【監督】市井昌秀
【出演】草彅剛/新井浩文/MEGUMI/中村倫也/尾野真千子/甲田まひる/若葉竜也/榊原るみ/藤竜也
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】鈴木一鉄と妻の光子は銀行から2000万円もの大金を強奪して逃げた後、10年経過した今も行方がわからないことから、鈴木家が集まり、仮想葬儀をおこない財産分与をしようとする。
ミニマムな舞台設定の作品でもあり、舞台が好きな人にはわかってもらいやすい作品
市井昌秀監督は、お笑い芸人「髭男爵」の元メンバーでしたが、結成後1年で脱退をしています。ENBUゼミナールに入学し映画製作を学び、2004年「房総」が初作品となります。その後、「箱入り息子の恋」「僕らのごはんは明日で待ってる」などの作品を手掛けています。
2019年に妻との共同名義「市井点線」で小説『台風家族』を発表し、本作の映画原作となっています。
草彅剛は、元SMAPのメンバーで、現在は「新しい地図」に参加しています。SMAPの頃にグループ活動以外に役者としても活躍しており、独特な雰囲気を持つというよりも、普通の人を演じさせると好評なところがあります。
物語は、両親が強盗を働き、その後、逃亡していることもあり、10年間行方不明ということから、仮想葬儀を行い財産分与をしてしまおうと目論む鈴木一家のストーリーです。
序盤では、両親が霊柩車で強盗を行うシーンが出てきます。おおもとの発端はこの事件ですが、事件自体が特に重要なわけではなく、そのあとに残された家族の事情にもなります。
仮想葬儀が行われ、そこで一同に介した家族間での財産分与が始まりますが、ここがこの物語の引き込み口をなってきます。
長男の小鉄は無職のダメ男、次男は経営者で成功、長女はバツイチともあり、色々と破綻したような一家ではあります。
ちょっとギスギスしたような物語にも見えますが、中身はコメディと思ったほうが良いです。
一家総じて、浅はかな発想から、ツラの皮の厚いやり取りが行われますが、その下世話なところが本作の味でもあります。
中盤に登場する人物が多少流れを組み替えて来ますが、こういう緩急があるからこそ、緊張感が持続するところがあり、終盤まで一気に見続けられます。
一家全員で出かけるところはちょっと演出が格好良いところもあり、もう、一周回ってのコメディとなっています。
最終的なオチの一言もすべてを総括しているようで、観ている側の代弁をしているようにも見えます。
新井浩文の事件があったことで、公開の延期と、当人の出演映画が最後になるような気もしますが、私生活を差し置いて考えれば、やはり、役者としては、非常に面白い役者で、作品の緊張感を持続できる存在感があると思います。
事件自体を肯定するわけではないのですが、役者人生としては非常に惜しいところとは思います。何かしらの復帰ができればよいですが、当人次第かとも思います。
物語は、最終的に、実家から、海辺へと舞台が移されますが、ミニマムな舞台設定の作品でもあり、舞台が好きな人にはわかってもらいやすい作品かもしれません。