作品紹介
【監督】成島出
【出演】役所広司/菅田将暉/森七菜/豊田裕大/坂井真紀/田中泯/
【個人的評価】★★★☆☆
【あらすじ】主人公 宮沢政次郎は、岩手県で質屋を営む。長男の賢治は農業大学や人工宝石の製造など自由な道に進み、家業を継ぐのを拒みつつも、妹の病気をきっかけに文章を書くようになる。
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宮沢賢治の父が主役であるところが本作のポイント
成島出監督は、1986年『みどり女』でぴあフィルムフェスティバルに入選し、映画監督になる道を選んでいます。1994年『大阪極道戦争しのいだれ』で脚本家デビューをし、後に多数の脚本を手掛けます。2003年『油断大敵』で商業映画監督デビューをし、多数の賞を受賞しています。その後、2012年『八日目の蝉』で第35回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞しています。2015年にも『ふしぎな岬の物語』で第38回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞しています。
役所広司は、もともとは役所勤務の職員でしたが、仲代達矢の無名塾に入り、前職の役所勤めというところから芸名を命名してもらっています。
菅田将暉は、モデルのオーディションで選ばれた後、2009年「仮面ライダーW」で、初出演初主演をしています。その後は多くの話題作に出演しています。
森七菜は、中学3年の時にスカウトされネスカフェのWebCMに出演後、2017年「東京ヴァンパイアホテル」で女優デビューをし、その後、2019年、岩井俊二監督作品「ラストレター」に出演し主題歌「カエルノウタ」を歌い歌手としても活躍しています。
宮沢賢治没後90年ということで制作された作品です。
物語は、宮沢賢治の父を主人公とし、家族愛を描いた物語です。
序盤から、宮沢政次郎の息子 宮沢賢治が生まれるところから始まります。汽車内で立ち往生したことで、宮沢政次郎は出産には間に合わなったのですが、しっかりと生まれ、賢治と名付けられます。
宮沢政次郎は質屋を営んでおり、その生活と息子を育てることで暮らしています。過保護な父親でもありますが、本作の主人公が、父親であるような印象があります。
そこからタイトルとなり、中学を卒業した賢治が質屋を継ぐのではなく、作家を目指すことを言い出します。宮沢賢治の顔は学校の教科書でよくみるとは思いますが、坊主にした菅田将暉はなんとなく、宮沢賢治感があります。
質屋としての稼業ではなく、文学の道に進もうとする賢治は、宮沢賢治自体の生い立ちを知る人にわかってもらえると思います。むしろ本作は、宮沢賢治の作品とともに、生涯や生い立ちを知っていることが前提かなぁと思います。
本作の中盤で、妹が亡くなり、宮沢賢治自体も37歳の生涯ということもありますが、主人公は、本作の題名通り「宮沢賢治の父」の視点での物語ではあります。
「雨ニモマケズ」の詩にも触れられていますが、そこが終盤のピークかとも思えます。
宮沢賢治が好きな人には良いのかと思いますが、宮沢賢治のことを知らない人には、ちょっとピンとこないところもあるかもしれません。
あくまで、宮沢賢治の父が主役であるところが本作のポイントでもありますが、ちょっと主旨が伝わりにくいところも感じます。