【日本映画】「チチを撮りに 〔2013〕」を観ての感想・レビュー

【監督】
【出演】
【個人的評価】

【あらすじ】フリーターの姉・葉月と女子高生の妹・呼春は、母と3人で暮らしていた。ある日、14年前に出ていってしまった父が病に倒れたことを聞き、娘二人は、その顔を写真に撮ってくるように母に頼まれる。

とても鋭い演出で、暗い物語というわけでもなく、むしろ、家族を描くことにこだわりのある

中野量太監督は、映画製作を学び、テレビや映画の助監督を経て、2006年『ロケットパンチを君に!』で注目されます。2012年『チチを撮りに』で長編映画監督デビューをし、2016年『湯を沸かすほどの熱い愛』で商業映画デビューをしています。その後、「長いお別れ」や「浅田家!」など良作を制作しています。

柳英里紗は、2000年「金髪の草原」で映画デビューをし、テレビや映画で活躍しています。

松原菜野花は、2006年「秋な桜」で映画デビューをし、2013年「チチを撮りに」以降、「湯を沸かすほどの熱い愛」「長いお別れ」と中野量太監督作品の常連でもあります。

物語は、14年前に2人の娘と妻を捨てて出ていった父親のいた3人家族が、父親が病に倒れたことを聞き、その様子を見に父の田舎へと赴くストーリーです。

序盤から、3人で生活している家族の生活が描かれ、3人がそれぞれなにか欠けているような空気感をなんとなく感じます。

川の釣りシーンでは、意外と布石となっています。

題名の「チチを撮りに」というのはシンプルな題名ではありますが、カタカナとなっているところに注意が必要で、複数の意味の「チチ」があるように思います。

ほとんど記憶のない父親に会いに行くという展開となりますが、姉妹2人の心構えと、父親の実家の雰囲気の温度差はなかなか鋭い感じがします。

父親が出ていってしまったことで、母親の気持ちの所在は言葉では示されてないですが、態度や行動で、わかるようになっています。

こういう演出はむしろ映画的な感じもあり、中野量太監督がのちに良作を作り続けていく片鱗はしっかりとあります。

「シーンと目的ってなに?」

母親と娘のザッピングで物語が描かれていき、シーンの繋がり方も緩急のある展開で、興味深く観ていられます。

「それ、とうちゃんと同じタバコ」

電車内での電話と、おにぎりを食べる演出で、そのキャラクターの状況がよくわかります。

タバコを吸わせるときのカメラの動きといい、この状況をどう見届けるのかという点で、家族と知らなかった家族というちょっと複雑な感じもする描かれ方ですが、ココにグッと来るものがあります。

「やっぱり、まだ恨んでるか」

ほとんど父親の人柄を覚えていない姉妹と、その実家の人々、そして、姉妹の母親と、この構図に「恨んでいる」という意味合いがあるのかは、お互いのすれ違いなところも感じます。

「マグロ、わたしもマグロずっと好きでいるから、バイバイ」

「無理じゃねえよ、早く戻せよ」

この一言に、実家の人たちと姉妹との関係が明確に描かれていると言っても良いかと思います。

なんとも言い表せないのですが、この演出とセリフで、本作のとても優れた作品であることを感じられるかと思います。

「たぶん、ふたりぶん」

ここにもとても意味の深いところがあり、実は本作の随所に無駄のない演出とセリフが込められているのかと思います。

「うん、人生2度目の万引しちゃった」

終盤の締めくくり方も実に見事なところがあり、母と娘が父に対してどう思っていたのかが、言葉ではなく態度で示されてもいて、さらにつづく締めくくりにしっかりとオチもあり、きれいにまとまっていると思います。

74分の映画ですが、とても鋭い演出で、暗い物語というわけでもなく、むしろ、家族を描くことにこだわりのあるような中野量太監督の手腕が感じられ、個人的にはオススメしたい作品です。

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