【日本映画】「ロストパラダイス・イン・トーキョー〔2010〕」★★★★☆【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【出演】/ウダタカキ
【個人的評価】

【あらすじ】知的障害者である兄・実生と二人で暮らす幹生は、性欲処理 ができない兄のために、デリヘル嬢のマリンを招き入れる。地下アイドルとして活動しながら風俗で働くマリンには、いつか自分だけの島「ファラ・アイランド」を購入したいという夢があった。奇妙で穏やかな共同生活を始めた3人。しかしマリンの取材を続けるドキュメンタリー作家によって、互いを補うように生きてきた3人の絆はもろくも崩れ去ろうとしていた…

映画監督としての方向性と一本筋の通った作品で、個人的には気に入った作品

白石和彌監督は、北海道出身の映画監督で、若松孝二監督に師事し、フリーの演出部としてらの作品に参加後、本作が初監督作品になります。

小林且弥は、モデルとして仕事ををする傍ら、役者をするようになり、本作に出演しています。

新人作家発掘を目的に創設されたシネバザール・ニューレーベル『KOINOBORI PICTURES』第1回製作作品。

ロッテルダム国際映画祭、釜山国際映画祭、ドバイ国際映画祭、正式出品作品。

キャッチコピーは「安住の地(パラダイス)はどこにある?。」「どん底の世界から、ほんの少しだけ浮上する『愛』と『希望』の物語。」「ここで、いいんだ。」。

さまざまな要素のある映画で、知的障害者の兄、パワハラまがいの会社、デルヘリ、地下アイドルと色々な社会の暗部を巧みに盛り込んでいる内容となっています。

のちに白石和爾監督の作風のベースとなる要素が多数あり、デビュー作にして野心的なところを感じさせられます。

序盤で知的障害者の兄の事が描かれ、それを恥じながらのささえている弟が描かれます。

多数メタファーが込められており、飼っている亀もその要素が込められているのかと思います。

窓から見えるタワーマンションにもその暗喩が込められており、2間の部屋に暮らす兄弟との対比が船名に映ります。

デルヘリや地下アイドルをなぜやっているのかという点もしっかりと描かれ、そうしなければならない悲哀が見え隠れしますが、マリンの前向きな部分にはそんな要素よりも、幹夫の鬱屈した生活のカンフル剤としているようなところがあります。

中盤からさらに要素が膨らんでいき、ドキュメンタリーの撮影としての、演出家が登場する事で、ちょっとストーリーの方向性が変わってきます。

その中で、兄弟の過去も明らかとなってくる事で、とある家に向かうことになります。

この家でのシーンがこの映画の一つのテーマともなり、登場する父親役のには、ビシッと緊張感の走るシーンとなっています。

低予算の映画ながらも、芯の通った物語と演出になっているので、明確なテーマが心に刻まれるようにできています。

ダウナー系な物語展開ではありますが、終盤での兄の行動とその状況を知るところまでは、前向き感を感じられます。

当然、白石和彌映画としてそのまま終わらせるわけではなく、しっかりと現実の厳しさも描きながらの結末が用意されており、不条理のようにも見えますが、一種、にっかつロマンポルノのような着地点にはその後の作品に通じる明確な映画制作の意思を感じます。

「魂を込めて作りました」という監督の発言通り、映画監督としての方向性と一本筋の通った作品で、個人的には気に入った作品です。

予告編

ロストパラダイス・イン・トーキョー

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