【アニメ】「ロボット・ドリームズ(2024)」★★★★★

作品紹介

【監督】パブロ・ベルヘル
【個人的評価】★★★★★

【あらすじ】主人公 ドッグは、ニューヨークで孤独に暮らしている。ある日、TVで見たロボットを通販で購入し、ロボットといっしょに楽しい生活をするが・・・。

監督:パブロ・ベルヘル, Writer:パブロ・ベルヘル

セリフのない作品だからこそ、音楽の使い方がとても上手いです

パブロ・ベルヘル監督は、スペインの映像作家で、1988年「Mama」で短編を制作しています。1998年にSOPHIAの「黒いブーツ ~oh my friend~」のPVを制作したこともあります。2025年「ロボット・ドリームズ」で初の長編アニメ監督を手掛けています。

物語は、主人公がTVで見た通販で、ロボットを友人として迎え、ともに楽しい日々を暮らしていく。ある日、海水浴に出かけるが、ロボットは海水で錆びてしまい、動けなくなってしまう。ロボットと動かそうとするが、海岸はシーズンオフのために閉鎖されてしまい、二人は離ればなれになってしまうストーリーです。

序盤から自宅でゲームをし、一人でテレビを観ながら食事をしているドッグが描かれます。隣の家では夫婦がふたりでいるのを、見て、テレビCMのロボットAMICA2000を注文します。

手作業で組み上げて見事にロボットを完成させます。ここまで特に会話がなく誰も喋らない展開となっています。

なお、ドッグの家にはMacintosh Classicが置いてあります。他にも、C-3POやR2-D2とマジンガーZとキングジョーの模型らしくものもおいてあります。

パートナーができたことで一緒に街に出ますが、このシーンの演出が秀逸です。かかっている曲はアース・ウィンド・アンド・ファイアー「September」ですが、本作のテーマと関連のある感じも良いです。

細かいところですが、ドッグは嬉しいときにはしっかりと尻尾を振っています。こいう細かい表現が積み重ねられているので、手の込んだ作画に見えないようで、実は絵ではなく表現でリアリティを表現している点が上手いです。

ドッグとロボットが海に遊びに行くシーンで、ロボットAMICA2000以外にも複数のロボットがあることがわかり、持ち主により境遇が異なる描写も出てきます。これは微妙に伏線になっていると思いますが、本作は、絶妙な伏線の用意の仕方にも無意識にわかるようなみせ方がうまいです。

とにかく。セリフのない作品だからこそ、音楽の使い方がとても上手いです。

海の中にオーシャンビーチの看板が沈んでいるのも、説明がないのですが、意味のないシーンは用意されていないほどの演出があり、これも、後々の展開に関係しています。

海で遊んだあとの夕暮れで、ロボットが海水で錆びて動けなくなってしまいますが、このことで、一緒に帰ることができなくなり、動けなくなったロボットと、ドッグの離れ離れの生活が描かれ始めます。

本作は、ドッグとロボットが離れ離れになってからの展開が重要でもあり、何度かロボットとドッグの夢と現実が描かれ、その叶わない夢が、じわじわと哀愁を誘う感じです。とはいえ、悲しい話というだけでなく、セリフを使わずに語っていく手法はとても上手いです。

ドッグの名前は「DOG VARON」です。

冬になり、海岸に雪が積もっている時期の演出も、アニメーションの枠を超えるような演出で、本作は普通のアニメーションだけでとどまらない表現力があります。

ドッグは、ロボットに変わる他の友だちとの出会いを模索していきますが、結局のところ、ロボットの代わりの出会いにはならないところに悲しさを感じるところもあります。

ロボットの右足がゴールドになるのはスター・ウォーズのオマージュなんでしょうね。

「ロボットの扱いがひどい」や「ドッグが海岸で一緒にいないのが釈然としない」という意見もありますが、本作ポイントは、そこではなく、過去の思い出と、変わっていく世の中と、すれ違いを描いているようにも思えるわけで、ロボットがドッグと逢わない選択をするところは、ロボットだから四肢が切断されようが、なにされようが人間じゃないから良いという発想でキャラクターはつくられていないことは充分にわかります。

海岸でジッと待っているロボットは、生まれたばかりのロボットの経験として、世の中のことをまだしっかりと分かっていないところは、街にいる人に対しての挨拶の仕方とかでも、わかるようになっているわけで、ロボットはロボット扱いしていますが、とはいえ、まったく感情を抜いたキャラクターとして描いていないところも一目瞭然です。

予告編

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