作品紹介
【監督】廣木隆一
【原作】湊かなえ
【出演】戸田恵梨香/永野芽郁/三浦誠己/中村ゆり/山下リオ/高畑淳子/大地真央/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】母親「ルミ子」と娘「清佳」と祖母の関係を描きながら、その関係に「娘を愛せない母」と「母に愛されたい娘」を描いた作品。
サブスクで観る
淡々とした物語の印象がありますが、観やすいつくりとなっている作品
廣木隆一監督は、数々の映画監督のもとで、助監督として活動し、1982年 『性虐!女を暴く』で長編映画監督としてデビューしています。ピンク映画出身ではありますが、近年では少女漫画原作の恋愛映画を手掛けており、「胸キュン映画三巨匠」の一人に数えられています。
戸田恵梨香は、小学生の頃から子役として活躍し、2006年「デスノート」で映画初出演をしています。その後、テレビドラマや映画に出演をし、2019年には朝の連続テレビ小説「スカーレット」でヒロインを演じています。
永野芽郁は、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』でヒロインを演じており、今後の活躍に期待できます。なお、好きなお笑い芸人は「なかやまきんに君」だそうです。
物語は、母親と娘を中心として、母親の愛情というものを描き、娘の視点や母親の視点を振り返ることでその真実がそれぞれ異なってくるストーリーです。
序盤から、清佳の独白とともに、首吊り自殺をしているシーンから始まります。
自殺なのか、他殺なのかは濁されており、真相はわからない描き方となります。
そこから、教会で告解をするところが描かれ、母であるルミ子の環境が描かれます。
ルミ子の視点で結婚前の状況から、田所という男の出会いから結婚までが描かれていきます。
独白形式で描かれていくナレーションがあり、わかりやすいところもありますが、人間関係がなんとなく複雑な感じがあります。
子供もできますが、その時の表現に「生き物」というところに、なんとなく、この表現の闇を感じます。
この物語はミステリーであり、「ルミ子」とその娘の「清佳」、そして「実母」と「義母」の関係が描かれていきます。
どこか関係性が親密に見えない微妙な距離感が巧く、だからこそ、娘と母親の関係とその愛情が本作のキーとして横たわっているのがわかります。
「あなたが助けなきゃならないひとは、わたしじゃないでしょ」
自宅が火事になり、実母が亡くなり、ここで娘の「清佳」の独白となります。
この流れは、なんとなく芥川龍之介の「羅生門」な感じがします。
結婚した父親も登場はしますが、どちらかというと、母と娘と祖母の関係性で描かれていきます。
この3世代の女性の関係性に徐々に闇が見えてきます。
さらに、場面が転換し、義母と母の関係がえがかれていきますが、どこか描かれ方が妙になってきます。
母という存在が複数あることで、なんとなくミスリードを誘っているかのような気がしてきます。
ここまでが中盤の展開であり、この先からは心の闇の問題が下人での展開かと思われます。
「文句があれば出てけばいいんだ。」
義母も義母でなかなかヒリヒリする感じですが、いわゆる嫁姑的なところなのかと思います。
夜、家の前で娘と母が対話しているところにはちょっとホラー感を感じます。
時間軸が多少前後しながらの描かれ方もありますが、主人公の視点がある程度わかりやすいので、物語を見失うこともないとは思います。
「家の中と、外の世界は違う」
羅生門的な展開でありながらも、結末の流れは、湊かなえ的な着地となります。これは見てもらうほうが良いです。
「母と娘です」
淡々とした物語の印象がありますが、観やすいつくりとなっている作品です。
エンディング曲は、JUJU「花」となりますが、この選曲はちょっとぶち壊し感を感じます・・・。