【監督】ルーク・ローレンツェン
【出演】フェール・オチョア/ジョジュエ・オチョア/ Juan Ochoa/マニュエル・ヘルナンデス/フェルナンド・オチョア/ホアン・オチョア/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】舞台はメキシコシティ。そこでは、900万人の人口に対し、45台程度の公営救急車しかなく、そのため、私営救命救急の救急車が日々病人を搬送しています。
81分間の中でしっかりと描かれたドキュメンタリー
・ルーク・ローレンツェン監督は、大学で美術史を学び、ドキュメンタリー映画の制作を行っています。エミー賞を受賞した実績もあります。
・フェール・オチョアは、メキシコシティで、私営救急車を走らせている一般人です。2019年「ミッドナイト・ファミリー」でドキュメンタリー映画として出演しています。
・本作は、サンダンス映画祭で米国ドキュメンタリー特別審査員賞を受賞しています。
・2020年のアカデミー長編ドキュメンタリー賞の最終候補に選出もされています。
・物語は、メキシコシティを舞台とした作品で、人口に対して公営救急車が足りず、一般人が私営救急車として、けが人や病人を輸送している仕事を描いています。
・序盤からとある事故を手助けしたあとのオチョア一家が描かれます。
・舞台はメキシコシティと言うことでもあり、治安が悪そうに見えますが、ここでメキシコシティの救急体制の現場が語られます。
・メキシコシティの人口900万人に対して公営の救急車が45台未満というのは正直医療崩壊していても不思議ではないのです。
・そのために私営の救急隊をオチョア一家は行っていますが、それもまた、ただのボランティアでは済まないところもあります。
・日本では考えにくいところですが、本作は事実を元にしたドキュメンタリーではあります。
・患者を運び日々を生活しますが、自らの使命を感じながら、私営の救急救命を行っています。
・とはいえ、ボランティアではないので、病院への輸送をしたことの輸送費の請求で生計を立てています。
・メキシコシティの町並みが映されますが、日本の都市とはさほど変化がないようで、アスファルトや繁華街があり、多くの人が住む都市として成り立っています。
・900万人という人口は、日本で言えば、大阪府と同じ位で、大阪府は約880万人の住む都市となっています。
・大阪府の発表している救急出動件数は、約61万件(令和元年)となり、府内の消防救急車の台数が232台となり、これは消防での管轄の台数となります。一般病院の救急車は含まれていないのですが、メキシコシティでの救急体制がかなり特殊な印象を感じます。
・闇救急車と言っても良いわけで、救命のために搬送はしてくれますが、やはり、移送費がかかります。
・昼間は休み、夜に発生する事故などにいち早く駆けつけて、搬送します。
・同業者も多く、救急車がチェイスをしながら、現場に急行し、けが人を搬送します。
・病院への搬送は、状況にもよりますが、都合の良い病院への搬送も描かれます。つまり、病院には所属していないながらも、搬送することで、けが人の治療費のキックバックをもらっているということになります。
・そういうところを観ていくと、人命救護とはなりますが、やはり、生活のかかった仕事とも言えます。
・日本で想像するのであれば、UberEatsの注文をマクドナルドの店頭で待っている配達員と考えれば良いかもしれません。
・ある程度救命に関する知識があるようで、簡易的な治療をしながらの搬送となりますが、どう考えても医師免許はないと思われるので、やはりこの点も、モヤモヤします。
・しかし、本作のポイントは、そんな医療状況を描きながら、自らが活動をし、そのことで生計を立てている状況であり、一つの家族が生きていくために、人命救助と生計を立てるという二面性が無意識に描かれているところにあると思います。
・ドキュメンタリー作品ではありますが、作品としてはうまく編集されており、ドキュメンタリー風の映画とも思えます。少なくとも、観づらいドキュメンタリーではありません。
・日本では考えにくい状況ではありますが、81分間の中でしっかりと描かれたドキュメンタリーではあります。