【監督】ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート
【出演】ミシェル・ヨー/キー・ホイ・クァン/ステファニー・スー/ジェイミー・リー・カーティス/ジェームズ・ホン/アンディー・ル/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 エヴリンは、破産寸前のコインランドリーの稼業や娘や夫にも悩まされている中年女性。ある日、別の世界から来た夫と出会い、マルチバースの世界を救うためにカンフーで戦っていく。
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(字幕/吹替)
バカバカしさで言えば、「スイス・アーミーマン」の方が上質
ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートが監督となっており、大学で知り合い、2011年から監督・脚本家コンビ「ダニエルズ」として活動しています。2016年「スイス・アーミー・マン」で監督デビューをし、非常に話題となっています。その後もテレビや映画で様々な作品を作り続けています。
ミシェル・ヨーは、サモ・ハン・キンポーに見出されて1984年「デブゴンの快盗紳士録」で映画デビューをしており、一時期引退をしたものの、1992年「ポリス・ストーリー3」で女優復帰をし、アクション映画だけではなく「宋家の三姉妹」「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」「クレイジー・リッチ!」など様々な作品で才能を発揮している女優です。
キー・ホイ・クァンは、1984年「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」で注目され、以降、1985年「グーニーズ」などに出演。その後、映画製作に興味を持ち映画監督を目指し、裏方で活躍しています。2004年「2046」では主演の木村拓哉に広東語の通訳として参加しています。2022年「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」で俳優業に復帰し、高い評価を得ています。
ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート監督作品でもあり、2016年「スイス・アーミー・マン」の奇妙で不可思議な世界観を提示しているだけに、本作もあらすじをみただけで奇想天外な物語感を感じます。
物語は、稼業や家族の環境に悩まされている主人公が、別の世界線からやってきた夫に出会い、そこでマルチバースの世界を救える救世主として、カンフーで全人類を救うために戦っていく奇想天外なストーリーです。
序盤から、コインランドリーの場所から始まり、そのコインランドリーは、エヴリンの経営している店だとわかります。
店自体は色々と問題はあり、経営自体があまりうまく行っていないのがわかります。
微妙に何をやっているのかわからない展開ではありますが、エレベータで夫からとある任務を急に伝えられます。
ある程度本作のあらすじがわかっている方が良いのですが、要は別次元を行き来して物語が展開する作品ではあります。
20分くらいすると、夫に状況を説明され、複数の次元が存在することが説明され、その次元を行き来して危険を回避するために戦っていることがわかります。
マルチバースという言葉が理解できればさほど理解には苦しみませんが、多数の世界線があり、それぞれの世界にそれぞれの自分がいることが理解できないとなかなか本作の主旨がつかみにくいです。
一応、説明はされるのですが、それぞれの世界で異なる現象や不思議な価値観もあり、ある意味カオスな感じがあります。
また、アカデミー作品賞受賞作品ですが、意外とシモネタが多く、シモネタギャグもあり、人によっては受け入れられないところもあると思います。
発想は面白いのですが、下ネタを出して来なくても、マルチバースの価値観の食い違いをコメディにできたのでは?とは思います。
シモネタについては、監督自体の過去作品でも平気で扱っており、スマートな笑いというよりも、下品な笑いで成り立っているところは、もうちょっとなんとかできなかったのか?と思います。
「指がソーセージになっても、足で色々できるんだから」
マルチバースを扱い、世界の危機というところも描いていますが、どちらかといえば、登場人物や環境は非常に狭い人間関係で成立しており、些細な問題を大げさに風呂敷を広げた、というそんな感じもします。
アカデミー作品賞を受賞している作品でもありますが、描いている世界観は小さな揉め事なところもあり、コメディとアクションとSF要素を絡めて監督の個性で押し切った感があります。
主人公が、生活で色々困っている中年女性という点も、コメディなところがあり、日本で例えるなら、橋田壽賀子のファミリードラマをマルチバースにしてSFアクション要素を入れて、泉ピン子が戦っている、そんな例えなのかもしれません。(※下ネタ要素は抜けてしまいますが。)
バカバカしさで言えば、「スイス・アーミーマン」の方が上質ですが、やはりこれも下品さがあり、下品な要素も含めて、この世界観を楽しめるかで、本作の評価は変わるのかと思います。
第95回アカデミー賞では、最多の10部門11ノミネートというところでもあり、新しい映画の歴史を刻む可能性もありますが、もう少し上品にまとめてほしかった気もします。
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