作品紹介
【監督】ジョン・カーニー
【出演】イヴ・ヒューソン/ジョセフ・ゴードン=レヴィット/ジャック・レイナー/オーレン・キンラン/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 フローラは、息子マックスの反抗期に悩むシングルマザー。息子の非行から守るために、ボロボロのアコースティックギターをプレゼントする。
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マヂでこんなに響いてくるシーンをきっちりと仕上げる演出と楽曲のセンスには、才能以外に考える余地はありません
ジョン・カーニー監督は、アイルランドの監督で、当初、バンドのベーシストとして活躍し、ミュージックビデオの監督もしています。1996年「November Afternoon」で監督デビューをし、2007年「ONCE ダブリンの街角で」で非常に高い評価を得ています。その後、2016年「シング・ストリート 未来へのうた 」を制作し、ミュージカル青春映画の傑作として非常に高い評価とされています。制作本数は少ないのですが、音楽を非常にうまく演出につかった作品の多い監督です。日本未公開の作品「November Afternoon」「Park」「オン・エッジ 19歳のカルテ」「Zonad」とあり、日本での上映も期待されます。
イヴ・ヒューソンは、父親にU2のボノとなるアイルランドの女優です。2011年「きっと ここが帰る場所」で映画デビューし、その後テレビドラマや映画に出演をしています。2023年「フローラとマックス」では主演をしています。
ジョセフ・ゴードン=レヴィットは、子役として活躍してきており、1992年『リバー・ランズ・スルー・イット』で映画デビューをしています。その後、2009年『(500)日のサマー』でゴールデングローブ賞 主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされています。2013年『ドン・ジョン』では初監督を務めています。2013年「風立ちぬ」では、主人公 堀越二郎のアメリカ版の声の吹き替えとしても演技をしています。
物語は、シングルマザーである主人公とその息子が、反抗期から非行に走らせないために、アコースティックギターを買い、音楽を通じて、何かを見つけていくストーリーです。
序盤から、ダンスホールで楽しんでいるフローラが描かれます。フローラは母親でマックスは息子であり、息子は多少非行に走っているところがわかります。
母子家庭で育ったマックスですが、母親とは良好な関係とは言えず、フローラはベビーシッターの仕事の帰りに捨てられていたアコースティックギターを拾います。
マックスにギターを与え、交流をはかりますが、気持ちが通わないところがあります。本作は題名通り、母親と息子との関わりあいを描いた作品です。
息子のためにギターを手に入れましたが、結果的にフローラがギターを覚えはじめます。それは別居している旦那にむけてでもあり、何かを変えようとしているところではあります。
「おなじ数の単語を知っててもシェークスピアのソネットは書けないということ」
オンラインでギターを習い始めますが、その相手は、アメリカに住むジェフというミュージシャンとなります。
フローラの正確と言動はちょっと下品なところはありますが、感情移入するキャラクターでもないので、客観的に観ればよいです。
物語は題名通り、フローラとマックスの物語であり、フローラを中心とした家族の話でもあります。
「そばにいるから、あいつは俺達をリスペクトしないんだ」
マックスは法廷で収監が告げられますが、このことでマックスの希望を失わせないフローラは良いです。
キャラクター的には多少下品でクズな印象のあったフローラも環境の変化によって、徐々に変わってきます。
「もう人生に書くものはないと思ってた。」
フローラはジェフとインターネットを通じて会話をしますが、彼女の心の支えは息子でもあり、ジェフでもあり、前の夫でもあり、腐らないところにはちょっとグッときます。
マックス自体も家族のつながりを気持ちでは理解していたところがあり、徐々にその感謝が滲みでてきます。
「母さんといっしょに動画を撮った日です。」
「ええ、最高の日です」
施設の外で待つフローラには、息子との関係に一つ変化が起こったのかなぁとは感じます。
終盤、母子で演奏となっていきますが、これはもう、ジョン・カーニーが過去作品からやってきた作風の流れでもあり、ジョン・カーニー映画好きには堪らないところになります。
いや、マヂでこんなに響いてくるシーンをきっちりと仕上げる演出と楽曲のセンスには、才能以外に考える余地はありません。
音楽をテーマにした作品の多い、ジョン・カーニー監督作品でもあり、今回も、音楽にこだわり抜きながら、物語もしっかりとしている作品かと思います。
「私は君の人生を生きているんじゃない 君は私の人生を生きてない」
最後のライブシーンには、ここまで見て気が付かされることがあります。本作のテーマは、すべてここに詰まっています。文字に注目でもあります。