作品紹介
【監督】押井守
【脚本】伊藤和典
【原案】ゆうきまさみ
【作画監督】黄瀬和哉
【声優】古川登志夫/冨永みーな/大林隆介/榊原良子
【個人的評価】★★★★★
【あらすじ】歩行式の作業機械「レイバー」の製造会社 篠原重工の天才プログラマー 帆場暎一が投身自殺をする。その後、レイバーが突如暴走をする事件が多発する。暴走の原因には、帆場がプログラムをした新型OS「HOS」にあると疑いが持たれる・・・。
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ひとつの最終到達点にたどり着いた不朽の名作
本作の制作には「劇場版 3つの誓い」というものが立てられている。「娯楽の王道であること」「主役の遊馬と野明が活躍すること」「レイバー対レイバーの戦いを描くこと」である。
押井守監督が制作しただけあり、様々ところがオリジナルのパトレイバーと異なるところがある。特に原作マンガと大きく異なる作画がわかりやすい。目や口を小さく描き、より写実的な絵柄となっている。後に「新世紀エヴァンゲリオン 劇場版」で作画を行う黄瀬和哉作画監督の手腕でもある。
ストーリーは、1989年では馴染みの薄かったパソコンのOSについての物語で、当時としてはかなり難解な設定とも言われた。今では、OSも一般的にも認知されているので、ものすごくわかりやすい映画だと思います。
序盤ではいきなり自衛隊レイバーの暴走シーンから始まります。この音楽と自衛隊試作レイバーと99式強襲空挺レイバーの降下シーンはとても素晴らしい演出でカッコ良すぎです。
降下時の逆噴射や、射撃時の微妙な銃身のブレなど細かいリアリティが当時は斬新でした。
暴走してしまう理由は「HOS」に仕組まれたトリガが原因となるのですが、この捜査過程も見事。エボバや聖書などの引用を元に旧約聖書になぞらえた完全犯罪の解明はとてもおもしろく作られています。
トリガが判明し、その影響力のシミュレーションを行うシーンでの解析シーンも見事。思惑通りの災害が発生したときの恐怖感の煽り方はその先の戦闘シーンにも繋がります。
終盤、方舟と呼ばれる場所での戦闘となりますが、まさしく「ノアの方舟」。ここまで周到に伏線が張られている物語でとても練られた脚本はとても素晴らしいです。
新型レイバー「零式」と旧型レイバー「98式」の戦闘は、さましく最高のレイバー対決。あくまで乗り物であるという点を大いに利用した戦闘には、ロボットアニメの最高傑作との呼べるほどの描写が仕組まれています。
可動する関節や動きにも、モーターやシャフトの実際の駆動音が強調されていて、今までのロボットアニメでは描かれていなかったリアルさがあります。
全編を通じて、完全に娯楽作として完璧すぎる程に成立している劇場版アニメとして、ひとつの最終到達点にたどり着いた不朽の名作だと思います。