作品紹介
【監督】ポール・トーマス・アンダーソン
【出演】ダニエル・デイ=ルイス/レスリー・マンヴィル
【個人的評価】★★★★★
【あらすじ】1950年代のロンドンが舞台。主人公レイノルズ・ウッドコックはオートクチュールの仕立て屋で数々のドレスを作ってきました。ある日、カフェのウェイトレス アルマと出会い、恋に落ちます。ドレスの仕立て屋から見て、理想的なプロポーションを持つアルマは、ウッドコック家でレイノルズの抱える悩みや家系の持つ秘密に巻き込まれ、レイノルズの生活もまた複雑な環境に巻き込まれるえ
サブスクで観る
ここまで行き着いた過程が重要であり、印象的な部分は何気ない日々の生活にあるような気がします
監督は世界三大映画祭の監督賞を制覇したポール・トーマス・アンダーソン。本作では、第90回アカデミー賞で作品賞ほか6部門にノミネートされ、衣装デザイン賞を受賞しています。
主演はアカデミー主演男優賞を3度受賞したダニエル・デイ=ルイス。本作を最後に俳優業を引退しています。(※ただし、過去何度か引退宣言をしたことがあります。)
ダニエル・デイ=ルイスは、「マイ・レフトフット」「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」「リンカーン」でアカデミー主演男優賞を受賞しており、3回の受賞は、ほかにいません。
音楽は、レディオヘッドのギタリスト、ジョニー・グリーンウッドで、数々の映画作品の音楽制作をしており、本作では初のアカデミー作曲賞にノミネートされています。
レイノルズは、ドレスの仕立て屋として地位も名誉もありますが、アルマと出会ったことで大きく運命が変わっていきます。
作品を作り上げるために、感性を研ぎ澄ませ、仕事に専念している時には、たとえアルマの親切であれ、寄せ付けない鋭さがあります。
この部分をどう観るかにもよりますが、「妨げられた集中力を取り返すことはできない」という点は非常によくわかります。
確かに愛想が良くない言い方ですが、そこまで追い詰めて自身が作品に打ち込んでいるということがわかります。
そんなレイノルズにアルマは、いつまでも待ち続けるということを言いますが、この部分に徐々に隔たりが生まれてきます。
「新年のパーティにいきたい」というアルマの言葉に賛同しないながら、あとを追いかけるシーンでは、とてつもなく深いレイノルズの気持ちが表現されています。
音楽のみで演出された新年のパーティシーンで、非常に繊細で状況だけで気持ちの揺れ動きを表現した演出で必見です。
アルマも芯の強い女性として描かれており、一貫して食事のシーンでは上品さが見られません。その状況に不満も湧き出るシーンもあり、2人とも似た者同士な印象があります。
要所要所で、食事のシーンがあり、美味しそうな魅せ方をしていますが、食べ方や調理方法に不協和音があります。食事を通じてこの2人の関係性を表している演出とも言えます。
ラストはモヤモヤするところもありますが、ここまで行き着いた過程が重要であり、印象的な部分は何気ない日々の生活にあるような気がします。