【監督】岩井俊二
【出演】鈴木杏/蒼井優
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】実写映画『花とアリス』の前日譚となる作品。石ノ森学園中学校に転校してきた中学3年生の有栖川徹子とある噂を耳にして「花屋敷」と呼ばれる屋敷に興味を持つ。
岩井俊二監督や新しいアニメーション表現に興味がある人には特にオススメ
・関連作品の「花とアリス」は実写映画だったのですが、今作は全編アニメーションという手法をとった作品。
・岩井俊二監督も映画では珍しくアニメーション作品となり、岩井マジックの新たな一面をみせる。
・今作がアニメーションである理由は、主演の二人が「花とアリス」の頃から年月が経ってしまっていて、高校生や中学生を演じるのには無理
があったのではと思われます。
・また岩井俊二監督も元々アニメーションに興味を持っていたらしく、「BATON」「TOWN WORKERS」でアニメーションに関わりのある作品を制作しています。
・2004年の「花とアリス」の前日譚というストーリーでもあり、設定が多少異なります。
・まずは、花の性格が内向的な子になっており、序盤では引きこもりという登場の仕方をします。その後の「花とアリス」からではちょっと想像と異なる印象があります。
・岩井俊二監督は、「花とアリス」では友情の終わりを描いていると感じていたことがあり、それでは「友情のはじまりとはどんなものか」ということを描いてみたくなったと語っています。
・全編ロトスコープという手法でアニメ化されているので、実際に役者が演技した映像からアニメーションを製作しています。これは過去の習作から完成度を高めてきており、中盤で路地を横向きに歩いているシーンでの奥行き表現は、ロトスコープだからできた映像であり、この些細な表現にとても目の醒めるものがあります。
・ロトスコープの手法は、本作が世界初でもなんでもないのですが、実写映像とアニメーションの融合という意味合いでは画期的な演出だったと思います。たまにこのような畑違いの人が作品を作ると、今までの常識だったことが突然違うものに見えてしまうこともあり、この映像だけでもとても収穫のあることだったと思います。
・映像的に実写を元に作成していることもあり、場所は現実に存在するところが特定できます。
・ストーリーとして「花とアリス」での印象のあるシーンを匂わせるところもあり、前作のファンサービスとしての要素もあります。
・もちろん本作のみでも充分に楽しめる作品となっていますが、岩井俊二監督や新しいアニメーション表現に興味がある人には特にオススメです。