作品紹介
【監督】シャーロット・ウェルズ
【出演】ポール・メスカル/フランキー・コリオ/セリア・ロウルソン・ホール/ケイリー・コールマン/サリー・メッシャム/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 ソフィは、11歳の少女。ある夏、父親と2人でトルコのリゾート地に訪れ、ひと夏を過ごす。
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いつのまにか、子供からおとなになっていたというのは多くの人が感じるところだとは思いますが
シャーロット・ウェルズ監督は、スコットランドの映画監督で、短編初監督作品『Tuesday』を始め、数本の短編映画の評価が高く、2022年「aftersun アフターサン」で長編映画監督デビューをしています。
ポール・メスカルは、16歳でミュージカルの初舞台を踏み、2020年テレビドラマ「ふつうの人々」の演技が非常に高く評価され、2021年『ロスト・ドーター』で映画初出演をし、2022年『aftersun/アフターサン』で第95回アカデミー主演男優賞にノミネートされています。
物語は、主人公が昔のビデオを観て、当時、父親と二人でひと夏をリゾート地で過ごしたことを
序盤から、ビデオの映像が断片的に映されます。これは父親が撮影したビデオであり、娘と旅行を写した映像となります。それから、娘と父親が旅行をし、ホテルの部屋を取ります。11歳の娘と31歳の父親との旅行であり、その時の映像なことがわかります。
本作は多少難解なところがありますが、序盤でビデオを見ていた主人公は、終盤で誰なのかはわかり、観ている人の現在と、ビデオの撮影された時期とで、当時のことを思い返す流れとなっています。
中盤で、本作の意味がわかってしまうような感じがしますが、本作は、海辺のリゾート地で父と過ごした夏のひとときを描いています。この演出が非常に見事で、テレビとビデオ、そのテレビに反射して映る状況と、時間軸が飛んで物事が語られていますが、実際にはビデオの再生と現在の状況がワンカットとでつながることで、その時間の流れを描いています。
さらに要所要所その結末を暗示するところもあり、父が考えていることと、娘の考えていることの違いがわかることで、本作の深さを感じます。
説明が非常に少ないのですが、まったく理解できないわけではなく、きっちりと説明はなされています。
11歳の頃にはわからないかったことが、時間が経過したときに、あれはああだったのか、とわかる仕組みの作品となっており、娘の視点と父親の視点は、同じ時間を過ごしていても、全く異なっていたということに気付かされるところが、本作のメッセージとなります。
なお、題名の「アフターサン」とは、日焼けをしたあとに塗る保湿ローションであり、主人公のソフィが当時の旅行を振り返り、今は居ない父親とのひと夏を振り返るところになります。
ソフィにとっては良い父親だったのかもしれませんが、11歳の娘に見えていた父親と、娘には見せなかった父親の苦悩が交錯するところに、本作の想像の余地が残されています。色々と暗示的に示されるシーンも、ソフィの想像の産物であるというところは、全体を通してみるとしっくり来ます。
いつのまにか、子供からおとなになっていたというのは多くの人が感じるところだとは思いますが、その変化を通じて、相手がどう思っていたのかを理解できるような内容の作品であり、視点が非常にスルドイところがあります。