作品紹介
【監督】東かほり
【出演】橋本つむぎ/櫛島想史/小川未祐/楠田悠人/磯西真喜/柴田義之/安宅陽子/志村魁/小泉今日子/中澤梓佐/石井心寧/安光隆太郎/新谷ゆづみ/鈴木喜明/千賀由紀子/佐藤有里子/ 宇乃うめの/山下航平/山田結愛/村田凪/田名瀬偉年/富士たくや/富井寧音/松浦祐子/大槻圭紀/平松克美/熊﨑踊花/大古知遣
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】人生を終えた人が集まる「とりつくしま係」。そこに集まる人々の物語。
エピソードの積み重ねのよるメッセージ
東かほり監督は、フリーのデザイナーと活動しながらも、短編映画を複数制作し、2022年「ほとぼりメルトサウンズ」で長編映画監督デビューをしています。
橋本つむぎは、『愛の小さな歴史 誰でもない恋人たちの風景vol.1』で映画デビューをし、『さがす』『背中』『よく見れば星』『めためた』などに出演している女優です。
物語は、人生を終えた人に現れる「とりつくしま係」が、人生に未練を残す人にモノになって戻ることで、人生を見つめ直しストーリーです。
序盤から、全身麻酔のことを聞かれている話となり、意識がなくなることについての説明になります。
とりつくしま係の説明で、佐伯こはるが交通事故に遭い、即死したことを教えられます。
学校の教室のような場所で、「とりつくしま」のことを教えられ、生きているもの以外に取り付いて、現世に意識を残すことができる説明がされます。
似たような作品としては、是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」がありますが、本作は、わかりやすい説明が多いので、観やすいところはあります。
佐伯こはるは、残した来た渉のことに未練があり、トリケラトプスのマグカップに取り付くことを決めます。そこで、オープニングとなり、現世のマグカップに取りつている状況が描かれ、ひとり残された渉と、2人でいたときの生活を思い出します。
「へんですね、2人が死んでて、私が生きているみたいだ」
残してきた相手に未練があるのもわかりますが、昔の生活を振り返るととても切ないところがあります。とはいえ、過ぎていった時間を巻き戻していくと、ときにそれは残酷なところも感じます。
渉も意外とモテるのか、アプローチしてくる女性が出てきますが、亡くなった人と今いる人とでは比べようもないところもあり、この点は観ている人次第の受け取り方があると思います。
本作は、「とりつくしま」という場所を介在して、複数の登場人物が描かれていく話となります。「トリケラトプス」「あおいの」「レンズ」「ロージン」という話があり、4つの短編の物語でもあります。
「あおいの」の話でのカップルもなかなかぐっとくるところがあり、2人のぎこちない会話が序盤にありますが、本作のちょっとした意味のないようなシーンが、実は他の人の「とりつくしま」だということに気付かされます。
本作は、東かほり監督の2作目の映画で、監督の母でもある東直子の小説「とりつくしま」が原作になっています。また、ENBUゼミナール・シネマプロジェクト第11弾になります。
エピソードが複数ある作品ですが、中盤以降「とりつくしま」となって見ているものが徐々に変わってきます。
時系列も微妙に前後したりしますが、難解な見せ方ではないので、素直に観ていけます。
短編の物語をつなぎ合わせた作品ではありますが、それだけの話とはならない仕組みは観続けていけるところでもあります。
「あんまり長くいすぎると、後できっと辛くなると思うんで。」
四篇目では、ロージンに取り付く物語であり、このロージンは野球に使う滑り止めで、中身の粉が徐々になくなっていく消耗品でもあります。
取り付くものに期限が決められているというところに、本作の最後のエピソードの価値があります。
特にどうってことない日常だけの物語ではありますが、この作品の良さが最後まで観ていかないとわかりにくいかもしれません。とはいえ、ネタバレや変わったストーリーということではなく、エピソードの積み重ねのよるメッセージでもあります。
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