【アニメ】「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島〔2022〕」を観ての感想・レビュー

【監督】安彦良和
【原作】
【出演】/中西英樹/
【個人的評価】★★★☆☆

【あらすじ】ジオン公国と地球連邦軍が交戦状態となった1年戦争時の宇宙世紀0079年が舞台。地球連邦軍の心臓戦艦ホワイトベースのクルーのアムロは、とある任務で、通称「帰らずの島」へと赴く。

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島

機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島

古谷徹, 武内駿輔, 成田剣, 古川登志夫, 潘めぐみ, 中西英樹, 池添朋文, 新井里美, 福圓美里
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ファーストガンダムの作品を新たに描きなおしたという点では、多くのファンに観てもらいたい作品

安彦良和監督は、アニメーターとして活躍し、『宇宙戦艦ヤマト』『勇者ライディーン』『超電磁ロボ コン・バトラーV』『無敵超人ザンボット3』『機動戦士ガンダム』など、多くの作品に関わります。1983年「クラッシャージョウ 」でアニメ映画監督としてデビューをし、以降「巨神ゴーグ」「アリオン」「ヴイナス戦記」などを手掛けています。1989年頃から漫画家としての活動を始め、2001年には『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を10年間連載しています。2015年「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」でアニメ映画監督して復帰をし、精力的に、アニメや漫画を生み出している監督です。

富野由悠季は、虫プロダクションで制作進行に関わり、後に演出もおこなっています。絵があまり上手くないところがあり、その点から誰よりも絵コンテを早く作成することを極めたと言われています。フリーの演出家として活動を始め、非常に多くの絵コンテを手掛けています。1972年「海のトリトン」で監督を努め、『勇者ライディーン』『無敵超人ザンボット3』『無敵鋼人ダイターン3』と作品を手掛け、1979年には、『機動戦士ガンダム』の総監督・原作・脚本・演出・絵コンテ・作詞を務めています。1980年『伝説巨神イデオン』を手掛けていますが、打ち切りとなりますが、熱狂根的なファンの声から後に『THE IDEON 接触篇』『THE IDEON 発動篇』を制作し、非常に高いクオリティの物語を描いています。前年の1981年に『機動戦士ガンダム 劇場版』を手掛け不動の人気となっています。アニメ作品ながら、絵に演技をさせるということを踏まえた巧みな演出は、アニメ界では随一の才能のある監督です。

矢立肇は、サンライズのアニメーション作品企画部が使用しているペンネームで、実在する人物ではなく、版権管理のための名称となります。ただし、1980年前半頃に使用され始めた当時は、サンライズの山浦栄二のペンネームだったようです。同様のペンネームを利用している名前の例としては、「八手三郎(スーパー戦隊シリーズなどで使用)」「東堂いづみ(プリキュアなどが有名)」「シブサワ・コウ(コーエーのゲームで使用)」「葉村彰子(水戸黄門などで使用)」「音羽たかし(キングレコードで使用)」などがあります。

機動戦士ガンダムの第15話「ククルス・ドアンの島」のリメイク作品であり、当時のTV版ガンダムの物語の中では単独した1話の物語でもあります。

そのため、「劇場版 機動戦士ガンダム」では全面カットされた話となり、作画自体もあまり完成度の高くないいわゆる「作画崩壊」している話として知られています。

なお、ドアンが搭乗するザクの作画も、妙に頭身が変な印象もあり、これはこれで独特な印象があります。

またトンデモ演出も多く、ルッグンにぶら下がって飛んでくるザク等、色々とモヤモヤするところが多い珍作とです。

そんな1話をクローズアップして映画としてリメイクしている点には深い意図は感じます。

物語は、機動戦士ガンダムの作品中の1話を丁寧に演出した作品となり、主人公のアムロがとある島を偵察中に出会った一人の男 ククルス・ドアンの生き様を通じて、戦争や戦う意義を示した作品となっています。

序盤から、とある島での戦闘が描かれます。時間軸的には、TV版のガンダムの設定ではなく、ガンダム・ジ・オリジンの設定となるので、連邦軍にもモビルスーツが存在しています。

全キャラクターのギャグっぽい顔がどうも受け付けにくいところはあります。

セイラさんもちょっとふくよか感がありますが、もうちょっとスマートでも良いのかなぁとは思います。あと、セイラさんの上品な言葉遣いに違和感があります。

ミライさんもブライトさんも年相応な感じではなく、10代〜20代前半にはちょっと見えないところが微妙感ですが、ガンダムジオリジンのコミックの絵柄的にはこんなものかなぁと思います。

