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作品紹介
【監督】塩田明彦
【出演】内野聖陽/北香那/柄本佑/白川和子/安達祐実/柳美稀/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 芳賀一郎は、江戸時代にあった芸術として春画の研究者。妻が亡くなって以降、さらに春画の世界にのめり込んでいた。ある日、春野弓子が春画を学ぼうと、一郎を訪ねてくる。
サブスクで観る
コメディで考えれば難解
塩田明彦監督は、学生時代より自主映画を制作しており、黒沢清監督の助監督として参加後、初長編映画『月光の囁き』をはじめ、個性的な作品を作り出している監督です。
内野聖陽は、俳優として活動し、1996年NHK連続テレビ小説「ふたりっ子」で注目されます。1996年「午後の遺言状」「(ハル)」をはじめ、多くの映画作品に出演しています。TV、映画、舞台と非常に高い演技力のある俳優です。
物語は、主人公の春画先生と呼ばれる男性が、春画を学びたいと訪れた女性が、徐々に春画だけでなく、春画先生のことが気になっていくストーリーです。
序盤から、喫茶店で働く春野弓子が描かれ、そこで、芳賀一郎と出会います。
本作の主人公は、芳賀一郎のようでもありますが、視点としては、春野弓子の視点で描かれていきます。
どこか文学作品のようなテイストを感じますが、そういう描き方から、春画の世界を説明していくので、さほど、変な印象を持たずに春画について理解していけます。
問題は、序盤で春画の見方を丁寧に描いていきますが、徐々にその世界から、芳賀一郎の人物への興味が湧いてきます。
白い部分はそもそも色を塗っていないということで、色が塗られた箇所と白い場所の差が描いていることの本質であるということを教えてくれます。雪に積もった松の樹の描き方も、同じく色を塗っていないという説明は、非常に面白いです。
面白いのですが、その春画の見方の講釈は、序盤程度で終わっていきます。掴みが良いので、物語にすぐに入り込んでいけますが、そこから、芳賀一郎のキャラクターへの興味へ変わっていきます。
とはいえ、女性を断っている関係上、弟子でもある辻村俊介の登場で、ちょっと変わってきます。
「後悔するのは君の自由だけど、起きてしまったことは取り消せない」
本作の妙なところは、辻村俊介を通じて、芳賀一郎の人物像の外堀が埋められていき、芳賀一郎のちょっと妙なところがわかってきます。
中盤で、亡くなったと思われていた元妻の関係が登場してから、物語がちょっと変わってきます。
「まったく君って女は、考えていることがダダ漏れする女だなぁ」
本作はコメディをもとに描かれている作品と説明がありますが、コメディに思えばコメディですが、コメディで考えれば難解でもあります。
本作の良いところは、辻村俊介の飄々としているキャラクターが良く、柄本佑が演じているところに、軽薄そうでありながら、実はほとんど物怖じしていないところに良さがあります。
物語自体の中心は、芳賀一郎となりますが、中心の人物でありながらも、人物像は本人からではなく、周辺の人物の言動で組み立てられているところもあり、そのことで、中心に置かれる人物なのに、妙に物語がふわっとしているところを感じます。
柄本佑と安達祐実のキャラクターがなければ、さらにふわっとした内容だったのかと思いますが、特に柄本佑が好演している点がよい作品と言えます。