作品紹介
【監督】渡辺歩
【原作】西加奈子
【出演】大竹しのぶ/Cocomi/花江夏樹/中村育二/石井いづみ/山西惇/八十田勇一/下野紘/マツコ・デラックス/吉岡里帆/
【個人的評価】★★★★☆
【あらすじ】とある漁港が舞台。ボートを自宅とする食いしん坊の肉子と11歳のキクコは日々生活をしていくが、とあることで、2人の秘密が明かされていく。
サブスクで観る
中盤以降の展開が胸にきます
渡辺歩監督は、シンエイ動画でドラえもんの原画や作画監督として活躍し、最近では、ドラえもん以外の作品も手掛けるようになり、本作は2014年「宇宙兄弟#0」以来の作品。
大竹しのぶは、1973年テレビドラマ『ボクは女学生』に応募して合格、そこから、女優としてのキャリアとしています。1975年「青春の門」で映画デビューをし、その後、数多くの映画に出演しています。1982年に服部晴治と結婚していますが、死別し、その後、明石家さんまと結婚しています。1992年に離婚後も、舞台や映画等で独特の存在感のある役を演じており、役になりきるタイプの女優です。
原作は、西加奈子の小説で、2011年に刊行されています。
物語は、「見須子 菊子」と「見須子 喜久子」の2人の生活を通じて、肉子とキクコの関係と、港町に住む人々を描いたストーリーとなります。
序盤から、肉子の半生を描かれます。本作の主人公でありながらも、感情移入する対象ではなく、どちらからといえば、キクコ視点での物語ではあります。
フレンチトーストが朝ごはんですが、作画が良いのでとても美味しそうです。
「見須子 菊子」と「見須子 喜久子」の親子という設定ですが、説明にもあるように、ややこしい親子の名前です。音読するとどちらも同じ「キクコ」となってしまいます。
「顔を動かすって気持ちいいよ」
二宮との出会いは、漫画的キャラクターでもありながら、どこかキクコの抜けた穴を埋めてくれるような感じがします。
「夢だけど夢じゃなかった」
要所要所、肉子をトトロと見立てたようなところがあり、こういうオマージュ的な要素は多々あります。
「日に青いで晴れやもんなぁ」
「日に生まれるで星やもんなぁ」
肉子自体は、奔放で明るい性格をしていながらも、どこかうまくいかないところを抱えているのですが、このキャラクター性がのちのちの伏線にはなっています。
学校での友達関係を通じた物語も、子供にありがちなところもあり、何かの解決には至っていないところはありますが、物事の考え方としては、興味深いところはあります。
中盤以降、肉子の昔の話となります。
「この子、お姉ちゃんとおんなじ名前にしてもええ?」
この回想のシーンは肉子の苦労もありますが、ひたむきさを感じるところがあり、なんとなくグッときます
肉子の過去の経緯が序盤で描かれたよりもさらに細かく描かれてくることで、とあることもわかってきます。
買い物はスーパー玉出でしているようですが、大阪に住んでいないとちょっとわからないお店ではあります。
「なにて、あやまるんや」
焼き肉屋「うをがし」サッサンの話もさらにぐっときます。
「わたし、望まれて生きてきたわけじゃないから」
「迷惑かけたってだいじょうぶら」
喜久子の出生についてのことがあるので、本作の感情移入の先がキクコになることで、肉子がどのように育ててきたのかがよく分かるため、ぐっと来るところがあります。
「もう痛くないで」
「きくりんはなんで鋭いん。」
「肉子ちゃんは、なんてアホなんやろう」
アニメの作画度は、この絵柄だからこその動きとしてアニメ的ではありますが、STUDIO 4℃の細かい演出と完成度は高いです。
この絵柄で描くからこそ、伝わってくるところがあります。
「あれ、完成するもんやないんや」
二宮が作っていた模型はそういうものであり、これは、なんとなく隠れたメッセージな気もします。それは、サッサンの言葉にも示されているのかもしれません。
「おめでとう」
主人公 キクりんは、小学生の設定です。
すべての説明がされる作品ではないのですが、演出上、理解はできるようにできています。
中盤以降の展開が胸にきますが、実は、序盤からの布石もあり、しっかりと物語がつくられた良作です。
予告編
漁港の肉子ちゃん (通常版)(特典:なし)[Blu-Ray]