2002年『たそがれ清兵衛』で落ち着いた演技をみせ、本格女優として活躍をしています。

・本作では、第27回東京国際映画祭・最優秀女優賞を受賞しています。

は、「ラストサムライ」での出演から、子役として活躍し、現在では多数の作品で印象的な演技で定評のある役者です。

・物語は、バブル崩壊直後の1994年を舞台に平凡な主婦による巨額横領事件を描いた作品です。

・銀行員として勤務する主人公が描かれ、外回りの営業として資産家の家を周り、真面目で丁寧な仕事をしている姿が描かれていきます。

・何も不自由が無いように見えながらも、どこか生気が抜けたような宮沢りえが印象的で、序盤のこの印象があるからこそ、徐々に変わっていく様がわかりやすくなっています。

・銀行での仕事風景では同僚や上司の存在で、お金の魔力で正しい判断を失いそうになる布石もあり、の存在は意外とキーポイントにもなります。

・池松壮亮が登場してから、グッと物語が面白くなり、濡れ場男優とも称されるごとく、本作でもしっかりとそういうシーンがあります。

・平穏で安泰な私生活にちょっとした誘惑から不倫が始まりますが、この衝動を抑えながらも止められなくなってくるところは巧いです。

・電車のホームに降りてくる階段に見える足という見せ方が絶妙です。

・自分自身に投資することで、魅力を兼ね備えていくところは、序盤の生気を失っているところからの反動もありわかりやすく道を外れていくキッカケがわかります。

・この主人公視点の流れが丁寧なところがあるため、徐々に踏み外していく流れにも自然に失敗していくリアル感があります。

・結局、公文書偽造についてはもう罪の意識が薄くなっているところで歯止めが効いていないという点も、家庭の状況と仕事の関係で陥るべきな流れで、テンポ良く踏み外していきます。

・悪事を働くことの意識というのは、多くの人には良心が歯止めになり、まさかこうなるとはという無自覚な行動というのは、本作の主人公に関わらず、誰しもが陥ってしまう闇は一寸先にあるように思えます。

・崩れ去ってしまった信頼と自分の行為を後から修正することは至難の技であることも痛感でき、たしかに、光太のクズさ加減はヒドイのですが、その布石はしっかりとあったために、自業自得的な感じはします。

・使用しているパソコンは、Macintoshを使用しており、1994年当時に販売していた一体型の機種Performaを使用しています。チラシの制作ソフトは、クラリスワークスなのかと思われます。

・後半も、再びまるで心身消失してしまったかのようなところがあり、ラストの流れまで、破綻した一人の人生というところが本作のメッセージでもあります。

・因果応報とならない締め括りな気もしますが、この後の梨花の生き方がどうなったを考えるといたたまれなくなります。

・クライムドラマとなる作品ですが、主人公自体の意思が空虚なところもあり、そのためについ感情移入してしまいそうなところもあります。

・良心と悪意の二面性が描かれた作品であり、生き方の模範とはなりませんが、映画としては良作になります。

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