【日本映画】「52ヘルツのクジラたち(2024)」★★★☆☆【感想・レビュー】

作品紹介

【監督】
【出演】杉咲花/志尊淳//桑名桃李/
【個人的評価】

【あらすじ】主人公 三島貴瑚は、とある痛みを抱え、東京から海辺の街に引っ越してくる。そこで母親から「ムシ」と呼ばれ虐げられてきた少年と出会い、自分の境遇にも似たところから、一緒に暮らし始める。

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「52ヘルツのクジラたち」としての話でうまくまとめられていく展開でもあります

成島出監督は、1986年『みどり女』でぴあフィルムフェスティバルに入選し、映画監督になる道を選んでいます。1994年『大阪極道戦争しのいだれ』で脚本家デビューをし、後に多数の脚本を手掛けます。2003年『油断大敵』で商業映画監督デビューをし、多数の賞を受賞しています。その後、2012年『八日目の蝉』で第35回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞しています。2015年にも『ふしぎな岬の物語』で第38回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞しています。

杉咲花は、子役として芸能界に入り、一時期芸能界を離れるが、中学生になり再び女優を目指、2011年「ドン★キホーテ」でドラマ初出演をし、以降ドラマや映画に出演しています。個人的には非常に表現力がある素晴らしい女優かと思います。

志尊淳は、街頭スカウトをよく受けることから、芸能界に興味を持ち、モデルと俳優の活動を始めます。2011年ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンで俳優デビューをし、その後、2014年『烈車戦隊トッキュウジャー』で主演を演じます。戦隊ヒーローの出演キャリアから、大成する俳優も多いことから、今後の活躍に期待できる俳優です。

物語は、心に傷を負い、東京から海辺の町に引っ越してきた主人公が、自分と似たような境遇の少年と出会いともに暮らし始めていく中で、少年に一つの願いが芽生え、少年の力になっていくストーリーです。

序盤から、大分県の海辺の街で暮らす貴瑚の生活が描かれ、その島でひっそりと暮らしていますが、過去に色々と問題を抱えてきたのであろうことがわかります。

土砂降りの雨のなかで、「ムシ」と呼ばれる子どもと出会い、その子と生活をします。喋ることをしない「ムシ」は、貴瑚と同じように虐待を受けていたことで、貴瑚が面倒を見ることになります。

そこから、貴瑚の過去の話となり、開始20分で、貴瑚とその母親の関係が徐々に分かるようになってきますが、このときの耳鳴りの演出はちょっと意表をつかれます。

「自分で望めば、呪いからは抜け出せるんだよ」

貴瑚自身も自宅での介護やネグレクトなどで自暴自棄となっているところもありますが、手助けできる人も出てきます。

「新しい人生を生きてみようよ」

家族の関係上でうまくいかない生活から、貴瑚も立ち直れるような動きが出てくることで、足りなかった人生の隙間が埋まってくるような感じが出てきます。

貴瑚を助けた安吾は、「52ヘルツのクジラ」の声の由来を説明します。52ヘルツのクジラたちという題名は、クジラが会話をする鳴き声で、他のクジラには聞こえない高い周波数の音に由来しています。周囲のクジラには聞こえない音なので「世界で最も孤独なクジラ」という意味があります。

安吾にも実は抱えている問題があり、そのことは徐々にわかってきます。なぜ、貴瑚が東京から離れたのかという理由や、島での生活でのことも徐々に描かれてきます。

中盤から、ちょっと物語の流れが変わってきますが、安吾と貴瑚が働いている会社の専務との関係性が描かれていき、さらに時間軸がちょっと前後しながら、意外な展開となっていきます。

「52ヘルツのクジラたち」というのは、貴瑚や「52」だけでなく、安吾や他の人達にも通じるところがあり、中盤以降の展開は実はありきたりなように見えて、「52ヘルツのクジラたち」としての話でうまくまとめられていく展開でもあります。

杉咲花と志尊淳の演技はとても良かったのですが、暴力的なシーンにちょっとリアリティが感じられないところは、もったいないような気もします。暴力が主題となる作品でありませんが、しっかりとした演技に対してどこかツメが甘かったようにも感じます。

少なくとも、杉咲花の芸達者なところはとても胸に響いてきます。これだけでも、この作品を見る価値は十分にあります。

予告編

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