【日本映画】「チワワちゃん〔2019〕」★★★★★【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【原作】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】主人公は、普通の若者のミキ。TVで東京湾バラバラ殺人事件の被害者が報道されるが、ミキは彼女がチワワちゃんだとは思わなかった。ミキがいた仲の良いグループの中心的人物だった「チワワちゃん」は、本名も境遇も知らないことに気付かされる。

チワワちゃん

岡崎京子の映像化映画として傑作

原作は、「リバーズ・エッジ」「ヘルタースケルター」などの漫画の作者 岡崎京子。

彼女は、1980~1990年代に鋭い視点で、様々な漫画を書き上げていた漫画家ですが、1996年5月に交通事故に遭い、実質漫画制作からは遠ざかっています。

非常に才能あるマンガを多く描き、女性の視点から描いた漫画ですが、奥の深い人間関係や鋭い表現方法で、今でも不動の人気のある漫画家です。

二宮健監督は、自主映画「SLUM-POLIS」をきっかけに、「THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY リミット・オブ・スリーピング ビューティ」で商業映画にデビューした27歳の監督です。

物語の前に、まず、この映画のオープニングまでの流れと音楽の使い方が見事。圧倒的な構成力がたった10分で見せつけられ、その後は一気に観られます。

主演は、門脇麦。個人的にはとても気に入っている役者ですが、この人の出ている映画には何かと魅力があり、彼女自身の存在感がそれを醸し出しているといえます。

平凡のようで平凡ではない、門脇麦の存在感があったからこそ、この群像劇がまとまりができていると言って過言ではないとも思います。

チワワちゃんを演じた 吉田志織は、天真爛漫的なイメージがあるので、ぴったりな印象でもあります。

物語は、単純には「青春映画」と分類できるのですが、本来の意味合いでは、不確かな青春を振り返ると、結局「あれってなんなんだったんだろう」という普通の視点とは

ちょっと異なる意味合いがあります。

男女間の秘め事や、昼夜を問わずの馬鹿騒ぎ、お金の使い方をよく理解していなく、欲望のママの行動、そして仲良かった仲間たちの割には、お互いの本当のことは何も知らないということ。

それらのことは、意外と誰にでもあるようで、密接なような関係に見えて、実はそうでもないドライな空気感が丁寧に描かれています。

演出も特長的で、まず音楽の使い方と映像のコラージュもセンスあるテンポ感があります。

また、ワンカットで時間の異なる場面変換を行っていて、演出力も高いです。これはダーツをしているシーンで気が付きにくいながらもサラッと小粋な演出をしています。

全体的に前半は「チワワちゃん」を中心としたグループの話、後半以降は「チワワちゃん」とは何だったのか?という分け方ができ、物語の中央に演じるカメラマン サカタがいます。

サカタのシーンで話される言葉には、この映画のメッセージが込められているような気がします。

「10年後20年後 きみはなにをやっているかな?」

「どうせ 今だけなんでしょ そんなこといってくれるの」

1996年に書かれた漫画がモチーフではありながら、SNSや2019年という時代を意識したときに、世代をも超える物語を作り上げていたことに驚嘆するしかない岡崎京子の視点には素晴らしいの一言しかありません。

物語の結論と物語自体が言いたかったことは、「観たあとの人の判断に委ねる」と言ったほうがこの映画の存在をしっかりと残すことができると思います。

R15+指定の映画ではありますが、岡崎京子の映像化映画として傑作であると思います。

予告編


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感想(1件)

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