作品紹介
【監督】高橋正弥
【出演】生田斗真/門脇麦/磯村勇斗/山崎七海/柚穂/宮藤官九郎/池田成志/尾野真千子/宮世琉弥/吉澤健/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】主人公 岩切俊作は、水道局に勤める青年。水道料金を滞納している家庭や店舗を回り、料金徴収をしているが、貧しい家庭を訪問する日々の中、自分自身の心の乾きにもがく。
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人が生きていく上で必要な水を、様々な視点の切り口で比喩的な題名
高橋正弥監督は、様々な監督の助監督を務め、2022年「RED HARP BLUES」で監督デビューをしています。2023年「渇水」では、13年越しの企画を実現し、映像化しています。
生田斗真は、11歳よりジャニーズJr.として活動を開始し、NHK教育『天才てれびくん』に、てれび戦士として出演しています。その後、1997年NHK連続テレビ小説『あぐり』で俳優デビューをし、松本潤、相葉雅紀、二宮和也とジャニーズJr.内ユニット・MAINも結成していたが、1999年、嵐のメンバーには選ばれず、俳優に重きを置いた活動をする異色のジャニーズとも言われています。
門脇麦は、ニューヨーク生まれの東京育ちで、宮崎あおいや蒼井優の作品を観て、役者を志しています。一癖ある映画に数多く出演しており、個性的な若手女優としては、個人的に非常にツボな役者です。
音楽は、ZAZEN BOYSの向井秀徳です。
原作は、第103回芥川賞候補になった河林満原作の小説です。
物語は、水道局に勤める主人公が、水道料金の徴収に家庭や会社を周り、自分自身の境遇とせめぎ合いながら日々を過ごしていくストーリーです。
序盤から、2人の子供がプールに遊びに来ますが、水がないということで水のないプールで遊んでいるところが描かれます。
そこから、主人公の岩切俊作が水道局員として水道料金を滞納している人への料金徴収をしており、滞納者の家庭の停水を行います。
「水はタダじゃない、止めるときは止める」
様々な家庭があり、水道を止めることはなかなか苦渋の選択になりますが、職員として働く以上、停水しなくてはならないところはあります。
「規則だから。」
序盤で登場した姉妹は、育児放棄を受けており、停水前に多くの入れ物に水を溜めておくことをします。
俊作自体も、プライベートでは、妻と子供と別居となってしまっており、その状況をこの姉妹に投影し、救いを差し伸べるところになります。
物語は、俊作の私生活の状況と育児放棄の姉妹、だらしない彼氏と同居しているカップルなどの複数の物語が描かれ、水道代の滞納による停水がその背景にでてきます。
「くるんなら連絡くらいしてよ」
俊作は、家を出ていった妻と息子の場所へ行くのですが、俊作には戻ってきてほしい気持ちがあることがわかり、俊作自体の過去の境遇もわかってきます。
「そんなこと頼んでない」
姉妹の苦労に手助けをしようとする俊作ですが、姉妹自身も、親に頼らずになんとか生活をしていこうとするのですが、当然、未成年の子が満足に生活できるわけもなく、途方にくれて、追い詰められていくところはあります。
「おまえなら、わかってくれるだろ?」
終盤、公園のシーンでは、行き詰まっているのは俊作であり、その行き詰まりから、なんとか抜け出せないかともがくところになります。
「このままじゃダメなんだよ」
この俊作の言葉の裏側が本作のテーマとも思え、渇水しているのは、本物の水ではなく、心に通う流れなのかもしれません。
水道局の主人公が行うのは、水道料金の徴収であり、滞納している人には「停水執行」を行わなければならない、水を取り扱うテーマとなります。
題名が「渇水」ということもあり、人が生きていく上で必要な水を、様々な視点の切り口で比喩的な題名となっています。
この「渇水」という題名のダブルミーニングには、明確には説明されませんが、心の渇きというところに、水を満たしたかった俊作の思いが込められているところはあります。