【監督】古厩智之
【出演】工藤遥/伊藤健太郎/鈴木仁/吉川愛/小野花梨/両角周/田中偉登/中村里帆/小林且弥/
【個人的評価】★★★★★
【あらすじ】主人公 近藤は、卓球部になんとなく所属してなんとなく毎日を過ごしている高校生。クライミング部に所属する小寺さんは、ボルタリングのことだけを考えていて部活でも黙々とと壁を登る女子高生。そんな感情を見守る周囲の人々の物語。
進路を選ぶということは、学生時代の大きな決断の第一歩ではあります
古厩智之監督は、1992年『灼熱のドッジボール』で、ぴあフィルムフェスティバルスカラシップ権を獲得し、1995年『この窓は君のもの』で長編デビューをしています。その後、「まぶだち」「ロボコン」などの映画や、テレビドラマの演出をしており、学生時代のような雰囲気を描いた作品の多い監督です。
工藤遥は、2010年にハロプロエッグに加入をし、2011年に『モーニング娘。』10期メンバーに史上最年少の11歳11ヶ月で選ばれ、2017年まで活動を続けます。その後、卒業をし、舞台や映画に出演をしながらも、インスタグラムやブログも開設し、活動の幅を広げています。
伊藤健太郎は、kentaro名義でモデル活動をおこない、2014年『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』で俳優デビューしています。その後、『今日から俺は!!』の役名が伊藤だったことより、伊藤健太郎の役名として改名し、テレビや映画で活躍しています。
もともと「珈琲」という原作者が、コミック誌アフタヌーンで描いた漫画が原作。
本作は、足利市周辺で撮影されており、学校は旧足利西高校が舞台となっています。
物語は、ボルタリングに打ち込む女子高生を中心とした学園物語となっています。
序盤は、ボルタリングを見守る近藤の視線から始まり、小寺さんの打ち込んでいるボルタリングのことが描かれます。
本作は、「近藤」「ありか」「梨乃」「小寺さん」「四条」というキャラクターをそれぞれ描いた群像劇的なところにもなっており、それぞれが将来の進路にまだ明確な道筋を見出していないところが描かれます。
進路希望が白紙であることで、担任の先生から指摘を受けますが、そのことで、「何か目標を作ることで、どこかでそれを意識する」ということはこの作品のテーマでもあるように思います。
先生役の小林且弥の振る舞いがちょっと良く、こういう先生は、付かず離れずの関係でしっかりと見守ってくれてそうな印象を持ちます。
「嘘を書くんですか?」
「おごり甲斐があるなぁ」
このあたりの小寺さんは多分「天然」なのだろうと思いますが、演技で天然を演じるのも結構大変かと思いますが、妙にこの天然さはしっくりとハマっています。
小寺さんがスカートでボルダリングするのにはちょっとドキドキしますが、それはそれで良いのかもしれません。むしろツボです。
これも天然さから来ているような印象でもあります。
「でも、案外、小寺さんのことわかってないんじゃないかな?」
「やった、名前も覚えてくれてた」このときのセリフのときの演出にはなかなか映画的でもあり、「まあ、そうだよね。」とも思います。
「なんていうか、ちょっとさみしい。みんな、さみしいんじゃない。」
小寺さんが学園祭で他のクラスの子に冷やかし半分で煽られますが、その回答がこれ。
天然というよりも、視点がそもそも異なるということに気付かされ始めます。このひとことが、本作の魅力なのかもしれません。
風船を取る小寺さんにはちょっと泣けた。
「ウチラ、初めて会話したよね」
「がんばったら、周りの見る目が変わった」
多分、「ガンバ」の声は小寺さんには聞こえていない、そんな集中力の高さが小寺さんにはずっとあるような気がします。
以降、近藤と小寺さんの関係に焦点が絞られてきますが、本作は、ラブストーリーに見えて、その要素が 徐々にそうじゃないところに魅力があります。
「じゃあ、なんで登るんだろう。」
普通の感覚で学園ラブストーリーを描いたのではなく、本作は、なにかに興味と打ち込むものを見つける物語であります。
なので、序盤で描かれる進路希望にも白紙であった5人に明確に意図があり、それぞれの生徒は最終的にそれぞれの道をしっかりと書き残せるところにはいるはずです。
進路を選ぶということは、学生時代の大きな決断の第一歩ではありますが、初めてのことでもあり、意外と実感できないところでもあります。
そのため、あまり深く考えずに選択することもあり、それが後々の進路にも大きく響いてきます。
本作を観ることで、その自分自身の進路に何かしらの疑問や真剣さを考えるきっかけとなればよいのかと思います。