メカ描写はCGを活用した表現となるので、アニメ作画でやりにくい作画となっているので、メカ感はとてもあります。

本当は劇場版ガンダム三部作くらいの作画感で良いのですが、リアル感や兵器感を追求したことの弊害なのかもしれません。なお、安彦良和の描く柔らかい印象のあるガンダムがやはりいちばんガンダムらしいなぁと思います。

結局リアルに寄せていくと、おもちゃ感のあるトリコロールカラーは違和感の塊とも思えます。

ドアンのザクとガンダムの戦いが序盤でありますが、ここでのザクの部隊マークはしっかりと覚えておくと良いです。

ドアンの島は灯台がある以外は、ほぼ荒野なので、TV版の島とはちょっと異なります。

ペットボトルや食べ物がきちんとあるところも、モヤモヤもしますが、それに関する説明はありません。まあ、物資をどこかからか供給されているということだと思います。

すべて自給自足というわけではないところは、わかるのですが、明らかに食べ物には困る状況な気もします。

灯台に住んでいる壁にザクの絵柄があるなどのしっかりとした環境の設定がされています。

ブライトさんの部屋の机に家族写真などなどがありますが、もともと士官学校卒の経歴があるので写真に写っている人はわかりますが、もともとブライトさんの家族設定等は特に描かれてきていなかった設定かと思います。

TV版と異なるところでは、ドアンのもともと所属していた部隊が描かれます。そのことで、ドアンのキャラクターの意味合いがTV版よりも克明となっています。

ヒートホークつえぇとは思います。

部隊のマークはしっかりと伏線です。

23時方向にはちょっとモヤモヤします。

首にヒートソードを当てるところにももやっとしますが、モビルスーツをほぼ擬人化しているところがあり、これもリアリティではなく、わかりやすさの演出だとは思います。

ちなみにザクのコックピットは腹部にあります。

「お前たちをきっと守ってやるから」

最後のドアンの行動には、もう本作はドアンによるドアンのためのドアンの作品に見えてしまいます。

一匹のヤギから乳を絞るのにはちょっと無理があるかなぁとも思います。

ガンダムを探すアムロの行動は、助けてくれた恩人に対しての行動についてはちょっと共感ができないところがあります。

服を貸す伏線が、後々に使われてアムロの信用を得る流れがちょっと良いです。

中盤以降、ドアンの島の壮大さを感じますが、ドアンの目的はTV以上に克明となっているので、ドアンの行動自体がさらに納得できるようにはなっています。

でも、TV版の内容でも十分に納得はできるんですけどね。

スレッガー自体はTV版ではまだ登場してきていないのですが、本作は、ガンダムジオリジンの流れからのククルス・ドアンの島なので、TV版の時間軸とは異なる世界線です。

灯台が止まっていた理由もあったりするわけで、電気を極力使わなかった理由もきちんとしています。

「君はこの子どもたちのために戦えるか、君の仲間とも。」

ドアンの選んだ道は過酷であることがわかりますが、本作は、ガンダムのエピソードの中で、アムロが戦う意義を見出すところにあると思います。

ただし、メインで描かれるのはドアンの生き様でもあり、その点が、TV版よりも深堀りされているところかと思います。

ドアンの島の中には、とある秘密があり、TV版と異なる大きな点でもあります。

さすがにアムロ行為は、白い悪魔的な感じです。足って・・・。

終盤のヤギの演出からの流れは、シリアスにはなりすぎないような配慮かと思いますが、モビルスーツのリアル描写があるとどうしてもギャグな要素がないとシリアスになりやすいところがあるかと思います。

終盤のガンダムの戦いは、まさしく大見得を切るような二刀流での登場というところもあり、この部分は歌舞伎のような印象もあります。

ミライさんの操艦は傾きがきつすぎな気もしますが、背面飛行ができるひとなので、このくらいは特段、問題ないのでしょう。ただし、乗員的には同乗したくない気もします。

大筋はTV版を踏襲していますが、多少の設定変更で、終盤のセリフはちょっと説得力に欠けます。

島の意味合いを考えると焼け石に水感がありますが、ドアンのやるべきことがTV版よりも明確になっていることで、本作の意義が強かったのかと思います。

特に、アムロの視点を通じて、戦うことの意義と戦争の悲劇が根底に描かれている点では、ガンダムという作品を象徴するテーマとも思えます。

ファーストガンダムの作品を新たに描きなおしたという点では、多くのファンに観てもらいたい作品かと思います。

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