作品紹介
【監督】紀里谷和明
【出演】伊東蒼/毎熊克哉/朝比奈彩/増田光桜/岩井俊二/市川由衣/又吉直樹/冨永愛/高橋克典/北村一輝/夏木マリ/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 ハナは、親を事故でなくした高校生。ある日、政府の特別機関を名乗る男と出会い、自分の見た夢を教えらほしいと頼まれる。
世界がどうなっていくのかというのがなんとなくわかる
紀里谷和明監督は、中学を中退し、単身渡米をして芸術を学んでいます。その後、写真の仕事からPVを制作するようになり、宇多田ヒカルを始めとした多くのアーティストの作品を手掛けています。2004年「CASSHERN」で映画監督デビューをし、独特なCG技術で作品を作っています。
伊東蒼は、2011年「アントキノイノチ〜プロローグ〜 天国への引越し屋」でテレビドラマデビューをし、子役として活躍しています。2013年「貞子3D2」で映画デビューをし、テレビや映画で活躍する女優です。
毎熊克哉は、3歳の時に見た映画『E.T.』で映画作りに関心を持ち、映画監督を目指していたが、自ら演じたほうが思い描いた芝居が伝わると、役者に転身、以降多数の映画賞に関わり、「遅咲きの新人」として注目されています。
物語は、親をなくしてしまった主人公の高校生が、政府の特別機関の男からとある依頼を受ける。それは、見た夢を伝えるということだったというストーリーです。
序盤から、モノクロの映像でとある少女の住む村が、侍に襲撃されているシーンから始まります。
そこからハナの祖母が亡くなるシーンが描かれ、バイトをしながら高校生活を送っていることがわかります。
祖母が亡くなったことで、生活も将来も見失いがちのハナにとある組織が訪ねてきて、未成年ということで保護施設に収容することを伝えに来ます。
施設に入れるというのは建前で、実はハナが見た夢について調べていることがわかってきます。
夢と現実の間で、主人公のハナにはとある秘密があるような描かれ方となりますが、すぐにその事情はわかります。
どういう経緯なのかわからないままで物語が進んでいくので、主人公には感情移入しやすいところがあります。
本作は、紀里谷和明監督のオリジナル脚本でもあり、本作で紀里谷和明監督は監督引退を発表している作品でもあります。
紀里谷和明監督は、映画作品としては、5作のみを発表していますが、いずれも映像的に独特な感じがあり、映像作家という点では、日本ではあまり似たような監督のいないような印象があります。
オリジナリティの高い映像はとても魅力的であり、紀里谷和明ワールドの映像が好きな人には映像だけで満足できます。
シナリオ自体も、過去作とはちょっと違い、マニアックな設定というよりも、おとぎ話から現実味のあるような話ともなり、見やすさはあります。
ハナが見た夢が世界を救う可能性があるという突飛な設定ですが、わかりやすさもあり、主人公が何をすればよいのかがぼんやりとわかります。
「ハナちゃん、頼んだよ」
この不思議な感じの商店街も紀里谷和明ワールド的な感じがあり、映像のイメージでしっかりとした世界観が作り上げられています。
「この世界は救えない」
結局、ハナがどういう世界を望むのかと言うところに行き着きますが、これは観てもらうと良いです。
「あなたの世界はもう少し優しいはずです」
紀里谷和明監督の終末論と世界観がしっかりと構成されているので、過去作品と比較すると映像美で煙に巻いていくような感じではなく、わかりやすく物語性もつくられています。
独特な設定で未来と過去、パラレルな世界を描いているところもあり、世界がどうなっていくのかというのがなんとなくわかる、そんな作品です。