作品紹介
【監督】樋口真嗣
【出演】草彅剛/細田佳央太/のん/要潤/尾野真千子/豊嶋花/黒田大輔/松尾諭/大後寿々花/尾上松也/六平直政/ピエール瀧/坂東彌十郎/斎藤工/
【あらすじ】主人公 高市和也は、新幹線の運転手。いつもと同じように新幹線「はやぶさ60号」を運転するが、その新幹線には時速100キロ以下で走行すると爆発する爆弾が仕掛けられていた。
【個人的評価】★★★☆☆
辻褄については、目をつぶって見るのが本作の正しい楽しみ方
樋口真嗣監督は、高校卒業後に、ゴジラの怪獣造形の携わり、映画業界に入っています。その後、1984年『王立宇宙軍 オネアミスの翼』で助監督を務め、様々な特撮に関わっています。2005年「ローレライ」で大作映画に関わり、以後、「日本沈没」「隠し砦の三悪人」など話題作を監督しています。
草彅剛は、元SMAPのメンバーで、現在は「新しい地図」に参加しています。SMAPの頃にグループ活動以外に役者としても活躍しており、独特な雰囲気を持つというよりも、普通の人を演じさせると好評なところがあります。
細田佳央太は、小学校の頃から俳優を目指し、2014年『もういちど 家族落語』で俳優デビューをし、2019年「町田くんの世界」では初主演を務めています。
本作は、1975年に制作された佐藤純彌監督の映画のリメイクであり、現代にアレンジされた内容で新たに生まれ変わった作品です。
シン・ゴジラの樋口真嗣監督の作品ですが、脚本は、中川和博と大庭功睦となっており、庵野秀明は関わっていないところに注意は必要です。
1975年版の新幹線大爆破は、犯人視点のクライムサスペンスでしたが、本作では、新幹線の乗員など新幹線に関わるスタッフの視点で描かれています。
JR東日本の協力で制作されており、そのため、新幹線は東北新幹線で描かれており、東海道新幹線ではありません。
リメイク作品ではありますが、本作の視点が1975年版の犯人視点の作品とは異なるので、実際にはプロットだけを参考にした別作品にも思えます。結末もオリジナルではあるので、1975年版とは一味違う作品になっているのかと思います。
物語は、新幹線運転手の主人公がいつものように新幹線を運転するが、新幹線「はやぶさ60号」には、時速100キロ以下で走行すると爆発する爆弾が仕掛けられており、犯人との交渉で事件を解決していくストーリーです。
序盤から、新幹線の車両見学のために新幹線のことを説明する高市和也が描かれます。新青森駅から新幹線の車掌の傍ら、仕事をしており、車両見学会の後、「はやぶさ60号」に乗車して東京へ向かいます。
「死んでも止めないから大丈夫ですよ」
運転手はのんが演じていますが、ちょっとミスマッチなところもあり、運転手っぽさは感じないところはあります。
新幹線の爆破から乗客を守るために別の新幹線を接続して脱出するのはわかるのですが、この行動をテレビ等で中継しているニュース報道を見ると、どうしても本来の犯罪の目的がよくわからない感じがします。
結局人質でもある乗客が脱出できてしまえば、この犯罪の意味は何なのだろうと思います。
そもそも、乗客の立場を描いた様々な群像劇とも受け取れ、乗客同士の揉め事や政治や社会問題も織り込んでいる点は、なんとなく、別の事情があるようにも思えます。
車内の状況で色々と問題が起こっていくので、内容的にはダレ場も少なく観られますが、本来の映画の内容の目的がぼんやりしている点では脚本自体に問題があるように思えます。
CGを使った新幹線の演出やクラウドファンディングの設定など、今風の設定が出てきますが、このあたりの設定が盛り込まれていることで、テーマが散漫としているところはあります。
「何がシナジーだよ」
シナジーという言葉が何回かでてきますが、シナジーって言いたいだけなんだと思います。
中盤で本作の犯人がわかりますが、これもまたモヤモヤします。爆弾の解除方法にもとある手段がありますが、これにもモヤモヤするところがあります。
よくよくおもえば、この爆弾の解除方法は意外と手軽に解決できるところでもあり、さほど悩むこともないかもしれません。とはいえ、映画ですので倫理観があるのであまりその表現はできないと思いますが、犯人の自死でも同じ原理で動作はします。
そもそも、アプリ連動という点であれば、電波止めれば、サクッと解決できるので、アプリ開発側の問題とも言えます。
解決方法が複数ありますが、その解決方法に疑問を持たせずに、一方向にのみ物語の流れを動かしていく強引さは、樋口真嗣映画ならではにも思います。
「日本の新幹線がハイジャックされてから・・・」
テレビのニュースのアナウンサーの言葉からお察しできるように脚本自体にちょっと粗が見られます。
樋口真嗣監督自体も、SNSでも色々な舞台裏を投稿しており、実際の新幹線のブレーキでは火花は出ないようになっています。
最後に100キロで走る列車の慣性的の割に、なかなか線路の切り替え器の強力さにもモヤモヤします。
つまりは演出的にエンタテイメントとして制作されている点を考慮すれば良く、辻褄については、目をつぶって見るのが本作の正しい楽しみ方です。
予告編
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